519話 粉骨再身
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はプレイヤーキラーとしてちょっくら荒らし回ってくるか。
というわけでやってきました新緑都市アネイブルの外れにある運動場。
ここではプレイヤーたちが武器の試運転や、訓練などを行っている。
いつもの草原エリアでのキルもいいが、今回は趣向を変えてここで暴れてやろうと思う。
ここなら【短弓射手】も来れないだろうから、じっくり楽しめるだろう!
ってわけで活動開始だ!
俺は手始めに一番近くにいたボウガンを持ったツインテールの女の首もとをなぞるように包丁で切れ目を入れていく。
まるで高級な刺身でも切るかのような手さばきで静かに首を落とされたツインテールの女は、切られたことに気づかないまま光の粒子となって消えていった。
「おいっ、【包丁戦士】が来たぞっ!?」
「この、プレイヤーキラーがっ!
返り討ちにしてやる!!」
「全く……迷惑なやつだ。
もはや人災みたいなもんだろ……」
「あら、嫌だわぁ~?
逃げましょうか」
プレイヤーキラーとして俺が活動したのを確認した連中は一斉に武器を構え始め、俺を取り囲んでいく。
草原エリアだとこの動きは普通になっていたが、他のエリアにも広まっていたか……【包丁戦士】包囲網と言ったところか?
へへっ、面白くなってきたじゃないか!
俺は包丁を振り抜き、一目散に迫ってきた十手使いの男の妨害をステップを踏みながら回転し回避、その後すり抜ける際に横凪で腹を深々と切り裂き切り捨てた。
「くっ、やっぱりこの狂人強いわねっ!?」
「お前ら!もっと気合い入れていかないとこの狂人は倒せないぞ!」
「【包丁戦士】、なんて厄介なやつなんだ……」
俺は飛んでくる矢を打ち落としながら飛び上がり、俺が滅多にしない斬撃……真向斬りを放つ。
真向斬りは俺の身長でやるとあまり効果的じゃないが、飛んでいる姿勢からなら問題なく機能する。
左右で真っ二つになったモブプレイヤーを横目に、その姿勢から隣にいた棍棒を持ったモブプレイヤーを逆袈裟斬りで仕留めた。
連続して光の粒子に変えられていくプレイヤーたちを見て、はじめは粋がっていたモブプレイヤーたちの中にも怯えたやつが現れどんどん逃走していく。
「ちっ、こんなところにいられるか!
俺はクランハウスに帰らせてもらう!」
「俺……この戦いに勝ったら告白しようと思うんだ……」
「なんだ、【包丁戦士】ってロリじゃん!」
「ここは俺に任せて先にいけ!」
「足止めするのはいいが、別に倒してしまっても構わないだろう?」
なんか死亡フラグばかり立てている連中もいるようだがそんなやつらは一度無視して、身近なやつから包丁の錆びにしていく。
一人、また一人と光の粒子となって消えていくので、どんどんこの場所の見渡しがよくなっていく。
そして良くなるのは見渡しだけではなく、俺の稼働範囲が増えるということだ。
動ける範囲が増えたことにより、俺はフットワークを今まで以上に活用しながらキルを続けていく。
「おいおい……どんどん手をつけられなくなってきたじゃん」
「どーすんだよこれ……」
そんなことを言っているプレイヤーが増えてきたが、そこを掻き分けるように緑髪の骨笛使いの女が現れた。
前髪が垂れていて目元が良く見えない暗そうな女で、背格好も猫背気味なので自分に自信がない類いのやつだ。
装備は……動物の骨を集めて作り上げたような禍々しい装備だな。
「ふひひっ、あてぃしにやらせてくださいぃぃ……
そのぉぉ……試したいことがあるのでぇぇ……」
「【骨笛ネクロマンサー】っ!?」
「お前っ、知ってるのか!?」
「ああっ、こいつは第3陣プレイヤーだがゲームの中なのに基本引きこもってるって噂の変わり者だからな。
掲示板でたまにネタとして上がってきてるのさ」
おっ、自己主張が激しそうには見えなかったが、わざわざ前に出てきたってことは面白いものを見せてくれるんだろうな?
「はいぃぃ……
ふひひっ、スキル発動ぅぅ……【想起現像】ぅぅ……
ability【粉骨再身】んん……」
緑髪の根暗女はスキル【想起現像】とabilityを同時に発動させてきた。
ってことは、スキルに影響を与えるタイプのability持ちプレイヤーかこいつっ!?
【骨笛ネクロマンサー】が【想起現像】で出現させた砂はいつものように赤い砂ではなく、真っ白な砂……いや、これは……
「なぁ、あれって……」
「砂っていうより砕いた骨の粒だよな……」
「えっ、こわっ!」
「ふひひっ、なるほどぉぉ……
こうなるんだぁぁ……」
当然現れた骨の流砂には驚いたが、多少足がとられるくらいだ。
どうってことない。
俺はそのまま突撃して一気に三人同時に切り裂いていった。
そして、最後に残ったのは先ほど骨の流砂を発生させた緑髪根暗女だけだ。
どう考えても前衛っぽくないから、後回しにしたってわけだな。
一人だけの後衛キャラクターが脆いのは、ゲーム界の歴史で何度も証明されていることだからな。
「ふひひっ、今度は別のをぉぉ……
スキル発動ぅぅ……【想起現像】ぅぅ……
ability【粉骨再身】んん……」
緑髪根暗女は再度【想起現像】とabilityを併用してきた。
だが口走っていた別の、という単語からするとこいつは……
ジョブ【テイマー】だな!?
【想起現像】の別バージョンは【テイマー】じゃないと使えない仕様だからな。
そして予想通り白い骨の粒が凝縮されていき、何かの形を作り始めた。
それは……
俺が始めに倒したボウガン使いのツインテールの女の姿だった。
ネクロマンサーとか言われてたからもしやと思ったが、蘇らせたのか!?
……と思ったけど、ツインテール女の様子を見ると少し違ったようだ。
無言、生身ではなく骸骨となっていることから、ここにいるのはプレイヤーとしてのツインテール女じゃなくてAIが擬似的に操作しているというものか。
ボウガンを骸骨が無表情で放ってくるのは若干不気味だが、蘇ったところで所詮はモブプレイヤーの身体だ。
再度包丁で切り裂いて、再び骨の粒に変化させてそのまま緑髪根暗女も一緒に切り裂いて死に戻りさせた。
最後は驚いたし、プレイヤーキラーとして楽しめたから満足だな。
俺は肌をツヤツヤテカテカさせながらログアウトしたのだった……
全く……劣化天子は相変わらずですね……
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