517話 考察会議は踊る!~大罪魔まとめ編~
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は先日の【大罪魔】との戦いを振り返るために【検証班長】と会議だ!
というわけでやって来ました新緑都市アネイブルにある樹木の建物を間借りした検証班のたまり場【メッテルニヒ】。
「来ましたね。
さあさあ、上がって来てください!」
俺を出迎えたのは白衣にメガネの痩せ型の男、【検証班長】だ。
こう見えて包丁次元のブレインと呼ばれるほどの切れ者だ。
「【包丁戦士】さんはやけにボクを持ち上げるね?
誉められて悪い気はしないけど……
それで、今日は【上位権限】持ちのレイドボス【大罪魔】についての考察をしましょうか」
そうだな、俺はそのために来た。
【検証班長】の話が脱線したらどうやって戻したものかと思ったが、検証にのめり込まない限りは包丁次元で一番会話のコントロールが上手い【検証班長】相手にそれは杞憂だったようだ。
「あの【大罪魔】は戦闘開始後に姿が不思議の国のアリスのような姿になっていましたが、毎回あのように姿が変わっているんですか?
見たところ戦闘フォームではあると睨んでいるのだけれど」
ああ、確かに戦闘が始まった瞬間に姿が変わっているな。
だが、毎回あの不思議の国のアリスのような姿になるわけじゃなくて、俺が戦っただけでも真っ白なパフェのような衣装や花柄ワンピースになったりしている。
「色々な姿を使い分けているということですか?
それで、姿を変えたときに能力が一緒に変わったりしていましたか?」
【検証班長】による絞り込みが始まったようだ。
こうなると【検証班長】が満足するまで質問攻めが続くのは覚悟しておいた方がいいだろう。
でも、その覚悟を決めるだけの価値が【検証班長】にはある。
これに付き合えるやつじゃないと【検証班長】は本当の意味で力になってくれないからな。
姿が変わったときに使ってきた能力は……真っ白なパフェの姿のときは望遠鏡で【阻鴉邪眼】を使ってきたぞ。
ほぼ射程とか無視してデバフサークルを使えるのは本家本元の【阻鴉邪眼】使いのアルベーとは違う厄介さがあった。
花柄ワンピースの姿のときはアンカーを使ってきたな。
俺はすぐに潰されたから詳しい能力は把握していない。
同じパターンでパイルバンカーを使ってきたのも見たぞ。
そのときの【大罪魔】の姿は見ていないけどな。
「そして、ボクと【ペグ忍者】が見た不思議の国のアリスの姿でステッキですね。
【包丁戦士】さんはこれらの武器や姿に心当たりはありますか?
【大罪魔】の攻撃を事前に察知していたので、何か知っていると思ったんだけどね」
流石は【検証班長】、抜け目がないな。
俺の反応まできっちり観察していたのか……
【検証班長】は本格的に敵に回したくない手合いだぞ……
「いや、ボクよりも今話している【大罪魔】の方が圧倒的に相手にしたくないよね?」
まあ、流石にそれはな?
……【大罪魔】の能力についてだが、おそらく俺が今まで次元戦争で相手にして来たMVPプレイヤーたちの姿とチュートリアル武器、そしてスキル擬きを使えるというものだろう。
「なんで包丁次元のレイドボスが他の次元のプレイヤーの力を行使するのが前提なのでしょうか。
本来レイドボスは既に完成された能力を持っているはずです、今まではそうだったからね。
それに【上位権限】持ちとなれば古株でしょうし、なおのことでしょう」
【検証班長】の理論は一般的に考えるのなら間違っていない。
俺だって【大罪魔】関係の当事者じゃなかったら同じように思っただろう。
確かに【大罪魔】の存在自体は古株なんだろうが、実際にはあの【大罪魔】の身体は再構築したようなものだ。
そして、俺が次元戦争で獲得してきた各種【『sin』暴食の捕食】称号を俺から徴収して自らの血肉と変えたことでその力が振るえるようになったと思っている。
「なるほど、そのような経緯があるのならプレイヤーのような動きをしていても納得できますね。
レイドボスにしては攻撃方法やその在り方が歪だと思っていましたから。
……となると、これまでのレイドボスたちよりも圧倒的に攻撃手段の多いレイドボスということになりますよね。
控えめに言っても対策が困難ですよ……【オメガンド】戦のように全て対策を整えてから挑まないと勝てない相手なのに、その対策をとるべき攻撃方法が多彩となると別の方法を考えないといけないでしょう」
なるほどな。
俺は正直攻略を諦めかけていたが、【検証班長】はそれでも真面目に対策を考えているようだ。
例え状況が悪くても考えるのを止めないのが【検証班長】が【検証班長】と呼ばれる由縁だ。
【検証班長】だけ2つ名がチュートリアル武器に影響されていない特異な存在だが、この検証にかける想いがそうさせたのだろう。
「例えば、一時的に姿が変わるのを防ぐ方法を見つけるのが良さそうです。
それがデバフなのか、行動そのものを封印するものかは悩みますけど状況さえ整えばいけるかな?
多彩な攻撃方法と言ってもプレイヤー規格のものを強化しただけみたいだし、最悪壁になるプレイヤーさえ大量に配置するという方法もありかもしれません」
封殺作戦と物量作戦か。
シンプルな手段だが、俺たちプレイヤーが最後にとれる手段はいつもここに落ち着いてしまう。
スペックがゴミのように低いプレイヤーたちではレイドボス相手に真っ向勝負だけで勝つなんて到底無理だからな。
そんなものプレイヤー全員がプレイ開始初日から学ばされることだ。
もはや今更感すらあるな。
「それと、もう1つ考えがあるんですよ。
別に倒さなくてもいいのではと、ボクはそう考えました」
なんだなんだ、結局諦めたのか?
「そういうわけではないですよ。
【短弓射手】さんが【荒野の自由】を相手に成し遂げたようにレイドボスを倒した扱いにするという方法もあるということです。
……まあ、やり方は知りませんけど」
いや、知らないんかい!
ちょっと期待していただけにガクッときてしまった。
でも色々な道筋は見えたか。
俺一人で考えているよりは有意義な時間を過ごさせてもらったし、【検証班長】に感謝だな。
「ボクもこれから【ペグ忍者】と【大罪魔】の検証に向かえるのでお互い様ですよ。
それではボクたちはさっそくパターンの割り出しからやって来ますので今日はこの辺でお開きにしようか」
そう言いながら【検証班長】はメッテルニヒの一階に待機させていた【ペグ忍者】と【槌鍛冶士】の鍛冶場へ向かっていったのだった。
ん?ワシの鍛冶場最近荒れているな!!!
何故だ!!!!!
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