513話 自分と向き合う
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はボマードちゃんとほのぼの市場で待ち合わせをしているので、まずはそこへ向かうとする。
というわけでやってきました、新緑都市アネイブルにあるほのぼの市場。
プレイヤーたちが一番物を売買する場所とまで言われているこの市場で俺とボマードちゃんはまずお茶をするのだった。
「【包丁戦士】さんとこうやってゆっくりできるのは嬉しいですね!
いや~、これは実質デートみたいなものじゃないですか!?
ラブラブですし!」
相変わらず頭お花畑のような的外れな発言をしているのはタンクトップロリ巨乳のボマードちゃんだ。
そもそも俺たちは女同士なんだからそうはならないだろ……
「ふっふっふっ……その考えは甘いですよ!
いや~、愛は性別を越えますからね~
女同士でも問題ないですよ、私は!」
いや、お前の意見は聞いてないんだよなぁ……
俺とボマードちゃんはそんな下らないことを話しながら、紅茶を飲みスイーツをつついている。
俺が飲んでいるのはアールグレイ、ボマードちゃんはダージリンだ。
スイーツはタルトタタンで、甘さをここぞとばかりに口の中へ広げていっている。
まるでボマードちゃんの発言のように甘い。
それで、ボマードちゃんはサバイバルイベントどんな感じだったんだ?
掲示板を見てみたが、ボマードちゃんの情報は一切出ていなかったので直接聞きたかったんだ。
「私って虚弱体質じゃないですか、そしてアイテムも持ち込めないので【槌鍛冶士】さん特製の爆弾も持ち込めなかったんですよ。
いや~、開始早々散々な目にあいましたね……」
まあ、そんなところだとは思っていたが、ボマードちゃんには切り札が1つあったはずだ。
そう、【修練防具上位解放】【魚尾包装】だな。
あれは使わなかったのか?
俺がボマードちゃんにそう聞いてみると、辛いものでも食べてしまったかのような険しい表情をしている。
今食べているのは甘いタルトタタンなので、食べているものの影響ではない。
「使ってはみたんですけどね、思ったようにいかなかったんですよ。
いや~、あれは【魚尾砲撃】と同時に使わないとあんまり意味がないですからね……
しかも、【魚尾砲撃】を正しく使うのに【深淵顕現権限】も使わないとダメなんで、実質タンクトップがフィッシュテールドレスに変わっただけでしたよ!」
なんというスキルの無駄遣い……
あのサバイバルイベントはみんな敵扱いだから【深淵顕現権限】の生け贄を用意出来なかったからな……
俺も【深淵顕現権限】が使えれば、少なくともあと一つは順位を上げれただろう。
この辺は深淵スキルに頼りがちな俺たち二人の欠点でもあったというわけだ。
「いや~、【包丁戦士】さんと同じ欠点ってなんだか嬉しいですね!」
ボマードちゃんはそれ以上に欠点ってまみれだから、俺が逆に嬉しくないんだが……
それに、俺は【深淵顕現権限】無しでも四位になれたからな。
「そういえばそうでしたね!
いや~、【包丁戦士】さんは相変わらず強いですよね!
前から疑問に思ってたんですけどなんでそんなに強いんですか?」
なんで……と言われてもなぁ……
俺はプレイヤーキラーだからな、対人戦はかなり自信がある。
戦闘スタイルももちろん対人向けになってるし、これまでの戦闘の蓄積もあるからというのもある。
それに、リアルでの経験値の差だろう。
俺は……いや、なんでもない。
リアルの話をネットに持ち出すのはあまり良くないからな。
「珍しく【包丁戦士】さんのリアルの話を聞けると思ったのに残念です……
いや~、正直物凄く気になってるんですよ!
だって、いつも話してくれないんですから!」
それはネットリテラシー的にやめた方がいい。
「え~、でも私は別にいいですよ!
いや~、私のこのアバターとか身バレしないように顔は多少弄ってますけど、他の部分は全く弄ってないんですよね」
ああ、それくらいならまぁいいだろう。
アバターは基本的に顔だけ変えて体型を変えない方が主流だからな。
理由はリアルとゲーム内での違和感がはんぱないからだ。
……というか、このロリ巨乳体型が現実と同じって相当凄いな……
犯罪臭がプンプンするぞ。
まあ、俺も体型は変えてない。
じゃなかったら次元戦争で戦えるレベルのパフォーマンスはできないだろう。
身体に違和感を持ったまま戦えるのはよっぽど卓越した戦闘技術も持ち主か、あるいは違和感があるとしても元の身体の方が戦いに向いていないかだろう。
「そうなんですね!
いや~、【包丁戦士】さんはリアルでもぺったんこなんですか!
動きやすくて良さそうですね~」
そんな風に邪気のない顔で笑っているボマードちゃんに対して、俺は鬼の形相になって包丁を取り出した。
そして、ボマードちゃんの腹部へと突き刺していく。
「ええっっ、なんでですか!?
いや~、この唐突なキルも【包丁戦士】さんって感じで好きですよ……
あっ、スキル発動!【名称公開】!」
そんなことを言い残しながらボマードちゃんは光の粒子となって消えていった。
ちゃっかりデバフをかけてくるのはご愛嬌だろう。
ボマードちゃんの固有スキルみたいなものだから使いなれているだろうからな。
そんなボマードちゃんが居なくなり、もう誰もいなくなったその場所で俺は息を大きく吸い込んでから思いの丈を吐き出した。
……誰がぺったんこだぁぁ!
自分と正しく向き合いましょう。
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