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51話 金髪ツインテドリルお嬢様のお通りですわよ

 【Raid Battle!】



 【包丁を冠する君主】




 【菜刀天子】


 【次元天子】【上位権限】【???】




 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【次元をさまよい】


 【冒険者を導く】


 【聖獣を担うが故に】


 【深淵と敵対する】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】



 【レイドバトルを開始します】



 はい、今日も元気にログイン!

 今日は【釣竿剣士】との約束をすっぽかして渓谷エリアに行ってみようと思う。

 考えてみると岩山エリア、沼地エリア、新緑都市アネイブル、草原エリアは何度も行っているが東にある渓谷エリアは一回も行ったことがなかった。

 まあ行く用事が無かったからということもあるんだが、他にも理由はある。

 着いてからのお楽しみだ。




 



 渓谷エリア……の手前に着いたぞ。

 ここはエリア全体が山に囲まれていて、その山をどこからでもいいので乗り越えた後、さらに向こう側まで下山してようやく渓谷エリアに着くことができるのだ。

 山の向こう側に川が流れているという噂も聞いたことあるが、渓谷エリアと呼ばれているなら、まあ、そうだろうと思った。

 

 これから山岳アタックと考えると気が滅入るが、全エリアをそろそろ把握しておきたいという欲のほうが強いので辛うじて足が前に進む。


 そうしてのろのろと山道を歩いていると木々の向こうがガサガサと揺れているのに遭遇した。

 こういうとき普通なら野生の動物かと思うが、このどん底ゲームでプレイヤーキラーとして多くのプレイヤーを狩ってきたからよくわかる、これは人間が動いている音だ。


 おい、そこに誰かいるのか?

 スルーするのもあれなので一度声をかけてみる、気に入らないやつが出てきたらプレイヤーキルするだけなので誰が出てきても問題はない。


 「あら?

 こんなところをプレイヤーが歩いているのを見るのは久しぶりですわね!

 もしかしてこれから渓谷エリアに行かれるのですの?

 最近は歩いて登るプレイヤーが居ないのでちょっと興味がありましてよ!」


 俺の前に現れたのはこの場にいるのがアンマッチな見た目をしているいかにもお嬢様という風貌のプレイヤーだ。

 金髪ツインテドリル、ゴスロリという定番と言えば定番の見た目をキャラメイクしてくる気概にちょっと感動する、背中に何やら大きな円盤のようなものを背負ってこそいるが、こういういかにもなキャラクターメイクとロールプレイをしてくれるとオンラインゲームをしているという感覚を実感できる。

 決して【ペグ忍者】のことじゃない。


 俺に興味があるなら自己紹介でもしとくか?

 俺は【包丁戦士】っていうんだが、さっきお前が言ったようにこの山を抜けて渓谷エリアに行こうと思ってな。

 なに、ここに来た理由は単純に行ったことがないだけだから深く考えないでくれよな。


 俺がそう返すとこのツインテドリルお嬢様は親指をほっぺたに当てて少し悩んだ後に俺に向かって口を開いた。

 

 「あなた様も西トッププレイヤーでしたのね!?

 いいですわ、ワタクシと一緒にこの山を抜けませんこと?

 ワタクシの強さは……保証できませんが道案内くらいはできましてよ?」


 ほう、道案内ができるということは何回かここを突破しているということだよな、でも、この山を抜けるのに強さって別に必要なくないか?

 というか俺も……ということは他のトッププレイヤーと知り合いなんだろうか。

 渓谷エリアに詳しいからあの鬱陶しい【風船飛行士】の可能性が高いな、あいつの話はそこまで興味ないからあえて触れないでおこう。


 「強さが必要なのは……体験してみてからのお楽しみということでよろしくて?

 ここを移動するときはいつも執事を伴っておりましたが、今回はこっそり抜け出してきてここまで来てしまったのですわ。

 ただ、戻るにも戻れませんので死に戻りを覚悟していたところ、あなた様がいらっしゃいましたので、一緒に連れていってもらえればと思いまして!」


 執事がいるとは……かなり凝ったロールプレイをしている集団がこの先の渓谷エリアにあるってことか。


 というかこの金髪お嬢様は死に戻りを極力避けるようなプレイをしているってことがこの会話から分かった。

 このプレイヤーに人権がないゲームでそこまでの倫理観を保っているってことは新規プレイヤーか、ロールプレイの一環なのか気になるところではある……がとりあえずそのロールプレイに乗ってやるとするか。

 結局目的地は一緒だしな。


 あ、そういえばお嬢様の名前は?

 いや、【モブ】かもしれないのか。

 新規プレイヤーかもしれないし【名称公開】のことも伝えて名前を聞くことにするか。


 「あら?

 ワタクシは新規プレイヤーではないですわよ!

 そうですわね……便宜上【ポリン】とでも名乗るとしますわ。

 今後ワタクシのことはポリンとお呼びなさい」


 ははっポリンお嬢様!

 ちょっとロールプレイっぽくやってみる、あんまりロールプレイってやったことなかったけどこんな感じでいいのかな?


 「あら?

 あなた様はノリがよろしいようですね、ワタクシも嬉しいですわよ!

 それではこの場限りの私の執事に、エスコートを命じますわ」


 はい、喜んで!

 こういうプレイもたまにやるとちょっと楽しいな。


 ポリンお嬢様のぷにぷにの手を引きながら山道をどんどん抜けていく。







 しばらく歩くと針葉樹が立ち並ぶ高所に到達しようとしていた。

 

 「ここからが危険ですわよ?

 1度見ていてくださいませ」


 そう言うとその辺に落ちていた木の枝を針葉樹が密集している場所へ放り投げる。

 すると、宙を舞っていたはずの木の枝がどこからか飛んできた針のようなもので撃ち抜かれて吹っ飛んでいった。

 !?

 これはいったい……?


 「針が飛んでいったのは見えましたのね?

 動体視力が優れていますのね、それは結構なことですわ!

 ここは針樹海と渓谷エリアのプレイヤーに呼ばれているエリアですの。

 ログイン場所が新緑都市アネイブルに固定されていた間は、皆ここを毎日突破しなければ渓谷エリアには行けませんでしたが、最近ようやく直接ログイン場所をある程度の範囲から選べるようになりましたので、助かりましたわ」


 ああ、ジェーを突破した影響がここに出ていたか!

 見ず知らずのプレイヤーの苦労が無くなったと考えると、苦労して突破した甲斐があるってもんよ。


 「それではあなた様の護衛術、期待してますわよ?

 ワタクシを守ってくださいね?」


 あざとく俺に向かってウインクを飛ばしてきたツインテドリルのお嬢様。

 さて、いっちょやってやりますか!












 えっ、ここに来てレイドボス討伐を放置して新キャラクターとの交流ですか。

 これだから底辺種族は……本当に遠回りが好きなようですね……


 【Bottom Down-Online Now loading……】


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