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507話 検証ブーメラン

 さて、あれから5人ほどをこの崖ではめ殺ししていたが、皮の袋の耐久度はそんなに無かったようで殴打の度に劣化しとうとう破損してしまった。

 充分活躍してくれたが、俺に修復の技能はないのでここで捨て置くしかない。


 さらば簡易ブラックジャック……



 代わりにと言ってはなんだが、俺が倒したモブプレイヤーが持っていたものの中に、ビール瓶のようなものがあったのでそれを拝借していく。

 簡易ブラックジャックよりも耐久度に難はありそうだが、風船よりは殺傷力があるので持っていかない手はない。


 他にもいくつか手に入れたので、装備していく。

 


 今までなんとかスキルを温存しながら戦ってきているが、俺の持つスキルの中で【深淵顕現権限】は生け贄がないし、【フィレオ】はサバイバルによる長時間連続戦闘を考えたらデメリットが後々響いてくるので使えない。

 【竜鱗図冊】や【堕音深笛】はそれぞれ発動に必要なアイテムを持ち込めていないので論外だ。

 【天元顕現権限】とその他聖獣スキルは使えるだろうが、スキルチェイン前提の使い方をするならばクールタイムが長すぎるので、使いどころを見極める必要があるな。

 文字通り今回の切り札だ。

 なので、戦える相手は極力スキル無しで封殺する必要があるというわけだ。


 

 お分かりいただけただろうか……【検証班長】さんよぉ!

 俺は崖付近でドロップアイテムを漁っていたところに近づいてきた【検証班長】に声をかける。


 「自分自ら手の内を明かすなんて【包丁戦士】さんは余裕みたいだね?

 ……いや、この場合はボクが舐められているってことかな?」


 俺の前に現れたのはメガネをかけた白衣をピッチリと着こなしているやせ型の男……【検証班長】だ。

 【モップ清掃員】といい、2つ名持ちプレイヤーの中でも【検証班】ばっかりエンカウントするのは運がいいのか悪いのか……

 まあ、【検証班長】は2つ名持ちといっても戦闘系プレイヤーではない。

 そんなに身構えなくても、他のモブプレイヤーたち同様に倒せるだろう。


 「それはどうかな?

 【包丁戦士】さんは珍しくボクをみくびりましたね……

 そのツケがこれですよ!」


 その言葉と同時に【検証班長】は指パッチンで音を響かせる。

 すると、木陰から三人ほどぞろぞろとプレイヤーが這い出てきた。

 ……もしや【検証班長】、お前このサバイバルイベントの最中に徒党を組んだのか!?

 

 俺の指摘に不敵な笑みを浮かべ、口を三日月のように歪ませながら返答してきた。


 「ご明察です。

 ボク自身は【包丁戦士】さんも知っての通り戦闘力はありません。

 ですが、普段の活動やレイドボス攻略で培った人望がありますからね。

 数で攻めて勝ち残りますよ!」


 ちっ、これだから人気者は嫌になるな!

 俺はむしろ積極的に全員から狙われているから、普段の行動の差をひしひしと感じるぞ。

 まあ、因果応報と言われたらそれまでだがそれを乗り越えるのがプレイヤーキラーだ、やってやろうじゃないか!


 



 【検証班長】チームは【検証班長】がブーメラン、長身の男が槍、ふくよかな女が五寸釘、ミイラのように細い男か女かわからないやつが杖をチュートリアル武器として所持しているようだ。

 五寸釘使いの女以外はリーチが長めのものだから注意しないとな。

 


 「まずは五寸釘を武器にして【包丁戦士】さんの動きを前衛として止めてください!」


 【検証班長】の言葉で動き出した五寸釘使いの女は、木の枝に取り付けて短剣のようにした五寸釘を使い俺を妨害してくる。

 こいつの動き自体は素人っぽいから回避はイージーだ。


 だが、他の槍と杖の使い手が俺の隙を見つけてはちょくちょくちょっかいを出してくるのが鬱陶しい!

 この派手さのない堅実な戦術はまさに【検証班長】をリーダーとして動くときの傾向だな。


 



 とりあえず一番落としやすそうな五寸釘使いの女の背後に回り込み、首を木の枝で刺しキルしようとしたが、俺の背後に何かが迫ってきていることを察して咄嗟に飛び退いた。


 すると、さっきまで俺がいた場所をブーメランが通過し【検証班長】の手元へ戻っていっている。

 流石にそこまで慣れていないからか狙いがブレ気味だったし、かなり狙いを定めてから慎重に投げてきたみたいだから飛んでくる頻度も高くないが攻撃のタイミングだけは上手いな。

 完全にサポートとしての立ち回りなら、及第点だろう。


 体勢を崩した俺を追い討ちするように、槍と杖による攻撃が追随してきている。

 俺に反撃の機会を与えないための密度の高い攻撃頻度は無難な戦術だが、無難だからこそ厄介でもある。


 

 だが、そんな手堅いだけの戦術で俺を倒せると思ったら大間違いだ!

 俺は回避した姿勢から風船を掴み浮かび上がっていく。

 これで追撃を避けることができるんだが、それが真の目的ではない!

 

 俺はビール瓶を振りかぶり、五寸釘使いの女を頭上から殴打していく。

 風船によって若干浮かび上がった高さから飛び降りるようにして勢いをつけたので、俺が普段の状態で殴打するよりも威力はあっただろう。

 案の定、光の粒子に変わっていっている。




 「くっ、流石は【包丁戦士】さんですね。

 躊躇なくボクの布陣を土足で踏み荒らしてくるなんて、狂人と言われるだけはあるよね……」


 誉められても出せるものは狂気くらいしかないぞ?

 

 「そんなもの出されてもボクが困るだけなんだけど……

 って、いつの間にそんな高くまで逃げたんですか!?

 こうなったら、このブーメランで叩き落としてあげますよ!

 えいっ!」


 相手が四人から三人へ減ったのはいいが、いくら俺でもまともな武器を失った状態で多人数を相手にし続けるのは分が悪いから逃げさせてもらったぞ!

 こういう、逃走手段としては【風船飛行士】の風船は有用だな。


 俺は上空で虚しく通りすぎていったブーメランを見送りながら、ポイントが増えたのでホクホク顔で【検証班長】たちから逃走していくのだった……






 風船だと凶悪度がいくらかマイルドになっていますが、その分鬱陶しさが上がってますね……


 【Bottom Down-Online Now loading……】


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― 新着の感想 ―
[良い点] 検証班長、仲間を集めたのは良かったんですが包丁戦士に挑むには戦慄が足りて無かったようですね この状況では勝ち以外は予想できないでしょうし挑んだのも仕方は無いですが [一言] 4対1になりな…
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