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506話 モブ狩り

 さて、とりあえず初戦の【モップ清掃員】は無事突破できたな。

 なんか思っていたよりも動きがチグハグだったから、モップのときとの感覚の差でバットに振り回されていたな。

 これがこのイベントの怖いところだ。


 普段の武器ならもっと苦戦したであろう相手でもあっさりと勝ててしまう可能性もあるし、逆に苦戦する可能性もある。

 どちらにしても、普段通りに戦うのは難しいってことだな。




 そんなわけで【モップ清掃員】を倒した俺は森林の道を我が物顔で進んでいく。

 するとすぐに人の気配を感じとり木陰に隠れる。

 俺はプレイヤーキラーだからな、気配には人一倍敏感だ。


 木陰から覗くと、木の根を椅子にして一休憩しているところだった。

 おっ、モブプレイヤーだ!

 チュートリアル武器はフリスビーか。

 あっちに射程距離に分があるので遠距離攻撃を仕掛けるのは止めておこう。


 俺はそう判断して、気配を殺しながらモブプレイヤーが休んでいる木の後ろに忍びより、さっと首元へ木の枝を突き刺し呼吸を止めさせる。


 「ほ、【包丁戦士】ィ……!?」


 俺の名前を断末魔として最後に残して喋れなくなったモブプレイヤーは、首に穴を空けたまま静かに光の粒子へと変換されていった。



 今回は手際よくヤれたから、スタミナも消費しなかったな。

 いい感じだ!

 この調子でガンガンポイントを稼いでいくぞ!




 ちなみにだが、このイベントの仕様で説明されていないことがあるとこの二回の戦闘で分かったんだが、まず死に戻りしたプレイヤーが持っていたチュートリアル武器は一緒に光の粒子に変わってしまうので強奪するのは不可能だった。


 【モップ清掃員】が持っていた特製バットとか、さっき倒したモブプレイヤーが持っていたフリスビーとかを消える前に拝借しようと思っていたのに、俺が手に持っていたとしても一緒に無くなってしまった。

 風船以外のまともな武器が手に入れば良かったのだが、そうは問屋が卸さないようだ。

 

 

 もう1つは、倒したプレイヤーが持っていたアイテムはその場に落としてから消えるらしい。

 【モップ清掃員】は開始してから間がなかったからか何も持っていなかったようだが、今倒したモブプレイヤーは皮の袋のようなものを落としてから消えていった。

 よくRPGゲージで敵を倒した時にアイテムがドロップするのと感覚は似ている。

 これは恐らくだが、【菜刀天子】がプレイヤーたちの戦闘のための備品リソースが序盤から急速に消え去ることを危惧したのだろう。

 大量に貴重なものを集めたプレイヤーが早々に死んでしまい、じり貧の戦闘を行われた時には見るほうもつまらないから妥当な判断だな。


 




 そんなことに思いを馳せつつ、手元でさっき拾った皮の袋を弄りながら再び道を進んでいく。

 手元を動かしながら歩くのは俺でも中々苦戦するが、こういうサバイバルでは一度同じ場所で停止する時は確実に周囲が安全か保証できるところじゃないと不味い。

 もし、狙撃手がいた場合にはじっくりと狙いを定められてしまうし、近接武器使いが相手でも止まった状態から動き出すこちらは一歩出遅れることになるから可能な限り動きながら別の作業をするのが理想だ。


 

 というわけで、皮の袋を弄りながらの移動となっているのだが……

 

 「ヒャッハー!

 【包丁戦士】ィィィ!!!

 死にさらせェェェ!!!」


 ダガーを持った世紀末にいそうなモヒカンのモブプレイヤーが追いかけてきている。

 見た目のインパクトが凄いモブプレイヤーだが、威圧感はそんなにないのでヘマさえしなければなんとかなるはず。

 

 「産廃物は焼却だァァァ!!

 ヒャッハー!!!」

 

 ……こいつ、うるさいな!?

 こいつを黙らせるためにも、はやくこの作業を完了させなければっ!?





 風船と走法を活用しながら森の道を駆け抜けていくと、開けた場所に出た。

 これなら迎え撃つのには充分な広さだ。

 ……開けてはいるがこの先は崖のようで、このまま突っ込むと死に戻り不可避なんだがな。

 つまり背水の陣ってやつだ。


 「ヒャッハー!!!

 追い詰めたぜ、【包丁戦士】ィィィ!!!」


 俺は手に持った皮の袋をぎゅっと握りしめて戦闘体勢に入る。

 これ以上は逃げられないからこそ、ここで迎え撃つしかないからな。

 じりじりと間合いを図りながらにじりよっていくモブプレイヤーと俺だったが、その緊張の瞬間に俺は足を滑らせて転けそうな体勢になってしまった。


 「ヒャッハー!!!

 隙を見せた【包丁戦士】の負けだぁぁぁ!!!」


 モヒカンのモブプレイヤーはダガーを大振りで俺に向かって振り下ろしてきた。

 体勢を崩した相手ならこの一撃は必殺となるだろう。






 ……本当に体勢を崩しているのならな!


 

 俺は滑らせたように見せかけた右足を地面に擦るようにして完全に転けるのを防ぎ、仰向けの姿勢になる寸前の体勢で両足で踏ん張りながらダガーを回避した。

 そして、そのままアッパーするかのように皮の袋を振り上げてモヒカンのモブプレイヤーの顔面を殴打した。


 「なんだこの威力ぅぅぅ!?」


 不意を突かれ殴打されたモヒカンのモブプレイヤーはそのまま崖を落下していき、遠く離れた地面に衝突して光の粒子となったようだ。


 この皮の袋には砂と石を詰め込んでおいた。

 そうして作り上げた簡易ブラックジャックとも言える武器で殴られたら、まあ、あんな感じになるわな。

 事前の小細工がきっちり役立ったぞ!

 



 さて、ここなら迎撃もやりやすいし、休憩しながらしばらくここを狩り場とさせてもらおうか!





 



 うまいこと使い道の難しい素材を組み合わせたようですね……

 


 【Bottom Down-Online Now loading……】


207話に【深淵纏縛】を使ったりしてレイドボスになったときの【包丁戦士】を描きました!


P細胞バージョンはにぃのさんに描いていただいたので、今回はЖ細胞バージョンです!


是非見てみて下さい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 現地調達の素材で武器を作って倒すとはまさに生産プレイヤーですね [一言] 絵を見るたびに可愛いと思わされます 狂人じゃなければ会ってみたいですが 狂人だからこそここまで話が面白くなると思う…
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