504話 武器交換漂流祭開催
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
俺がログインすると【菜刀天子】が寄ってきた。
これはイベントの開催か?
「その通りですね。
言葉にしなくとも伝わるようになってきましたね、まるで【渡月伝心】のようです」
なんだかんだ付き合い長いからな。
いつもと違う行動をしてきたら、そこからその意図を読み取ることができるようになってきてしまった。
もはや腐れ縁と言ってもいいだろうな。
「さて、今回のイベントは前にも伝えたようにチュートリアル武器を交換して行う戦闘イベントです。
そこからの形式は悩みましたが……個人でのサバイバル形式ですね。
前回のサバイバルイベントはクラン対抗でしたが、今回は個人での対応力を見させてもらいます。
底辺種族にどこまで求めていいのかは私でも疑問が残るところでしたが、使ったことがない武器で精々足掻けばいいでしょう。
私は高みの見物とさせてもらいます」
出た出た、謎の上から目線!
以前よりは態度が軟化しているものの、本質は変わらず俺たちを見下している。
チュートリアル武器の交換+サバイバルイベントという形式には若干不安があるものの、イベントとしては成立しそうだ。
俺はプレイヤーキラーだからな、他のプレイヤーに直接危害を加えるのは専門分野だ!
このイベントでも積極的に首を獲りに行かせてもらうとしよう、普段使っている包丁は使えないが、俺本来の戦闘スタイルは暗器使いだから問題ない。
ある程度の武器なら使いこなしてやるさ。
「ほう、大きく出ましたね?
精々頑張ってください、その言葉嘘ではないということを私に証明して見せてください。
どのように劣化天子が足掻くのか見物です」
なんか盛大なフラグが立った気がするが、あまり気にしないでおこう。
フラグなんてあてにならないもののことを気にしていると疲れるだけだからな。
変なチュートリアル武器さえ割り当てられなければなんとかなるだろう。
「今回は前回のサバイバルイベントのステージを広げて行います。
ただ、広げるだけなので前回と似通っているマップ部分もあるので、有効活用してください。
……手抜きではないですよ?」
まあ、元々サバイバルイベント用のステージだったし、わざわざ作り直すよりは広げる方が手間がかからないのはわかる。
別にごまかす必要はないと思うぞ。
「ごたごた言っても埒が明かないので、早く転送してしまうとしましょうか。
【上位権限】【Battle field】展開!」
そういうと【菜刀天子】は黄髪を揺らめかせながら腰に差していた中華包丁を天に掲げて、包丁から力の奔流である光を煌めかせ始めた。
そして、柔らかな心地のする光の奔流に俺は飲み込まれた。
【Battle field 特異次元離島ミドルロック】
俺が転送されてきたのは、海の孤島だ。
島と言っても巨大な岩が土台になり、その上に土壌が形成されているという面白い地形だ。
緑が生い茂る場所や、遺跡マップ、海辺の砂浜などがあり地形の違いを活かして戦うことも可能そうだ。
前のイベントだとエリアの名前はリトルロックだったが、今回はミドルロックに変わっていることから【菜刀天子】の言ったようにエリアは広がっているのだろう。
……とは言っても、前のサバイバルイベントの時は俺が途中で次元戦争に巻き込まれたのでエリア全体の地形についてはそんなに知らないのだ。
広がったところと既存のところの差が分からないというのはちょっと損した気分だ。
そんなことを考えながら動こうとしたが、どうやらイベントは開始していないようで、俺の移動が制限されてしまっているのか足が動かせない。
生産イベントのときに身体を操られたのと似たような感じだな。
こういうときは素直に待つとしよう。
10分ほど体操座りで草原のど真ん中で待ち続けると、脳内に声が鳴り響き始めた。
今回はいつもの無機質なものではなく、感情がこもっている声だな。
【さて、定刻となりましたので今回のイベント……【武器交換漂流祭】を開始します】
【イベント内容としては底辺種族でも分かるように実にシンプルです、配布されたチュートリアル武器で戦って生き残ってください】
【制限時間は1日です】
【持ち込みアイテムは一切不可、現地調達のみ可能となっています】
【生存ポイントとキルポイント……そしてボーナスポイントの合計数値が順位に反映されます】
【では、今からチュートリアル武器を配布します】
【武器が手元に現れた瞬間から移動が可能になります】
【では、戦闘スタートです!】
【菜刀天子】によるアナウンスが終わると光の粒子が俺の眼前に集まっていき、何かを形作るように凝縮されてきている。
そして、現れたのは……
風船っ!?
くそっ、よりによって武器としてどう使えばいいのか分からないやつが来たぞ!?
俺は腕にシルバーを巻いたおちゃらけた雰囲気を常に出しているあいつの顔を思いだし、やり場の無い怒りをぶつけるため空想の中で殴りつけた。
さて、自分で言ったことの始末はつけてもらいましょうか。
【Bottom Down-Online Now loading……】