503話 おっさんとろり
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【槌鍛冶士】と【大罪魔】のところにいくぞ!
あの生産イベントの時のこととか聞いておきたいからな……時間が空いてるから今さらかよって思うかもしれないが、しばらくはタイミングが合わなかったのだ。
というわけでやって来ました草原エリアにある【槌鍛治士】の鍛治小屋。
この小屋に足を踏み入れると鉄を叩く音が鳴り響いていることに誰でも気づくほど、大きな音が聞こえてくる。
奥を覗いてみるとそこにはガチムチのおっさんと、銀髪褐色ロリの姿があった。
近づいていくと、足音で俺に気づいたようで作業を止めてこちらを向いてきたようだ。
「ガハハ!!!
また次元戦争に勝ったようだな!!!
相変わらず元気に暴れまわっているようで、ワシも嬉しいぞ!!!」
「嬉しかったり、嬉しくなかったりする……」
【槌鍛冶士】は相変わらず大声で暑苦しい歓迎をしてくれた。
この暑苦しい顔面と身体には、不覚ながらどこか安心感を感じてしまう……不覚ながら……
そして、【大罪魔】!いや、そこは素直に誉めてくれよ!いつも毒にも薬にもならないことばっかり言ってくるから、言いたいことの真意がほとんど伝わってこないのが話しているときの難点だな。
「それで、今日はどんな用事だ!!!
……いやお前のことだ、前のイベントのことについて聞きに来たのだろう!!!」
流石は俺の相棒、誰よりも話が早くて助かる。
そう、あの時のことを色々と聞きたいと思ってたんだ。
【失伝秘具】の【大深罪鉄林包丁】だったか、あれはいったいどういうものだったんだ?
「ガハハ!!!
あれはこの小娘の力を借りて作り上げたものだ!!!
ワシがいつもお前に作っている深淵の力を制御する鉄球と、この小娘の大罪の力を込めた金属を掛け合わせて、ワシが一工夫を加えて作り出した包丁だ!!!
あの大きさになったのは、あのサイズではないと力が収まりきらなかったからだ!!!
だが、見ごたえはあっただろう!!!
流石のワシも作るのには骨が折れたぞ!!!」
あの戦艦サイズの包丁には流石の俺も驚いたぞ。
少なくともプレイヤーでは持てないサイズだ。
「持てたり持てなかったりする……」
お前は……今の【大罪魔】だったら無理だろうが、レイドボスとして本来の力を取り戻したら持てるのかもな。
どんな性質のレイドボスか知らないから断言はできないが、【上位権限】持ちレイドボスならそれくらいやってもおかしくない。
「あの【失伝秘具】の【大深罪鉄林包丁】はお前の目的のために鍛え上げたものだ!!
大罪の力と深淵の力を土地そのものに流し込んで、地形効果を改変を【上位権限】を経由してやり易くなるようにした!!!
他にも遊び心を加えたのだが、そっちはあの包丁を振るえないと意味がないな!!!」
よくわからんがよくやったぞ!
謎の遊び心はこいつの茶目っ気だな。
生産アイテムは性能とかはもちろんだが、意外性もあったりするとクセがあっても使いたくなるものだ。
いや、あの戦艦サイズの包丁を使おうと思っても使えるものじゃないが……
あっ、そういえばお前に見てもらいたいものがあったんだ。
この前天子王宮の宝物庫で見つけたやつなんだが、お前がたまに作ってくれる【深淵顕現権限】の生け贄の代用品の鉄球に似てたから見てもらおうと思ってな。
俺はそんなことを言いながら二十四面体で、ところどころ角張っている怪しい物体を【槌鍛冶士】へと引き渡した。
「……ん!?
お前、なんてものを持っているんだ!!!」
これ?
そんな凄いものなのか……?
「陰湿だったり、壮絶だったりする……
よくそんなものを持って正気で……いや、むしろ他のプレイヤーじゃなくて良かったと思うの。
狂気に堕とされていたり、堕ちたりする……はずだったとおもうの」
え、この二十四面体ってそんな劇物だったのかよ!?
一見するとただの小綺麗な鉱石のようにしか見えない物体なのだが、この二人には本質が見えているようだな。
「とにかくこれはワシが預かっておくぞ!!!
なに、悪いようにはしない!!!
使いやすいように加工してやるからまた時間を置いてからここに来るといい!!!
……深淵フルートと鞭は調整してやるから一緒に置いていってくれ!!!」
おっ、これも調整してくれるなら助かるな。
流石は相棒、細かいところまで見てくれるのは俺と一心同体とシステムに認められるだけのことはあるな。
俺は感激したので【槌鍛冶士】の首もとを包丁で切り裂き、赤く光る光の粒子へと変換していった。
やっぱり【槌鍛冶士】の散り際の粒子は綺麗だな……これを見ると本当に安心感を覚える。
「おかしかったり、おかしかったりする……
【暴食】はいつもこうしてるの……
それで満足しないから【暴食】だけど、それでも狂気を感じるの」
俺が俺であるが故の行動だからな。
【食事】は生きている実感を得られる貴重なタイミングだ、これがあるからこそ俺は生命を感じ取れるのだ。
「【暴食】はそれでいいの。
食べたり、食べなかったりする……それがプレイヤーなの。
……というのはおいておいて、また捕食してきたの?
それならまた徴収したり、しなかったりする……」
【個人アナウンス】
【【『sin』ーーー大罪を司る悪魔】の上位権限】
【【『sin』ーーー大罪を司る悪魔】は【包丁戦士】から称号【『sin』暴食の捕食:憂鬱】を徴収しました】
【【『sin』ーーー大罪を司る悪魔】は【包丁戦士】から称号【『sin』暴食の捕食:憤怒】を徴収しました】
【【『sin』ーーー大罪を司る悪魔】は【包丁戦士】から称号【『sin』暴食の捕食:怠惰】を徴収しました】
【【『sin』ーーー大罪を司る悪魔】は【包丁戦士】から称号【『sin』暴食の捕食:強欲】を徴収しました】
「これであと……七つの大罪は一つで揃うの。
そのためにはあれをやったり、やらなかったりする……」
そんな不気味なことを言いながら【大罪魔】は鍛冶場の奥へと去っていき、そのまま出てくることは無かった。
一体なんだったんだ……?
準備したり、しなかったりする……
【Bottom Down-Online Now loading……】