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499話 遅延戦術

 【Raid Battle!】




 【包丁を冠する君主】





 【菜刀天子】



 【次元天子】【上位権限】【???】





 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】



 【次元をさまよい】



 【冒険者を導く】



 【聖獣を担うが故に】



 【深淵と敵対する】



 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】



 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】



 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】




 【レイドバトルを開始します】



 はい、今日も元気にログイン!

 なんとか次元戦争にも勝って二位に昇格できて良かったわ。

 その後俺の情報を盗み見されたような気もしたが、きっと気のせいだろう。



 そんなことを考えていたら【菜刀天子】がのそのそと歩み寄ってきた。

 足取りが重いのか軽いのか分かりにくいが、表情が険しいわけじゃないから機嫌は悪くないと信じたいところだ。


 「とうとう二位まで上がってきましたか、ここまで来れば上は1つしかないです。

 やるなら徹底的にやらないといけません、劣化天子が私を討伐しようと動いているのは把握していますし、そのための準備をしているのも知っています。

 別にそれを咎めることは今さらしませんが……」


 やっぱりバレているよな、そりゃあれだけ深淵結界を張り巡らしてあればいくらなんでも気づかれるか。

 

 俺の思考を待つつもりはないようで、【菜刀天子】はさらに言葉を紡いでいく。


 「プレイヤーがレイドボスを倒すのは一種の宿業のようなものですから、上位権限AIとしては喜ばしいとも言えます。

 それでも、一位の次元との次元戦争前に私を討伐するのはやめた方がいいでしょう。

 これはお願いではなく、忠告です。

 一位の次元のプレイヤー……特にMVPプレイヤーはレイドボスと互角……それ以上の力を持っていると運営から私に通告されています。

 この包丁次元がプレイヤーだけで勝つのは不可能と言っても良いとも言われています。

 それを前提に次の次元戦争では私自らが最前線で戦うつもりです、なので、それまで休戦としましょう。

 そんなに悪い話では無いでしょう」


 【菜刀天子】は俺に休戦協定を申し出てきた。

 たしかにそれは悪い話ではないな。

 一位の次元はこれまで無敗らしいし、これまで俺が倒してきたどのMVPプレイヤーよりも強いとなると勝算は低いからな。


 

 でも、このままの流れが進むとお前に総力戦を挑むのを俺でも止められなくなるだろう。

 次元戦争はあくまでも一部のプレイヤーしか参加できないコンテンツだ、手持ち無沙汰になった他のプレイヤーたちが止まってくれる保証なんて全くないぞ?


 そんな問いかけを【菜刀天子】に吹っ掛けたが、【菜刀天子】はたじろぐことなく、待ってましたと言わんばかりのどや顔で俺に返答してきた。


 「もちろん対策はあります、次元天子である私がそこまで考えていないわけがないでしょう。

 全く、これだから劣化天子は……

 私は次元天子であり、上位権限AIです。

 思考演算能力についてはプレイヤーたちより遥かに上なんですよ?」


 まあそうだろうな。

 よっぽど予想外なことが起きない限りはこの高慢な次元天子は対応してくるっていうのは今までの経験上知ってた。

 ……逆に言ってしまえば、予想外なことへの対応はそんなに柔軟じゃないんだがな。

  

 

 それで、その上位権限AI様は対策としてどんなことを考えたんだ?

 生半可なものではプレイヤーを惹き付けられないぞ?

 俺は懐疑的な思いで【菜刀天子】へと問いかける。

 ただプレイヤーたちに攻略を待ってくれと言っても聞いてくれない可能性の方が高いと俺は思っているからな。


 「それは公式イベントの開催です!

 私の上位権限AIとしての権限を使えばこのタイミングでイベントを開催することは可能ですからね。

 劣化天子や底辺種族たちは今までの傾向をみると、イベント開催中はレイドボス攻略への動きが停滞しますからね。

 それで時間を稼がせてもらいます」


 ほ~、なるほどな。

 それは確かに効果的かもしれない。

 いくら壮大なオープンワールドゲームでも、変化がなければ飽きが来るのは当然のこと。

 そこでテコ入れとして行われるのが公式イベントの開催だ。

 今までも定期的にイベントが開催され、多くのプレイヤーたちが積極的に参加していたし、俺自身もかなり力を入れていた。


 で、どんなイベントを開催するんだ?


 「今回はチュートリアル武器をランダム交換して、その武器で戦ってもらおうと思っています。

 いつも使っている武器とは異なる感覚で戦えば、その操作感に手間取って時間を稼げるはずですからね。

 底辺種族たちの適応能力の低さを逆手に取る形でこの仕様にしました」


 理由が物凄く気に食わないが、イベントの趣向としては悪くないな。

 2つ名持ちプレイヤーはこのゲームを初めてから同じ武器を使い続けているわけだし、その戦闘経験をリセットするような形になれば大判狂わせも起きる可能性もあるし、ハラハラした戦闘が出来そうだ。


 「そういうことです。

 詳しいことはイベント開催時までに詰めておきますので、他の底辺種族たちに広めておいてください。

 あの底辺種族【検証班長】辺りにでも伝えればそれで充分だとは思いますが」


 そう言って【菜刀天子】は考え事をしながら立ち去っていった。

 そこは自分でやってくれないのね……


 





 さて、早急に開催できるようにしなければ……


 【Bottom Down-Online Now loading……】


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― 新着の感想 ―
[良い点] 天子がしっかりとプレイヤーの思考を読んで時間稼ぎという対策を立てているのは流石ですね このイベントは多くのプレイヤーの戦力が下がるのは間違いないでしょうしね [一言] 釣竿剣士がどうなるか…
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