493話 天変地異師匠
「さて、どう立ち向かってくる……?」
「いきますよ【ウー】【グウ】【ウイ】合わせて補助に入ってください!」
私は釣竿一刀流【斬祓】と【波載】を重ねて師匠へと斬りかかっていきます。
上段からの真っ向斬りで師匠が飛び散らせた最後の岩の破片を切り裂き、ようやく師匠に肉薄することができました。
「これなら!!」
私は渾身の力を込めて釣竿を振り下ろします。
「だから甘いと言っているだろう!
釣竿一刀流【憂鬱壱ノ型ー憂イノ吹雪】!」
師匠は自分が持っていた釣竿を瞬時に凍結させて私の一撃と相殺させてきました。
そして、その釣竿から全てを凍りつかせるような猛吹雪を発生させてきました。
こんな技っ……一度も見たことないですよ!?
「当然であろう、生産的人間ならばな!
お前さんがこのゲームで新たな境地にたどり着いたように、儂もたどり着いたのだ。
大罪【憂鬱】の力によって、儂は自身の老いに憂うことなく戦うことが出来るようになったのだ。
つまり、【憂鬱】の効果は全ての制約を一時的に無視できる禁断の力というわけだ!」
!?
それは……師匠が全盛期の肉体で、積み上げてきた経験を併せ持って戦える良いところ取りじゃないですか!?
下手すると世界が終わりますよ!?
「くっ、釣竿一刀流【渦潮】!」
私はチビ【釣竿剣士】たちと守りの姿勢に入り、攻撃を防ぎながら様子を見ようとしましたが度重なる釣竿一刀流の使用によりゲージを全て消費してしまい消滅してしまいました……
私も釣竿一刀流【渦潮】でも防ぎきれず吹き飛ばされそうになっていますっ!?
「中々健闘したほうではあるが、これで止めだ。
釣竿一刀流【憂鬱二ノ型ー憂イノ大文字】!」
師匠は炎の釣竿を作り出して、それを私に向かって投げてきました。
釣竿は飛翔しながら形を変えて大の字へとなり、私の目の前に迫ってきました。
こ、これは防げません!?
もはやこれまでと思い目を閉じて、死に戻りに備え……
「よう、派手にやられてるな!
まさか【釣竿剣士】がここまで一方的にやられてるとは思わなかったが、間に合って安心したな……」
死に戻り寸前の私の前に立ち塞がったのは、黄金色の左翼と骨の右翼の可憐な乙女です。
妖しげに光る包丁を片手に炎を切り裂いて私を守ってくれました。
そう、その人物とは……
「ほ、【包丁戦士】さん!?
どうしてここに!?」
どうしてと言われても俺の方に来たやつらを返り討ちにして、手が余ったから加勢に来ただけだ。
マキは生け贄に捧げてきた!
俺の今の姿を見ればわかると思うが、【深淵顕現権限】を使った状態だ。
称号【神淵使徒】をセットして全回復させてもらったってわけだな。
マキは死にかけだったし、死にかけ二人で来るよりも全回復した俺が一人で来た方が役立ちそうだったから俺の独断でそうさせてもらった。
だって、あのパジャマロリ起きる気配なかったし……
「ほう、お前さん……友人の一人や二人出来ていたのか。
友人と呼ぶには禍々しい雰囲気なお嬢ではあるが……
その身体、その得物に死の気配がプンプン漂っているのを見るに、殺戮を享楽としている手合いの者で間違いない」
ご明察!
流石は【釣竿剣士】の師匠、よく分かってるじゃないか!
俺はプレイヤーキラーだからな、死の気配がするのは当然だろうな。
「だが誰であろうと生産的人間である儂を止められないであろう!
釣竿一刀流【憂鬱三ノ型ー憂イノ雷】!」
【釣竿剣士】の師匠は俺もろとも【釣竿剣士】を攻撃しようと新たな釣竿一刀流の技を使用し始めてきた。
釣竿を天に向けて掲げている。
あれは何をやっているんだ?
俺がそう疑問に思い【釣竿剣士】に聞いてみるとすぐに答えてくれた。
かなり切羽詰まっている様子からすると、なんかヤバそうだが……?
「師匠は元素爆発というエネルギーを具現化させる異能力を持っていますっ!
炎、氷、砂嵐、水のようなエネルギーを釣竿を経由して自由自在に操って攻撃してきます……気をつけてください!」
なんだその強キャラ感溢れる能力っ!?
なんでもありかよ……
俺が【釣竿剣士】の言葉に驚愕していると、【釣竿剣士】の師匠が天に掲げた釣竿から雷が放たれ、戦場に落雷が発生し始めた。
雷が落ちる度に地面が焦げていき、沼地が蒸発していっている……
これは不味いっ!?
「まるで、竜のレイドボス【オメガンド】が使ってきた天雷ですねっ!?
とりあえず時間を稼ぎます、釣竿一刀流【渦潮】!」
俺も自衛しないとな。
スキル発動!【魚尾砲撃】!
天から降ってきた雷を【釣竿剣士】は釣竿をトーチトワリングの要領で捌いていき、俺は骨翼の付け根から発射した極太レーザーで迎撃した。
流石にいくらなんでも【釣竿剣士】の師匠はレイドボスではないので、スキルによる攻撃で相殺できたが深度がここまで深まった俺の【魚尾砲撃】でようやく相殺止まりになるという時点で出力の高さに脱帽するばかりだ。
「これも防ぐか……
その胆力、見事なものだが……
だがお前さんたち、上ばかり見ていると足元を掬われるぞ?
釣竿一刀流【憂鬱四ノ型ー憂イノ地震】!」
次の瞬間、俺たちは地に這いつくばることとなった……
この底辺種族は何に憂いを感じているのでしょうか……
底辺種族の考えることはさっぱりわかりませんね。
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