488話 眠りのマキロリ
「ケケッ!
雷眼で動きの鈍ったメスガキには負けないぞ!
スキル発動!【ピアシング】だぞ!」
牛乳パフェは手に持った望遠鏡を目の前に構えるのではなく、杖を持つように構えてマキへと接近、そしてスキルの発動によって赤色の光が伴った望遠鏡を突き出した。
邪眼のデメリットで右腕が動いていないのと、雷眼のデメリットによって動きを制限されてしまっているがマキも同様にデバフによる縛りを受けているため攻撃には回れないと判断した上での行動だ。
「へ~?
牛乳パフェお兄さん、【キャスリング】以外のカタカナスキル手に入れたんだねっ?
でも、【涸沢之蛇】の巨体で守っちゃうから届かないよ~!
うちみたいな小さい女の子にまた負けるなんて残念だったね~かわいそ~!」
マキは動きの鈍った蛇腹剣の胴体を動かし望遠鏡による突きを受け止めた。
五メートルもある物体による守りを突破できず、突きは阻まれて……
「ケケッ!
防げたと、そう思ったか?
だが、それは甘いぞメスガキィィィィ!!!」
……いなかった。
蛇腹剣【涸沢之蛇】によって防がれたかのように思われた望遠鏡による突きだったが、なんとそのまま蛇腹剣をすり抜けてマキに直撃したのだ。
だが、牛乳パフェが蛇腹剣をかわして攻撃を通したわけではない。
たしかに望遠鏡の軌道上に蛇腹剣はあったのだが、そこを幽霊が通り抜けるかのように物理的にすり抜けたのだ。
これこそがスキル【ピアシング】の効果。
チュートリアル武器のみをすり抜けて攻撃できるという特殊なスキルなのだ。
それを活用して分厚い蛇腹剣によるガードを見事突破したのが今起きた現象である。
「痛っ、んも~よくもやってくれたねっ!?
ま~た変なスキル手に入れたんだ……
牛乳パフェお兄さん、性格がひねくれてるからそんなスキルばっかりになるんだよ~」
「ケケッ!
勝手に言ってろだぞこのメスガキ……
おれがこのまま戦闘不能にしてやるんだぞ!
スキル発動!【ピアシング】!」
そうして再度望遠鏡に赤い光を宿してマキへと突撃していく。
マキはそれを見てどのように対応すればいいのか思考を巡らしているようだが、視界の端に写った光景を見て自分の行動を決めたのだった。
「あ、そういうことならこれだね~
とりあえずスキル発動!【斬刺睡酩】!
あとは任せたよ変態お姉さん……グゥ……」
【マキがability【睡生無死】を起動しました】
「ウゲゲっ!?
ふらふら、して、……きた……ぞ……」
すり抜けた望遠鏡を腹部に直撃してしまったマキと、すり抜けの影響で蛇腹剣をガード出来なかった牛乳パフェが刺し違える形で攻撃をくらっていた。
両名とも死に戻りこそしていないが、大ダメージを受けることとなった。
そして、マキの放ったスキル【斬刺睡酩】の効果によってマキは睡眠状態に、牛乳パフェは酩酊状態に陥ったのだった。
「ウゲゲっ……
頭がふらふらするが、おれはまだ動けるぞ……
今のうちにメスガキに……っ!?
んっ!?だぞっ!?」
酩酊状態で頭が回っておらず、ふらふらしている牛乳パフェは次の瞬間岩の花弁によって背中から撃ち抜かれて光の粒子へと変換されていった……
俺の答えはこれだ!
スキル発動!【花上楼閣】!
【スキルチェイン【天元顕現権限】【花上楼閣】】】
【追加効果が付与されました】
【スキルクールタイムが増加しました】
俺は背後に岩で出来た花弁を創造して弾丸のように青羽織のおっさんへと撃ち出していく。
警戒域を張っている青羽織のおっさんは神業を見せるかのように岩の花弁を次々に切り捨ててきた。
これではあいつにダメージが通ることはないだろう。
だが、それでいい!
青羽織のおっさんがここに釘付けになっていればこのスキルの役目は果たしているといっていい。
俺はその隙にパジャマロリに向かって突撃を仕掛けている牛乳パフェに向かって、青羽織のおっさんを最低限足止めするものを残した余剰分の岩の花弁を発射していく。
牛乳パフェは目の前のパジャマロリに煽られ続けて、今は目の前しか見えていないようだ。
戦い始めのころはこっちにちょっかいを出す余裕があったのに、相当ロリに煽られ続けられるのが堪えたんだろうな……
メスガキにワカラセられる男とは情けない……
お陰で、位置をワープできる厄介なスキル【キャスリング】を使われずに仕留めることが出来たのは大きな功績だな!
牛乳パフェはこっちのことを無警戒だったので、背中から岩の花弁を受けて死に戻っていった。
そして、パジャマロリもそのまま巻き込まれて死ぬ可能性もあったが、岩の花弁を受けてもダメージを全く受けていないようだ。
まあ、ぐっすり寝てるからこっちに加勢には来れなさそうだが……
パジャマロリはability【睡生無死】によって、寝ている間はダメージを受けなくなっているんだろう。
前パジャマロリと共闘した次元戦争の時に教えてもらったからな。
最悪パジャマロリが落ちても良かったが、なんとかして守ってくれるように事前にアイコンタクトだけ飛ばしていたので対応してくれたようだ。
「……」
この場にいる敵はあとこいつだけなんだが、味方がやられても無言で俺を警戒し続けている。
むしろ、パジャマロリが戦闘できない状態になったのを見てより殺意を俺に飛ばしてくるようになった。
さて、どうしたものかな……
プレイヤーをキルすることにかけてはやはり優れていますね……
不意打ち上等とはいい度胸ですが……
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