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485話 無言のまま

 「ウググッ……

 よくもおれを虚仮にしてくれたぞ!!

 今度こそは逃がさないぞ!!」


 怒り心頭といった表情で追いかけてきたのはパジャマロリのマキに物凄く舐められている望遠鏡次元のMVPプレイヤーである牛乳パフェだ。


 「……」


 そして、もう一人は青い羽織に下駄を履いた日本刀使いの男だ。

 無口だから名前も分からないが、青羽織のおっさんと便宜上呼んでおこう。

 次元の名前になっている武器を使ってこないことから、こいつはMVPプレイヤーじゃなくて俺が召喚した【釣竿剣士】のように助っ人として釣竿次元のプレイヤーなんだろう。


 わざわざ2位の次元のやつが呼んだ仲間なら相当の手練れのはずだ、要注意人物としてマークしておこう。


 「ねぇ変態お姉さん~!

 牛乳パフェお兄さんの牽制はうちに任せていいよっ!

 牛乳パフェお兄さんはざぁ~こ!ざぁ~こ!って感じだからね~」


 「ケケッ!

 そうやっていつもバカにするメスガキ風情がっ!調子に乗っていられるのも今のうちだぞ!」


 めっちゃテンプレっぽいメスガキムーブを牛乳パフェにかましているパジャマロリのマキだったが、煽りとしては成立しているな。

 メスガキの雰囲気が前からマキにはあったが、実際にそれっぽいセリフを言ってるとよりそう見えてくる。

 今さらだが、俺のことも変態お姉さんとかいう煽りっぽい呼び方をされている時点で、俺も既にその毒牙にかかっているか……


 「ケケッ!

 メスガキが相手ならまずはこれだぞ!

 スキル発動!【阻鴉邪眼】!」


 牛乳パフェは深淵スキルである【阻鴉邪眼】を使ってきた。

 右眼に黒い霧と黒い光が宿り、邪眼の先に写る場所に禍々しい雰囲気の黒いデバフサークルを出現させる。

 

 「も~!

 これ、うち嫌いだから止めてよねっ!

 牛乳パフェお兄さんの目線がねっとりしてて気持ち悪いもんっ!

 あと、動きにくくなるし~」


 「ゲゲッ……地味に傷つくこと言われて心外だぞ……」


 「しーらないっ!

 デバフがかかってても、牛乳パフェお兄さんに近接戦で負ける気はないからねっ!

 まずは守りを固めてからいくよっ!

 スキル発動!【水流万花】だよ~!」


 パジャマロリは周囲に水の花弁を生み出して、そのままじゃらじゃらと垂らしていた蛇腹剣で牛乳パフェに切りかかっていった。

 蛇腹剣は刀身が伸びる特殊な剣だから、純粋な近接武器よりも攻撃の軌道が独特になる。

 そんな厄介な攻撃を、牛乳パフェは望遠鏡を杖のように扱い弾いて対応していき、体勢が崩れたパジャマロリを狙い、そのままパジャマロリに向かって突きを繰り出した。


 

 こうなれば俺が守護(まも)らねばっ!?

 そう思った俺は包丁を片手に割り込もうとしたが、さらに俺の前に割り込んできた人影があった。

 日本刀使いの青羽織のおっさんだ。


 「……」


 無言のまま日本刀を振り抜き、俺が構えていた包丁をはじき身体を仰け反らせてきた。

 斜め下から上に切り上げる動作は一瞬死角に入ってしまっていたので対応が遅れてしまったのだ。


 その割り込みによって俺はパジャマロリのところに間に合わせることができず、パジャマロリは牛乳パフェによる望遠鏡の突きによってクリーンヒットを受けてしまったようだ。

 水の花弁による守りが無かったら大ダメージを受けていたかもしれないが、なんとか致命傷は免れたようだ。



 あいつには悪いが、俺もこの青羽織のおっさんを無視してあっちに加勢するのは難しい。

 こいつを牽制しつつ、さっさと倒しやすいと思われる牛乳パフェから落としていきたいところだが……そう上手くはいかないだろうな。


 「……」


 牛乳パフェに続いて青羽織のおっさんも日本刀を上から振り下ろしてきたが、その瞬間に日本刀が茶色の光を放っていたをちらっと確認できてしまったので嫌な予感がした。

 本来なら包丁の腹による受け流しをするところなんだが、多少の隙を見せてしまうことを前提に大幅にサイドステップを駆使して回避してみた。



 するとどうだろうか、日本刀が振り下ろされた後の地面から延伸するように、地面が隆起して一直線に進んでいっている。

 あの地面の隆起に巻き込まれていたら良くて体の一部を失っていたし、悪ければ一発で死に戻りしていただろう。

 こわっ……




 ちなみにだが、あの現象には見覚えがある。

 十字架次元のプレイヤーたちが多用してきた生命花の力のスキル【巌亀開花】と酷似している……というよりはそのものだろう。


 だが、スキル発動の宣言をしていなかったはずだ。

 終始無言のままだったし……


 このゲーム、基本的にはスキルは音声入力となっているのでマンガの登場人物のようにスキルの名前を口にしながら攻撃したりしているんだが、こいつにはその気配がない。

 

 「……」


 ちっ、また無言で日本刀を振るって連続して地面を隆起させてきたぞ。

 こいつ、容赦なしかよ!?


 顕現スキルもまだ使ってないし、これを真っ正面から受け止めるのはいくらなんでもリスキーなのでさっきと同じくサイドステップによる回避で凌いだ。


 「……」


 くそっ、このままじゃパジャマロリに加勢するどころか、先に俺が危うくヤられかねないぞ。

 これは本腰を入れて戦いに臨まないといけないようだな!

 こうなったら、ギアを上げさせてもらうぞ!








 若干劣勢ですね……

 全く、これだから劣化天子は……


 【Bottom Down-Online Now loading……】


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― 新着の感想 ―
[良い点] タイマンの状況を作れましたが若干不利に見えますね もう2人の状況も気になるところですがどうなるか [一言] スキル使用のための言葉が無いとエフェクトでしか判断出来ず何をされるか分かりにくい…
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