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483話 大きい声のブルーカラー

 俺たちは辺りに警戒を払いつつも雑談をしながら進んでいくと、【釣竿剣士】が急に前に走り出て釣竿を構えた。

 

 「えっ!?

 なになに~!?」


 「敵襲みたいだね。

 ここからが試合開始かな」


 「その通りです、まずはこの炎のレーザーポイント地点を生産プレイヤーである私が防ぎます!

 釣竿一刀流【渦潮】!」


 【釣竿剣士】は構えていた釣竿をトーチトワリングの要領で振り回し始めた。

 俺には【釣竿剣士】が言っているような炎のレーザーポイントというのは見えないが、この【釣竿剣士】が無駄なことをするとは思えないし攻撃だと判断したんだろう。


 

 そんなことを思っていると、【釣竿剣士】の振り回している釣竿周辺に炎が急に着火した。

 だが、ぐるぐると回っている釣竿によってすぐにかき消されていく。

 数秒おきに炎は再出現してきているが、それでも【釣竿剣士】の隙のない守りによって即座に対応できている。


 「これは【燃焼】の力を持ったスキルだから、多分朱雀レイドボス系統のものだね。

 コッチの【渦炎炭鳥】は回避スキルだけど、これは攻撃スキルみたいだよ」


 「えっ、朱雀?

 鳳凰じゃないの~?

 うちのところ朱雀なんて居ないんだよっ!」


 石動故智のピッケル次元は包丁次元と同じく朱雀レイドボスを倒して【渦炎炭鳥】を手に入れたっていうのは前に石動故智と戦ったときにちらっと聞いたが、パジャマロリの次元には別のタイプのレイドボスがいるようだ。


 それは今後詳しく聞きたいところだが、それよりもこの急に着火する遠距離攻撃スキルには見覚えがあるぞ。

 石動故智と戦った次元戦争にいたもう一人のMVPプレイヤー、望遠鏡次元の牛乳パフェのスキル【彩鳥炎眼】だ。


 『ケケッ!

 その通りおれのスキルだぞ!』


 俺が答えを口に出したところで、どこからか声が響いてきた。

 ただ、アナウンスみたいに脳内に響いてくるのではなく、山びこのようにエリアに声が浸透していっているといったところか。

 

 そして、この声の主はやはり牛乳パフェのようだ。

 どんな原理でここまで声を届かせているのか知らないが、あのパフェ野郎は奇妙なことができるんだな。


 『ウググッ……

 パフェ野郎とは酷い言い草だぞ!

 ……これは公式イベントの【草原の大声大会】の優勝記念称号【声だけはデカイ奴】の効果だぞ!

 おれが見ている相手まで声を届かせられる便利な称号だぞ!』


 

 【声だけはデカイ奴】ってそんな名前の称号もらいたくないんだが……

 そんな称号を優勝商品にする望遠鏡次元の天子の性格は、かなり悪いに違いない。


 だが、名前に反してその効果は便利そうだ。

 視認している相手までっていうのは、普通に使うと微妙な効果だがチュートリアル武器が望遠鏡の牛乳パフェが使うとなると話は変わってくる。


 『ククッ……

 その通りだぞ!

 まさに、おれのためにあるような称号みたいだぞ!』


 「牛乳パフェお兄さん、いつも戦闘に直接役立たなさそうな小技ばっかり披露してくるんだよね~

 うちに見せびらかしたいのか知らないけど、それが隙になってるから毎回楽に勝てるんだよっ!」


 パジャマロリの発言からすると、牛乳パフェは自分ができることを誇示したいタイプのプレイヤーらしいな。

 

 こいつの見た目だが、ソフトクリームのような渦巻いている髪型で髪の色も白色というキャラクターネームに沿ったビジュアルをしている。

 服も、ズボンも、靴も白という拘りようだから、どこからどう見ても目立ちたがりっていうのは分かっていたが、奇襲してそのまま俺たちに語りかけてくるくらい自分を誇示したいとは……


 普通遠距離攻撃型のプレイヤーは遠距離攻撃してから、正体がバレないように相手に位置を悟られないように移動するのがセオリーだ。

 同じ遠距離攻撃主体の【短弓射手】は俺を狙ってくるときはいつもそうしてくる。



 だが、そのセオリーを捨ててまで話しかけてくるとは間抜けなんだろうか……



 『ケケッ……

 そんなことをいってるとお前も燃やし尽くしてやるぞ!

 スキル発動!【彩鳥炎眼】!』


 さっきまで【釣竿剣士】が防いでいた炎眼による攻撃だったが、挑発した俺に標的が変わったようだ。


 俺は狙いを定められないように小刻みにステップを踏みながら、射撃手がいると思われる僅かに丘陵のようになっている場所まで駆けていく。


 『ウゲゲッ……

 相変わらずすばしっこいやつだぞ……

 炎眼が当てられないぞ!?』


 俺が通りすぎた空間に炎が出現し続けているが、来る方向が分かっていて【釣竿剣士】による守りのサポートもあるので難なく接近が可能だ!

 炎が現れては回避、炎が現れては【釣竿剣士】による釣竿一刀流【渦潮】の守りに阻まれを根気強く繰り返していっている。


 牛乳パフェも後退しながら応戦してきているが、4対1という数の暴力には逆らえない。

 みるみる距離が縮まっていくのを目の当たりにした牛乳パフェの顔色が青くなってきている。

 気の毒だが、これも勝負の世界だ!

 速攻でお前の持っているリングを奪わせてもらう!


 「ケケッ!!!」


 いや、様子がおかしい!?

 牛乳パフェの顔色が青くなっているのも、真っ青……ペンキで塗ったような色だ。

 もしやこれも称号の効果か!?


 「ゲゲッ!?

 もうバレたか……

 そう、称号【ブルーカラー遊戯人】で身体を青くできるんだぞ!

 そして、かかったな!

 お前たちは完全に包囲されているんだぞ!」

 

 「えっ、まさかの牛乳パフェお兄さんにハメられちゃったよ~!?」

 

 その言葉でハッとした俺たちは辺りを見渡すと、俺たちを取り囲むように牛乳パフェを含んだ3つの人影が突如として現れたのだった。






 劣化天子、はじめから劣勢とは堕ちたものですね……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[良い点] 上手く狩れたかと思いきや囲まれているとは 相手、即興チームのはずなのに連携うまいですね [一言] 序盤にいきなり劣勢ですか でも牛乳パフェを含め3人?もう一人はどこにいるのか
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