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477話 【冒険者を堕とす】

本日二話目の投稿になります。

まだ前の話を読んでいない人はそちらからお願いします。

 さて、【深度の種】の発芽、新たなる命の成長による停止が終わった今……

 残されたのは神の祝福のみだ。


 ここでルル様が来てくれたら、自動的に達成されそうなものなんだが一向にその気配すらない。

 おかしい……ルル様のことだからここの様子も把握しているものだと思ったが、それは思い上がりだったか?

  

 【見てはおるぞ】


 なんか頭に声が響いてきた。

 ルル様が気を利かせてくれたようだが、特に来る気配はなさそうだ。

 見て“は”いるが、それ以上のことは語ってくれないし、動く様子もない。


 つまり、ルル様本人(?)に頼るギミックではないということだろう。

 もしかすると条件付きで動いてくれたりするかもしれないが、ここまでやって動いてくれないのであれば、動かすのにさらに厳しい条件を突破しないといけない可能性がある。

 それに頼るのは、今できそうなことをやってからの方がいいだろう。

 

 ルル様に頼らない神の祝福か……

 物凄く思い当たるものがある。


 やってみるか!

 俺はスキル発動の衝撃に耐えられるように身構えて、身体に力を入れていく。



 いくぞ!

 スキル発動!【堕枝深淵】!



 【スキルチェイン【深淵纏縛P(エルル)】【堕枝深淵】】



 【追加効果が付与されました】



 【デメリットが増加しました】



 【origin【堕枝深淵】】


 アナウンスが終わるのを確認してスキルの詠唱を開始する。




 【我が領域を侵すものよ】


 俺に襲いかかってきた蕀に向けて宣言する。

 深淵奈落はルル様の領域であり、今の俺はそのルル様と一心同体かつその力を纏っている状態だ。

 実質的に俺の領域をこの蕀は侵食してきたと言っても過言ではない。






 【流転する境界の狭間にて、我が深き業を刻み込め】


 ルル様の宿業……その中でも【深淵へ誘い】は俺と一致しており、【境界に流転する】という項目については微妙に似ている【聖邪の境界を流転させる】という宿業を俺は持っている。

 この2つについて意識しながら力をコントロールしていき、キリゲーによって停止した蕀に俺の力を刻み込むことをイメージして力を練り込んでいく。






 【汝、聖なるものなれば我が深淵に染まるがよい】


 この蕀が聖なるものなのかと言われると既に深淵に染まっていそうな感じがするが、深淵と言っても深淵種族それぞれに力の性質が異なっているからな。

 この無色の深淵の力を宿している蕀を俺色の力に染め上げていく必要がある。

 黒色の中でも、俺好みの赤黒い性質を深く深く感じとりながらゆっくりと力を浸透させていく。






 【これは我が存在の証明】


 この力はルル様の奥義であり、偶然にも俺がその本質を垣間見た結果使えている力だ。

 俺はこの力を幾度となく使用して数々の強敵と渡り合ってきた。

 本来はルル様という存在を証明するためのスキルなんだろうが、俺にとってもゲーム内での存在を証明し、主張してきた力となっている。

 このスキルを手に入れたばかりの使い始めの時とは違って、もはや我の力の一部となっていたりもするのだ。

 





 さあ、征け!征け!征け!

 我という存在、我の領域、我の境界に踏み込んできた不埒な存在に力の格というものを見せつけるのだ!

 今こそ解き放たん、我らの力の真髄!

 その名は……


 【スキル発動!【堕枝深淵】】





 我の力が注ぎ込まれた蕀を不遜なる侵略者と化した、【深度の種】から発芽した蕀へ絡ませていく。

 まだ何色にも染まっていない純粋な深淵の力を持った生誕直後の蕀は、我という存在を一身に引き受けた蕀によって力の楔を打ち立てられていっておる。

 一つ、また一つと蕀の棘が突き刺さることによって、停止させられていた【深度の種】から発芽した蕀は赤黒く染まっていき重鎮を迎え入れるためのレッドカーペットのように【深淵奈落ー中層 ルルナティック】全体の地面に広がり始めたのぅ……


 全く世話の焼ける蕀であったが、我にかかればこのようなこと造作もない。

 所詮は生まれたての力、【深淵域の管理者】である我であれば……ん?んん???


 頭がっ!?

 異常を感じ始めたが、何が異常なのかがわからない!?

 くぐっ!?

 頭を両手で抑えながら俺は……我は……!?










 その時、黄金色の鵄が正鵠を射るかのように雄叫びをあげ始めた。

 

 【ҐҐҐ▼▼縁Ґ▼▼ҐҐ断!!!!】


 スキルを強制中断させる雄叫びによって、俺の【堕枝深淵】が縮小していき消滅していく。

 それと同時に俺に襲いかかっていた謎の違和感も収まっていっている。

 


 ……今のは非常に危なかった気がする。

 まるで俺が俺で無くなってしまっていくかのような感覚だった。

 俺という人格がルル様の人格に上書きされていく、その途中でキリゲーに助けられたということだ。


 まさか、【堕枝深淵】に志向性を持たせて同調していくとこんなデメリットがあるなんて思わなかったぞ。

 深淵細胞を取り込むデメリットはability【会者定離】によってほぼ無効化されていたが、まさかスキルという面から俺に深刻なデメリットを押しつけようとしてくるなんて想定していなかった。


 これが、ボマードちゃんやポリンお嬢様が体験している深淵種族による人格の乗っ取りなのだろう。

 途中で正気に戻れたからいいものの、あのままいくと本格的に身体が乗っ取られていたに違いない。



 一人称とか口調とか完全にルル様のやつになってたし、【堕枝深淵】はルル様の奥義なだけあって下手に悪用しようとするとこうやってデメリットが跳ね返ってくるんだな。

 スキルチェインによるデメリットの増加ってこういうことか……



 俺は床に広がったレッドカーペットのような蕀を、遠い目をして眺めながら止まらない冷や汗を流し続けることとなった。



 【個人アナウンス】

 

 【【包丁戦士】に称号【堕ちなかった者】を付与しました】


 【称号の効果で【Bottom Down】!】


 【【包丁戦士】の深度が57になりました】


 【スキル獲得条件達成者を検索……対象者1名】


 【【包丁戦士】に対してスキル【紅枝深淵】を付与しました】


 【※このスキルの使用によってプレイ続行が不可能になった場合でも、対応はしかねます。細心の注意を払った上で使用していただくように、よろしくお願いいたします。】








 惜しかったのぅ……

 完全に堕ちたと思ったのだが……


 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[良い点] 流石ルル様 包丁戦士とはいえど隙あらば乗っ取ろうとするとは キリゲーが助けてくれなければ危ないところでしたね [一言] ここで新たなスキル、紅になっているのは包丁戦士が好きな色と言っていた…
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