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476話 禁断の種

 【Raid Battle!】


 【深淵域の管理者】



 【エルル】


 【???】【上位権限】【ボーダー】



 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】


 【深淵へ誘い】


 【冒険者を堕とす】


 【深き真価を見極め】


 【境界に流転する】


 【封印された夢想が解き放たれし時】


 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】


 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】


 【レイドバトルを開始します】


 はい、今日も元気にログイン!

 今日は先日思いついたこと試していくぞ!



 


 というわけで、今日も今日とて【深淵奈落ー中層 ルルナティック】からログインだ。

 ルル様たちの準備が整うまではここの攻略に集中するつもりだからな。

 あわよくば、何か得られることを期待して突き進むぞ!




 さて、このエリア唯一の安全地帯である初期地点にいるわけだが、ここは力の影響がない空白地点なんじゃないかと俺は睨んでいる。

 だから、力のあるものの影響を受けると、白いキャンバスを絵の具で塗りつぶしていくかのように上書きできると思った。


 そして、力のあるもの、種、深淵奈落その辺りを考えていくと、何故か俺が一切触れてこなかったものに思い当たった。

 それは数々のイベントの報酬で俺に与えられていたが、【菜刀天子】の言葉によって使用を止めていたアイテム。

 使用者を深淵種族に近づけ、プレイヤーであろうと容赦なく堕としていく闇の力を纏った禁忌に触れるとすら思えてくる不気味さを持ったものだ。

 

 これに相対するアイテムは使ったことがあるのだが、頑なに【菜刀天子】から止められていたからこちらは未使用。

 ルル様から言及されたことがなかったので、俺もそのまま死にアイテムとしてお蔵入りさせようとすらしていたが、使い道があるのなら話は別だ。


 そのアイテムの名前とは……




 【深度の種】だ!



 1つ使えば深度を上げられるという俺にとっては破格の基礎能力向上に繋がるものだったが、使ってこなかったので今となっては20個もたまってしまっている。

 イベントの報酬で自動で手に入ったり、ポイント交換で複数個手に入ったりしたからな。

 何故か使わない予定の【深度の種】を交換してしまっていたのだが、何かに思考が囚われていたんだろうか……?


 ……いや、それはまあいいか。

 とりあえず、【深度の種】はイベント報酬の受け取り画面にストックしてあるままだったので、ウインドウ画面を呼び出し、コンソール操作で報酬受け取り許可を出した。

 そうするとすぐに【深度の種】が実体化して俺の手のひらに落ちてきた。

 見た目は爛々と主張してくる禍々しい緑色と、全てを呑み込むかのような深さを感じる黒色の種で、いかにも怪しいやつだった。


 これをとりあえず初期地点に埋めてみる。

 すると、地面に触れた瞬間に種が発芽し、蕀が渦を巻くように急成長していった。

 


 うおっ、危ないっ!?

 スキル発動!【深淵纏縛】!


 

 【Raid Battle!】



 【包丁戦士】



 【深淵域の管理者】



 【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】






 【聖獣を担うが故に】


 【深淵へ誘い】


 【聖邪の境界を流転させる】


 【会うは別れの始め】


 【合わせ物は離れ物】


 【産声は死の始まり】


 【この世の栄誉は去ってゆく】


 【故に永遠なるものなど存在しない】


 【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】


 【ああ……この世は無情である】







 【ワールドアナウンス】



 【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】



 【レイドバトルを開始します】



 俺は瞬時にルル様の細胞を励起してゴスロリフォームになったあと、蕀から逃れるために宙へと飛び立った。

 すると、次の瞬間にはさっきまで俺が居たところは蕀に埋め尽くされていってしまった。

 

 間一髪だったな……

 なんとか逃れることが出来た俺は、僅かな膨らみのある胸を撫で下ろしながら安堵した。

 

 だが、そんな俺の安心感をぶち壊してくるのが、このプレイヤーに人権のないゲームの常だ。

 蕀は渦を巻きながらこの空間に唯一存在する生命体である俺に向かって、今にも取り込もうとしているかのように成長を続けてきているのだ。


 まずいぞっ、逃げろ!逃げろ!逃げろ!

 


 不規則に逃げ回りながら俺はこの後のことについて考えていかないとならない。

 

 【種は祈りによって発芽する……】

 【新たな命の成長に】

 【神の祝福あれ!】


 この中の、とりあえず発芽までは終わった。

 次は新たな命の成長に……

 これだな。


 普通に考えるのなら、この発芽した蕀のことなんだが……これは命と呼ぶにはおぞまし過ぎる。

 生命体というよりは、世界維持機構のようなシステムチックなものに思える。

 

 それなら新たな命の成長に該当しそうなのは……

 スキル発動!【想起現像】!


 俺は宙を飛び回りながらも、次の一手として赤い砂を生成していく。

 だが、これはただの赤い砂ではない。

 砂が発生していくのと同時に集結し、形作られていく。


 そして、その集結が終わると飛翔する俺に追随するように黄金色の鵄が出現した。

 そう!俺が呼び出したのは【深淵聖獣キリゲー=サキールシゥン】!

 俺が育て上げた新たな命だ。


 お前の力をここで貸してくれ!

 スキルを発動して隙が出来てしまった俺に、蕀が後一歩のところまで迫ってきている。

 ここでキリゲーが助けにならなければ間違いなく俺は死に戻りすることになる。

 頼む、お前の力を信じるぞぉぉぉぉ!!!



 俺の必死な声が響き渡るのを感じながら、その時を待つ。

 そして、時は来た!


 【ҐҐҐ▼▼縁Ґ▼▼ҐҐ断!!!!】


 俺の願いを聞き届けたキリゲーがスキルを強制的に中断させる【縁断】の力を使い、俺に迫り来る蕀の動きを停止させていく。

 蕀が氷によって凍結されていくような急停止をはじめ、俺を呑み込もうとしていた蕀も止まってくれたのでなんとか生き永らえることができた。


 よ~しよ~し!

 お手柄だぞキリゲー!


 【ҐҐҐ♪】


 ご褒美に喉元を撫でてやったら、甘えるような声ですがりよってきた。

 頼りになるようにはなってきたが、まだまだ可愛いものだな。


 


 



 ほう、まさかそのルートを辿るとは思わなかったのぅ……

 正規の進行はもはや無いと思った方がよいか……


 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[良い点] 流石キリゲー 可愛い上に頼りになるとか最高ですね [一言] 正規ルートではないのか 確かに祈ってないですし今も成長をむしろ止めてますしね それでもルル様の想定内には収まっていそうなので大丈…
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