475話 点と線
【Raid Battle!】
【深淵域の管理者】
【エルル】
【???】【上位権限】【ボーダー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【深淵へ誘い】
【冒険者を堕とす】
【深き真価を見極め】
【境界に流転する】
【封印された夢想が解き放たれし時】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
【拡散スイカ】の種による爆撃は失敗してしまったので、今度は別の方法を試さないといけない。
いや、爆撃がメインの目的じゃなくて、種を埋められるかの実験に失敗して八つ当たりしたのが真実なんだけどな。
その結果、俺が死んでしまったので元も子もないが……
というわけで散策をするために、スキル発動!【深淵纏縛】!
まずは片翼の骨羽が背中から突き出るように出現し、俺の背中に生えてきた右骨翼周辺にもやがかかり、黒い羽が形成された。
また、それと同時に俺の身体も黒いもやに覆われて、新たな服へと変化させていく。
そして、黒いもやが晴れた時、俺が着ていた服は緑色がメインで、黒色のフリルのついたゴスロリへと変化していた。
そう、今回もルル様の【P細胞】を励起しての探索だな。
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【深淵域の管理者】
【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
このルル様の翼がないと生きていけない世界だからな……
虎の威を借る狐とはまさにこのことだが、底辺を這いずる俺たちプレイヤーは頼れるもの全てを使っていかないとまともな生活を送れないのだ。
今回は、空中に浮きながら初期地点の地面に種を埋めてみようと思う。
いかにも怪しい深淵種族たちの像を意識し過ぎていたが、【深淵奈落ー中層 ルルナティック】で異質なのは、なにも深淵種族たちの像だけじゃなかったのだ。
そう、今俺が浮かんでいる場所の真下にある初期地点の地面だけは、俺が立っても死に戻りさせられなかった唯一の場所だ。
つまり、俺が死に戻りしないということ自体が、このエリアの中では異質というわけだ。
何を言っているのかうまく伝わらないかもしれないが、初期地点だけは特殊な力が働いていない……もしくは初期地点だけに特殊な力が働いている…もしくはそのどちらかだろうと思ったわけだな。
ここから一歩歩くだけで死ぬ空間なので、それが発生しない初期地点の地面は安全と想定して種を埋めてみようという発想になった。
というわけで、【酩酊ブドウ】を調理する時に出た種と、その他二つほど天子王宮の宝物庫からくすねてきた種を埋めてみる。
地面を手で触れると黒い霧を発生させ続けている板のような硬い地面だったが、ルル様の翼で小突いてやったら少し削れたので、そこに種を捩じ込んでみる。
うりうり!
……捩じ込んでみたはいいものの、種に変化がない。
とりあえず、次の条件の祈りってやつをやってみるか。
俺は虚飾聖女……十字架次元のMVPプレイヤーである綺羅星天奈のことを思い出しながら両手を組んで、まぶたを閉じ、種の成長を祈ってみた。
どれくらいの時間祈ればいいのか分からないので、黙々と待ってみる。
一分、二分、三分……どれくらい経ったのか分からなくなった頃に目を開けて、種があったところを見てみるとそこには!?
特に変化もしていない【酩酊ブドウ】の種があった。
いや、ここは何かあるところだろ!?
俺の期待を裏切らないでくれ……
周りに誰もいないので完全に一人で愚痴を言っているヤバい人と化しているが、誰にも見られていないのでむしろセーフだろう。
いや、セーフなのか?
流石に暗い空間で長時間一人行動していると思考力が乱されていく。
現実でもよく体験しているが……あっ、いや何でもない、忘れて。
とりあえず気を取り直して、この初期地点ではアイテムが消えることがないから、【酩酊ブドウ】の種以外でも試してみるか!
俺はルル様の翼でさらに穴を広げて、そこに宝物庫から持ってきた種を片っ端から突っ込んでいく。
ほらほらほら!
これだけあればどれか引っ掛かるんじゃないのか?
そう期待を込めながら、再度両手を組んで、まぶたを閉じ、種の成長を祈ってみた。
どれくらいの時間祈ればいいのか分からないので、黙々と待ってみる。
一分、二分、三分……どれくらい経ったのか分からなくなった頃に目を開けて、種があったところを見てみるとそこには!?
……やっぱり変化のない種の塊が目の前に鎮座していた。
はぁ、ここまでギミック攻略が分からないのはレイドボスと戦うよりも精神が滅入ってくるぞ!
レイドボスは戦えば戦うほどパターンを読めたりするのに、このエリアギミックは正しい方向に思考が進んでいるのかすら疑ってしまう。
とは言ってもやるしかないので、今度はイベント報酬でもらっていたアイテム詰め合わせセットの中にあったレア物の種でも使……う……か?
いや、待てよ?
イベント報酬!?
その時、俺の頭に激しい電流が走ったかのような衝撃が発生した。
この場所、レア物の種、ここに入るための条件、それらが点と点とを結び、線になっていくかのごとく繋がっていき、ひとつの答えを導きだしたのだ!
そうだ、何故気づかなかったんだ!?
一番本命っぽいものを試してなかったじゃないか!
ほう、何かに気づいたようだのぅ……?
これが合っているのか見物だな。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】