表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

473/2202

473話 礼拝所伝承

 さて、とりあえず目的の物を手に入れたのでミューンのいる礼拝所へと戻ってきた。


 「我很兴奋……

 ……はやく、たべたい」


 部屋に入った俺を真っ先に出迎えたのは、無表情のままなのにウキウキと足踏みをしながら体を揺らしているミューンだ。

 こいつ、戦闘狂って言われてるわりに食事してる姿しか見ていないから、食いしん坊キャラクターかと思ってしまうぞ……

 聖獣の食いしん坊キャラはルル様曰く、暴飲暴食の棘亀……【ウプシロン】のはずなんだがなぁ……


 「あいつは、たべれたら、なんでも、いい、らしい……

 ……そこが、ちがう」


 ミューンは味の選り好みをするが、【ウプシロン】はひたすら何でも食べ続けるタイプか。

 大食いチャンピオンかなんかかよ……

 そんな勢いで俺の料理を食べられたら材料が直ぐに尽きてしまうに違いない。


 とりあえず、持ってきた料理を与えるか。

 俺が持ってきたのは【酩酊ブドウ】と【激情イチゴ】のアフタヌーンティーセットだ。

 

 俺が取り出したアフタヌーンティーセットにミューンは目を輝かせている……のかは無表情なのでわからないが、喜んでいるようには見える。

 さっそく紅茶を飲んで……いや、待てよ……

 あれは紅茶じゃなくてカクテル酒だったな!?


 おい!飲むのをやめっっっ


  「……不允许假品っ!

 【兎月伝心】!!!!!」


 ミューンは俺の作り出した感情を異様に高揚させる効果のアイテムの影響で戦闘体勢に入り、手に装着していた爪から紫色の光の円環を発して俺の周りを囲い込んできた。


 宙で揺らぎながら煌めく光の粒子は摩天楼で輝くネオンのように幻想的な光景を作り出しており、見世物としても一級品だ。

 流石は元レイドボスが繰り出すスキル、プレイヤーのものとは質が違う。


 ここで抗って【兎月伝心】を撃ち破ろうとしても、それは逆に戦闘狂のミューンの欲望を駆り立てるだけだ。

 諦めて一回死んでおこう。


 俺は無抵抗のまま、粒子によって切り刻まれ死に戻りすることとなった……










  死んでから【菜刀天子】と謁見の間で雑談をして、ミューンに投与してしまった【酩酊ブドウ】と【激情イチゴ】の効果がキレるまで時間を潰してから、再度礼拝所へ突撃した。

 

 よう、そろそろ落ち着いたか?

 

 「おちついた……

 りょうりも、おいしかった……」


 その言葉でふと料理セットが置いてあった場所を見てみると全部食べてあった。

 あの激情状態でも食事を続けるとは大したものだが、それなら俺をキルするのも抑えきってくれよな……


 「それは、むり……

 しんえんしゅぞくのいんしつなけはいは、はいじょしたく、なる!」


 排除したくなる!じゃないんだよなぁ……

 料理もわざわざ持ってきてやったんだから、この礼拝所の役割についてそろそろ吐いてもらおうか!


 「やっぱり、ごまかせない……」


 元々誤魔化されてやるつもりはないし、これが本目的で来ているんだから忘れるわけない。

 ここで引き下がると、俺の攻略が行き詰まる可能性があるし意地でも聞き出さなければならない。


 「つよい、けつい、かんじる!

 ……わかった、おしえる」


 俺が一歩も引く気がないことを悟ったミューンは、礼拝所に設置されている椅子に腰を掛けて足を組んだ。

 大胆にスリットの入った紫色のチャイナドレスからチラリと覗く肉厚な太ももが扇情的で、俺の視線を集めることとなったがミューンはその視線に気づいていないかのように語り始めた。


 「たねは、いのりによって、はつがする……

 あらたな、いのちの、せいちょうに、かみの、しゅくふくあれ!」


 は?

 急に饒舌になって、ポエムみたいなことをいいはじめたぞこの無表情チャイナ女。

 まだ【酩酊ブドウ】の効果で酔っぱらっているんじゃないんだろうな?

 そう思えるほど、ミューンの普段の発言とは似かよっていない。


 「これは、ここの、まもりてに、つたえられてる。

 ……でんしょうのいちぶ」


 伝承の一部ってことは、これ以外にも伝えられていることがあるっていうことだが……今考えるのはそこではない。

 わざわざ一部だけピックアップして俺に教えてくれたっていうことは、この部分が俺の一番知りたがっているものに近いとミューンが判断したということだろう。


 それなら、この謎ポエムを吟味する必要があるな。

 【種は祈りによって発芽する……】

 【新たな命の成長に】

 【神の祝福あれ!】か。


 これらのワードが何を意味しているのか……

 ちなみに、ミューン教えてくれたりする?


 俺は最後の望みをかけてミューンにすがりよって、肩を揉んだり、胸を揉んだりしてみたが反応は芳しくない。


 「きみつじょうほう、いいたくてもいえない……

 ……これでも、ぎりぎり」


 いつも無表情なミューンが、珍しく苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらそう口にした。

 ここまで表情を変えるミューンは極めて珍しい。

 本気で俺に教えようとしていたが、ゲームシステムによって具体的なことや深いことを伝える機能をロックされているのだろう。

 

 こんな表情のミューンを責めるのは気が引けるし、一応ヒントのようなものをもらえたし色々と試してみるか。

 とりあえず宝物庫にある色々な種を回収しておこう……

 悪いな【菜刀天子】、共有財産だと思って諦めてくれ。









 まあ、種くらいならいいですけど……

 私が持っていても育てることはないですから、劣化天子に託すのも悪い話ではない……?


 【Bottom Down-Online Now loading……】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 心苦しい様ですが菜刀天子でさえよく分かっていない情報を教えてくれただけでも大分助かっていますね 後は包丁戦士の推理力次第ですね [一言] 種?そのまま植物のことかどうか 新しい聖獣でも生み…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ