47話 トリプルアクセル
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
今日も元気にログイン!
さて、昨日のスキルチェインとやらについて検証班と調べることになってたな。
草原エリアに向かうとしよう。
「では、スキルチェインについて検証を開始しましょう!」
草原エリアに到着するとやせ形の白衣を着たメガネの男が場を仕切っていた。
特ダネを検証班員を通じて拾ったからか、沼地エリア組に【検証班長】が合流したようだ。
「これはこれは!
【包丁戦士】さん、また検証のネタを出してくれるとは流石ですね」
えっ、俺じゃない俺じゃない!
今回はこいつ、というかスキル関係だとこいつのほうが爆弾持ってるから……厄ネタ的な意味のね。
そういって爆弾魔をちょんちょんと指差す。
その指先を見て納得いった様子の【検証班長】。
「いや~、情報の爆弾魔として【検証班長】さんにどんどん爆撃してきますよ~!
はい、今回もお世話になります……」
借りてきた猫のような態度に急に切り替わったな、おい。
「スキルチェイン……ですよね?
今回は実質的にボマードさんの固有スキルの【名称公開】とレイドボス討伐報酬の【魚尾砲撃】との組み合わせで発動したようですが、使い勝手はどのような感じでしたか?」
心地よい滑り出しで【検証班長】が話題を進めていく。
こいつがいると話の進み具合が2倍くらい早いんだよな、いつも思うけどこいつが居なかったらこの次元はもう2段階くらい停滞していたと言っても過言じゃないくらいだ。
就活で自分を表現するときによく使われるフレーズで【潤滑油】というものがある、自分がいることで機関がよく動くようになるというものの例えで併用するフレーズだが、こいつの場合は【スーパー潤滑油】だな!
「なんですかスーパー潤滑油って……
いや~、実は詳しい威力とか効果って見てないんですよね。
すぐ死に戻りしましたし……
【釣竿剣士】さんが一番詳しいんじゃないですか、あそこのトッププレイヤーだったわけですし」
「……そうですね。
スキルチェインの効果で少なくとも私たち7人で同時に【魚尾砲撃】を使った場合とほとんど同じような威力でした、【名称公開】のデバフも同時に入っていたからでしょうね。
ただ、異なる点としては普通に使う【魚尾砲撃】は爆発そのものでダメージを与えていましたが、ボマードさんのスキルチェイン【魚尾砲撃】は焼夷弾というとわかりやすいですね。」
「焼夷弾ですか……つまり焼くことに重点を置いた攻撃に性質が変化するのですか……
もしかして火傷とかしてませんでしたか?」
「ほうそこに気がつくとは、流石【検証班長】大したものですね。
私がじっくり舐め回すように観察してきましたが、全くその通りです。
被弾したところだけ皮膚が爛れていました、【名称公開】もあの部分に特化したデバフになったようで皮膚が軟化していましたしその影響もあるでしょう。
ただ、他の部分での防御力低下は見られなかったので一長一短です」
この【モップ清掃員】……気持ち悪いくらいよく見てたと思ったらそんなところまで確認してたのね。
まあ、検証班ならそれくらいやるのかもしれない。
【検証班長】を何度か見ているせいで検証の細かさにも慣れてきてしまった……
「それで?
デメリットも増加したというアナウンスが流れたようでしたが、どんなデメリットが増えましたか?」
あっ、それちょっと気になってた。
まあ、今までのスキルのデメリットの酷さからしてそれを掛け合わせたら地獄のようなものだろうけど……
「……いや~、3回くらい連続で死に戻りします……
あと、1日ずっと火傷状態になってました腕とか凄いことになってたんですからね!?
あと、火傷状態は定期的にダメージが入るみたいなのでそれで1日に5回くらい死に戻りしました……」
「えっ、なにそれ面白そう!
やって見せてよ、プレイヤーキラーとしてそんな愉快な死に方見逃せないんだが!?」
「なんで【包丁戦士】さんはそんなに前のめりなんですか!?
いや~、しばらくぶりにそんなイキイキしている【包丁戦士】さん見た気がしますよ」
そんなことないと思うがな……
ただ、ワクワクしているのも事実だ。
こいつが3連続で死に戻りする姿めっちゃ見たい!
「……【包丁戦士】さんに同調する形で不本意ですが私もそのデメリットを確認しておきたいですね。
検証の材料になりますので」
【検証班長】が俺に続く。
「ふええ!?
【釣竿剣士】さん助けてくださぁい!」
泣きつくように【釣竿剣士】に駆け寄るボマードちゃんだったが……
「私も1度確認しておきたいですね!
そのデメリットが何かしらのレイドボス攻略のヒントになるかもしれません」
その言葉にずっこけるボマードちゃん、お笑い芸人かな?
それにしても流石北のトッププレイヤー、俺もジェーに対してはそんな感じの熱意を持っていたから気持ちはよくわかる。
「そんな!?
いや~、【釣竿剣士】さんの鬼畜!」
「当然ですよ、生産プレイヤーなら」
いや、生産プレイヤーは鬼畜ではない。
前々から思っていたがこいつは生産プレイヤーを何だと思っているのだろう、じっくり聞いてみたい気もするがちょっと深淵を覗くようで怖いな。
「ボマード、逝きまぁす!
スキル発動【名称公開】っ、からのスキル発動【魚尾砲撃】です!」
ボマードちゃんに赤光が蓄積され爆発する。
【スキルチェイン【名称公開】【魚尾砲撃】】
【追加効果が付与されました】
【デメリットが増加しました】
そうしてアナウンスが流れたあと、ボマードちゃんが死に戻りした。
さて、ここからが本題だ。
「戻ってきました!」
ボマードちゃんが全く同じ地点に戻ってきた。
「ぶふぉっ!?」
ボマードちゃんの体が急に爆発して宙に舞い上がり、バラバラになった挙げ句空中分解されている。
おっ、これは【風船飛行士】も絶賛するいい飛びっぷりだ!
見ていて気持ちいい、ん、なんかこっちに飛んできたな、おっと。
空中からボマードちゃんの破片が飛んできたのでそれを首を少し動かしかわす。
ボマード破片が地面に突き刺さるとその部分は光に変わっていった。
「復活!
ぐによぉっ!」
ボマードちゃんが再度復活し瞬時に爆発する。
今度は宙に舞い上がらず真横に吹き飛んだ。
あっ、片手剣使いの【モブ】に物凄い勢いでぶつかってる。
ボマードちゃんもろとも吹き飛んだ片手剣使いの【モブ】は全身にボマードちゃんの肉片を浴びながら死に戻りした、完全にとばっちりだな!
「もういやっ!
ですぅぅぅぅぁぅぅぁぁぁぅぁ!?」
3度死に戻りしたタンクトップロリ。
瞬時に文字通り粉骨砕身したボマードちゃんの肉片が飛び散る様子を見ながら俺は【釣竿剣士】とお茶を飲んでいた。
沼地エリアで取れたいい茶葉だ、透き通るような香りが飛び散るボマードちゃんの風情をよくかきたててくれているな!
「ふう……ようやく収まりました……
いや~、もうあんまり使いたくないですね……
検証の度に使っていたら間違いなく本番まで精神が持つ自信がないです……」
完全に意気消沈しているボマードちゃん。
火傷が腕に出来ているが、火傷跡というよりは蛇のタトゥーみたいな感じだな。
見やすい位置に出てくるのはプレイヤーへの配慮だろうか、いや、配慮するならデメリット軽減してくれよ。
「中々いい死に戻りっぷりだったぞ!
見ていて爽快だった、お茶も菓子もお前の爆発する様子で美味しく食べれた気がするぞ」
「いや~、私は見せ物じゃないんですからね!
も~!!」
怒りつつもハムスターのようにお菓子を頬張るボマードちゃんがそこにはいた、こういうところは可愛いなこいつ。
お菓子を食べながら火傷のダメージで死に戻りする爆弾魔の少女が居たとか居なかったとか……
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