468話 考察会議は踊る!~タンクトップ変貌編~
【検証班長】をなんとか引き留めることに成功した俺は既に息絶え絶えだが、ここで引き下がるとなんとなく負けた気がするので、【修練防具上位解放】についての【検証班長】の考察、検証が終わるまでは粘ってやるぞ!
「【包丁戦士】さんの謎の熱意に免じて続けますけど、頼むので極力会話を遮らないでくださいね?」
「いや~、善処しますよ~!」
まあ、俺も心がけておくか。
なんとしてでもボマードちゃんの暴走を事前に止めないとな……
「それではこれから実験といきましょう。
ボマードさん、さっそくスキルを使ってみてください!」
「スキル!?
【ペグ忍者】も離れて見てるのら~!」
なんか脈絡もなく猫耳頭巾淫乱ピンク髪ペド忍者が天井から現れたが、特に何をするでもなく遠巻きに見ているのでスルーしておこう。
こいつは検証班のスキル部門担当らしいから興味津々なんだろう。
変に話しかけると【検証班長】がまた拗ねる可能性があるから触れないのが一番だ。
そんな【ペグ忍者】に気づいていないのか、ボマードちゃんは身構えてスキルを発動させようとしていた。
使ったことの無いスキルを起動するからなのか、緊張で額から汗が出て地面に落ちていくのを確認できた。
「い、いきますよ~!
これが私が新しく手に入れた、この次元で私だけのスキルです!
いざ御披露目の時!
スキル発動!【名称公開】!
私の戦闘衣装の名前を公開しちゃいます!
【修練防具上位解放】【魚尾包装】ですよ~!」
ボマードちゃんがスキルを発動すると、身に纏っていた黒色のタンクトップが光の粒子へと変換されていき、その光がボマードちゃんの全身に纏わりつくように展開されていく。
ヒダのように広がっていく光の粒子が帯のように形作られていき、あたかもボマードちゃんの身体を包装するかのごとく巻き込んでいった。
そして出来上がったのは、熱帯魚の尻尾のようにユラユラと揺れる漆黒のドレスだ。
小柄なボマードちゃんにも似合う、少し短めの調整がされており、ドレスといっても動きを制限することはなさそうだな。
遠目に見ると分からないが、レース部分が魚の形をしているようで、さらに、それを取り巻く蛇の模様がドレス全体を覆うように象られているのが、かなり凝った衣装だと主張してくる。
これは、フィッシュテールドレスだな。
なるほど、スキル【魚尾砲撃】を俺と同様に正しく扱え、ジェーライトを身に宿しているボマードちゃんが身に纏う衣装としてはこれ以上無いほどマッチしているな!
しかも、アイドルがステージで着てもおかしくない意匠だから、これまでボマードちゃんがこのゲーム内で歩いてきた道のりを辿って形にしたものと言われても信じられる出来栄えだ。
「これは……綺麗ですね!!
いや~、フィッシュテールドレスとは戦闘用ではない気がしますけど……
舞踏用ですか?」
俺からしてみると、どっちかというと武闘用ってところだな。
戦闘用の礼装……みたいなものだろう。
綺麗な見た目こそしているが、力の流れを読み取ることができるようになった俺にはわかる……これは血塗られた運命にある者を屠り自ら追悼するための喪服のようなものだろう。
凄惨な運命に囚われた者を解放するのは……いや、止そう。
「チュートリアル防具からの派生ということは、その性質を受け継いでいるかもしれません。
……具体的に言うのならば、耐久度が無限ということです。
プレイヤーメイドの防具はダメージ軽減という点を見れば、チュートリアル防具のタンクトップよりも優秀でした。
ですが、システム上の問題なのか、どうしてもしばらくすると壊れたりするのが問題でした」
そうだよな……
俺が装備しているボロマントは代えが利くもので、軽装だから選んでいたのだがこれまでの戦闘で消耗をしているため、何度も何度も交換している。
ちなみに、新緑都市アネイブルのほのぼの市場で毎回買い直していたりするぞ!
タンクトップにすればその必要もないんだろうが、タンクトップだと体感だが受けるダメージが多い気がするし、そもそも見た目が露出し過ぎて嫌なんだよなぁ。
「タンクトップいいじゃないですか!
いや~、タンクトップの良さを分からないなんて【包丁戦士】さんもまだまだですね~!」
すぐに調子に乗るボマードちゃんだが、こういうところがもはや可愛いまである。
だが、タンクトップの良さを力説しているボマードちゃんの今の服装は【修練防具上位解放】【魚尾包装】によって、タンクトップからヒラヒラのついたフィッシュテールドレスに変化している。
ボマードちゃんもそれに気がついたのか、照れてハニカミながら誤魔化している。
まぁ、誤魔化されてやるか……
ボマードちゃんがフィッシュテールドレスを着ると、胸元が緩いからなのかロリ巨乳の双丘がバルンバルン揺れてとんでもないことになっている。
【検証班長】も目のやり場に困りつつも、それでも特徴を見逃さないように遠慮がちに観察している。
……【検証班長】、なんかラノベの主人公みたいにラッキースケベ擬きの場面に遭遇してるよな。
運がいいのか不憫なのか、判断に困るが物は言いようだ!
「それで、【修練防具上位解放】【魚尾包装】はどのような特徴があるのでしょうか。
スキルの名前とは別に、防具の名前も個別についているということはオンリーワンの性能を持っていると思いますが……
やはりその裾部分が関係しているのかな?」
【検証班長】が着目したのは、ヒラヒラと揺れ動く魚の尻尾……フィッシュテールドレスの裾部分だ。
「あっ、言われてみるとこれ私の意思で動かせますよ!?
いや~、なんだかこの感覚どこかで覚えがある気がしますね……
どんな場面でしたっけ?」
ボマードちゃんは何かに気づいたようで、それを思い出そうと頭を両手で抑えながら必死に思い出そうとしているが……
「うーん、これは……!?
いや~、わかりませんね~!!!
参りました……」
まあ、頭お花畑なボマードちゃんに期待した俺がバカだったよ。
一瞬でも、何かあるかもしれないと思っただけ体力を無駄に使ってしまって損した気分だ。
見た目はそれなりですが、嫌な雰囲気ですね……
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