460話 生産イベント順位発表 特別賞編
「というわけで生産イベント【【菜刀天子】の品評会】は終了します。
お疲れさまでした……」
……と、いい感じに【菜刀天子】が締めようとしていたが、そんな【菜刀天子】の言葉を遮るように一人の人物の影が現れた。
山伏のような姿とサラリーマンのような姿をまぜこぜにしたカオスな見た目のやつだ。
基本は山伏衣装なんだが、ネクタイをしていたり、キッチリメガネをキメて、髪は七三分の状態でワックスで固めているようだ。
口が動くとそこから声が……するのではなく脳内に直接声が響き渡り始めた。
こいつっ、直接脳内に!?
【どうも、ゲーム運営プロデューサーの山伏権現です。
まずは、ここまでこのゲームを楽しんでいただけたようで、プロデューサーとして感謝を!
これからもこのゲームをよろしくお願いします!】
あっ、前にルル様から聞いたゲーム運営プロデューサーの名前だな。
ゲームに【上位権限】持ちレイドボスを介してテコ入れをしていたようだが、まさか直接介入してくるとは思っていなかったぞ。
いや、今回は【菜刀天子】に介入していると考えればその法則から外れないのか。
「運営の介入がこのタイミングで来るとは思いませんでしたが、イベントは既に終わりました。
次元天子である私になんの用事でしたか?」
【菜刀天子】は綺麗な形でイベントを終了させられなくて若干拗ねているようにも見える。
そのタイミングが前例のないプレイヤーが見ているタイミングというのも良くなかったのだろう。
【【菜刀天子】は意図的にあのアイテムをランキングから外したよね?
あんなにゲームが楽しくなりそうなアイテムをここで出さないなんて、いけない子だね!
……ということで、ゲーム運営プロデューサーの私、山伏権現が特別賞を作りました!拍手!】
わー、パチパチパチ。
俺はゲーム運営プロデューサーというやつに媚びをうった。
他のやつが拍手!とか言ってもそれに乗らなかっただろうが、権力に屈して拍手してしまったのだ。
これがプレイヤーの性だな。
「えっ、もしやアレをここに出すつもりではないですよね?
あれがこの新緑都市アネイブルを侵す毒となるのは明白ですよ。
だからこそ私が厳重に封印したと言うのに……」
【あれは封印するなんてとんでもない!
君にとっては毒かもしれないけど、私からすれば包丁次元を面白くするための魔法のスパイスのようなものさ!
あの子がこんなものに関わるようになるなんて、面白いものだね。
というわけで、【GM権限ー封印解除】!
顕現せよ、山伏権現賞受賞アイテム……【大深罪鉄林包丁】!】
山伏権現がそうアナウンスを流したのと同時に上空から轟音が響き始めた。
その音の発生源を確認するために空を見上げると、そこには猛スピードで落下してくる超巨大包丁の姿があった。
おいおいおい!?
こっちに落ちてきているぞ!?
「これは……避けられませんね」
【なに、落下地点はちゃんと決めてあるから心配無用!
避ける必要すらないよ】
山伏権現の言葉通り、俺たちから少し離れたところに包丁は落下しダイナミックに地面に突き刺さった。
うわっ、間近で見てみてもやっぱりデカイ。
2位を受賞した戦艦と同じサイズと言えば分かりやすいだろう。
こんなもの人間では振るうどころか、持ち上げることすら不可能な代物なのによくもまぁ作ったな……
「これは……【槌鍛治士】の作品……
やはり運営が興味を持ったのはこれでしたか。
実に忌々しいアイテムです……」
【菜刀天子】が嫌そうな顔をしている理由はすぐにわかった。
この包丁からは大罪の力と深淵の力が流動しているのだ。
【槌鍛治士】が前に見せてくれたそれぞれの力が宿った金属を使って作り上げたのだろう。
こんなもの重要拠点付近に突き刺さったとなれば……あっ、【槌鍛治士】!?
もしやここまで読んでたのか!?
【そうそう、やっぱり【包丁戦士】ちゃんは分かってるね!
君の予想通り……いや、予想以上の結果になるだろう。
鉄と孤独を愛する君の相棒に感謝しておくといいよ】
そんな言葉を残しながら山伏権現は姿を消していった。
そして、それと入れ替わりに脳内に無機質な声と感情的な声が響き始めた。
【ワールドアナウンス】
【【失伝秘具】の【大深罪鉄林包丁】による地形効果の改竄が開始されます】
【attack!】
【【『sin』ーーー大罪を司る悪魔】の【上位権限】による介入】
【罪に呑み込まれたり、呑み込まれなかったりする……】
【Block!】
【【菜刀天子】の【上位権限】による抵抗】
【そんな温い介入は許しません。
せめて破損したデータを修復してから出直して来てください】
【私だけだと荷が重かったり、辛かったりする……】
【attack!】
【【エルル】の【上位権限】による介入】
【カッカッカッ、このような趣向はどうかのぅ?
包丁の深淵の力を介して来たわい】
【Block!】
【【菜刀天子】の【上位権限】による抵抗】
【陰湿タコォォォォ!!!!!相性の差で守りきってその無駄に多い足をへし折ってあげますよ!!!!】
【【失伝秘具】の援助があっても、この場所では我の本領は発揮できぬのぅ……深淵種族への拒絶効果が身体に堪えるな】
【attack!】
【【鉄血森林の森人君主】の【上位権限(規制中)】による介入】
【……】
【ここで伏兵っ!!!流石の私も三体相手では手数が足りないですっ!?
こんなはずでは……こんなはずでは……
くっ、次元天子である私を出し抜くとは【鉄血森林の森人君主】!!!あなたも許しませんよ!!!】
【【失伝秘具】の【大深罪鉄林包丁】による地形効果の改竄が成功しました】
【【新緑都市アネイブル】の深淵種族拒絶効果が大幅に低下しました】
【【ユニーククエスト 【上位権限】を持つ者の力を借り、新緑都市アネイブルの地脈を操作せよ】をクリアしました】
【生産アイテムがプレイヤーへ返還されました】
なぜ……どうしてこんなことに!!!!!
運営!!!!!
【Bottom Down-Online Now loading……】