459話 生産イベント順位発表 1位編
「長々とやってきましたがようやく栄えある一位の発表です。
包丁次元における生産プレイヤーのトップが今ここに決まります!
私が選択したアイテムはこれです!」
そう言って【菜刀天子】が宙から取り出したのは、黒ずんだ亀の甲羅で作られたと思われる籠手だった。
籠手には細かい棘がびっしりと生えており、亀の甲羅というよりもハリネズミにすら見えてしまうほどだ。
あれで直接殴られたら普通に痛そうだけど、想定している用途はそれじゃないんだろうな。
名無しのモブプレイヤー:ごついな
名無しのモブプレイヤー:玄人っぽい生産アイテムだな
名無しのモブプレイヤー:これはどっちだ?
名無しのモブプレイヤー:そういえば優勝候補どっちも名前出てなかったな
名無しのモブプレイヤー:えっ、ということはどっちかランクインすらしてないってことじゃん
名無しのモブプレイヤー:戦慄してきた……
名無しのモブプレイヤー:そんなことあり得るのか
「これは【狩人の甲羅籠手】というシンプルなネーミングで提出されたアイテムです。
性能としては……いえ言葉で説明するよりも実際に見てもらいましょうか」
そんな物騒なことをいいながら【菜刀天子】はおもむろに中華包丁を抜刀して、俺に切りかかってきた。
このままやられるのも癪だが、今の俺は【菜刀天子】の【上位権限】によって身体の自由を縛られており肉人形と化しているのでなすすべもなく、中華包丁によって切り裂かれた。
そして、復活!
「ふむ、まだまだのようですね。
この【狩人の甲羅籠手】を見てもらえると分かると思いますが、棘が赤くなりました。
これがゲージのようになっているようです。
このゲージは相手にダメージを与える度にたまっていく……というわけで、劣化天子相手に攻撃を当ててゲージを最大限にしますか」
そして、俺へのリンチがスタートしたのだった。
切り裂かれ……
復活!
切り裂かれ……
復活!
切り裂かれ……
復活!
……
……はい、二十回くらい死んだか?
レイドバトルですらない惨劇が繰り広げられたのにも関わらず、俺の心は思ったよりも落ち着いている。
さっきまでの流れからこうなるのを予想してたから、心の準備が出来ていたのがでかいだろう。
「別に相手を倒す必要はないみたいですが、次元天子である私のスペックですとこの劣化天子は一撃で倒れてしまうだけです。
全く、これだから底辺種族上がりのプレイヤーの貧弱さには呆れてしまいますね」
散々俺を切り刻んでおいて口から出たセリフがそれかよ……
死にまくった俺を労うくらいしてくれてもいいのに……
名無しのモブプレイヤー:ちょっと不憫で草
名無しのモブプレイヤー:真顔の【包丁戦士】ええやん!
【風船飛行士】:身から出た錆だなwwwクソワロタwww
名無しのモブプレイヤー:さて、ゲージが満タンになったな
名無しのモブプレイヤー:どうなる……?
「このゲージがたまることで、資格のある存在が生命花の力を持った配下を呼び出せるようです。
では、さっそく……
我が前に馳せ参じなさい、【ウプシロン=ウーグウイ】!」
【Raid Battle!】
【底無し沼の棘亀(廻)】
【ウプシロン=ウーグウイ】
【湖沼棘亀】【亀獣人】【クランリーダー】
【深淵を押し止めるため】
【冒険者を俯瞰する】
【聖獣であるが故に】
【深淵と敵対する】
【志を同じくする者たちよ】
【集いて立ち上がれ!】
【レイドバトルを開始します】
【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】
は?
おいおい、【ウプシロン=ウーグウイ】は俺たちが倒したはずじゃなかったのか!?
名無しのモブプレイヤー:!?
名無しのモブプレイヤー:!?w
ボマード:うわあああああ!?
【検証班長】:これはまたトンでもないものを……
名無しのモブプレイヤー:レイドバトルを呼び出せるのかよ!?
名無しのモブプレイヤー:うそん
名無しのモブプレイヤー:これ、もしかしてもう一回倒さないといけないパターン?
【ペグ忍者】:悪夢なのら~!!!!????
名無しのモブプレイヤー:俺第三陣プレイヤーだから初めて見たけど、あんなやつ倒してたのかよ
【トンカチ戦士】:!!1!!1!1!111111
名無しのモブプレイヤー:これは一位の風格ですわぁ……
【風船飛行士】:ちょっwwwおまっwww
倒したはずの相手が唐突に復活してきて困惑している俺に【菜刀天子】は言葉をかけてきた。
「これはあくまでも一時的な復活です、安心してください。
この召喚中には先ほどためたゲージを時間経過で消費していくので、最悪召喚された配下は無視でもいいでしょう。
それに、召喚に成功したとしても召喚者に従うかは配下の意思で決まります。
今回は次元天子である私だからこそ【ウプシロン=ウーグウイ】を召喚出来ましたし、従えていますがプレイヤーでこれを使いこなせるかは分かりませんね。
それでもここまでシステムに介入できる生産アイテムを作り上げるとは……
素材は……ウプシロンの甲羅、無限湖沼の主魚の核、運命の釣糸、北の大地の寒憑花……なるほどここまで一級品を集めてきましたか。
それに、加工した者もそれぞれ得意分野を代わる代わる担当して共同製作をしていたという履歴が残っていますね。
その人脈と、これらのレア素材を集めれば出来る生産アイテムも一級品になるのは当然ですね」
召喚した【ウプシロン=ウーグウイ】の背に乗りながらそんな総評をしている【菜刀天子】。
天子王宮の中にいたら間違いなく王宮そのものが崩壊していたと確信できるほどの巨体を持つ【ウプシロン=ウーグウイ】に乗っている姿には偉容を感じる者も多いだろう。
何せ、俺たちがあれだけ長時間粘ってギリギリ倒した相手を尻に敷いているわけだからな……
「製作者は【釣竿剣士】!
底辺種族にしては見事なものを作り上げましたね。
本人は素材集めがメインだとは思いますが、これだけのレアアイテムを集めるのはユニーククエスト進行と同レベルの難易度ですから私も称賛せざるを得ないですね。
というわけで、優勝は【釣竿剣士】です!
【釣竿剣士】には称号【玄冬の生産職人】を付与します。
これで2つの権限を駆使できるようになったようで、なにより」
名無しのモブプレイヤー:イベント限定称号か!
名無しのモブプレイヤー:裏山~
名無しのモブプレイヤー:しかも特殊効果つきとは……
名無しのモブプレイヤー:くっ、俺も欲しかったぜ!
名無しのモブプレイヤー:88888888
名無しのモブプレイヤー:おめでとー
名無しのモブプレイヤー:一位が【釣竿剣士】なのは納得だ!
名無しのモブプレイヤー:ってことは【槌鍛治士】は……?
2つの権限……【トランポリン守兵】お嬢様と類似の【生産職人】称号だから、これは【クラフトマイスター】の権限を使えるようになったと推測できるが【釣竿剣士】はもう1つ何か持っているんだろうか……?
……。
【Bottom Down-Online Now loading……】
みなさんからいただいた意見を参考に、あらすじを変更してみました!
一度見てみてください笑