453話 ミューンの試食会
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は生産イベントのアイテム作りの仕上げをしようと思う。
そのために俺は新緑都市アネイブルの天子王宮にある礼拝所に来ていた。
ここで【酩酊ブドウ】と【激情イチゴ】を漬け込んでいたのだ。
他の場所で漬け込んで置いても良かったのかもしれないが、俺がログアウトしている間に他のプレイヤーたちに台無しにされる恐れがあったから止めておいた。
俺はプレイヤーキラーだからな、俺に恨みを持っているやつが報復に破壊工作をしてくることはかなり可能性として高い。
今までも数々の仕込みを台無しにされてきたことがあるからな。
モブプレイヤーたちではプレイヤーキラーである俺に戦闘で勝てないから、そういう遠回りな嫌がらせをしてくる。
姑息な真似を……と思うが、仕返しとしてはハードルが低いから妥当な判断だろうな。
まあそれをやられたときの俺の内心は、はらわたが煮えくりかえるほどの激情だったな。
ゴミ以下のプレイヤーの命であれば何度失われても問題ないが、時間をかけて仕込んでおいた料理は一度失われてしまえば元には戻らない。
そのことを考えるとモブプレイヤーたちの復讐は手段として有効だったと言うわけだ。
くそがっ、思い出しただけで怒りがわいてきた。
まあ、そんな経緯から他のプレイヤーが容易に侵入できない礼拝所に保管しておいたということだ。
「说来话长、我想简明扼要地说说……
……はなし、ながい」
俺の独白に反応したのは無表情チャイナ服女。
おっ、ミューンか。
ミューンは元レイドボスの兎……いや、白虎か?
ともかく、俺たちに討伐されて力を失ってからはこの礼拝所に引きこもっている。
そして、たまに俺が作った料理を味見してもらったりしているのだ。
「……いまつくってるのは、なに?」
【酩酊ブドウ】と【激情イチゴ】を漬け込んでいるとさっき言ったが、漬け込んでいるのは一種類の方法ではなくそれぞれ別々の容器で何種類にも分けて置いてあったりする。
例えばこの容器だ!
舐めてみるか?
俺がそう提案するとこくりとミューンは首を縦に振って、指を容器に突っ込んだ。
そして、指先についたドロリとしたものをチロチロと舌先で舐めている。
ミューンのような蠱惑的な体型で、その動作をされるともはやサービスシーンとしか言えない時間が流れることになった。
「这个真甜……
……これは、あまい。
おかし?」
いや、お菓子作りに使ったりするがお菓子そのものではない。
これはジャムだ。
パンに塗ってもよし、調味料として使ってもよし、使用用途が多く保存がきいて使いやすい加工方法だな。
先にこれを作っておけば、潰しがききやすい。
「おもったより、考えてる……?
こんかい、ほんき?」
まあ、今回のイベントは本気で勝ちに行っているな。
その場のノリで勝敗が変わってしまうPVPイベントと違って、時間までならどれだけでも仕込みを出来る生産イベントはどれだけ真摯に生産アイテムに向き合えるかがポイントだと俺は思っている。
だからこそ、素材に拘り、時間をかけ、他人である(一心同体ではあるけど)お前に味見をしてもらって慎重にことを運んでいるというわけだ。
決して、参加賞だけもらえればいいという甘い考えでこのイベントに挑んでいるわけではないのだ。
というわけで、俺が仕込みをしているのはジャムだけではない。
次はこの容器だ。
俺がミューンに容器を差し出すと、ミューンはさきほどと同じように容器に指を突っ込んだ。
「……これは、えきたい?
我想要杯子……」
ん?
ああ、コップね?
ミューンは中身が液体だと分かるとコップを要求してきた。
そのまま飲んでも良かったのに律儀なやつだ。
「こ、これは……」
飲んだミューンは驚きで目を見開いている。
そう、ミューンが飲んだのは【激情イチゴ】と【酩酊ブドウ】のカクテル酒だ。
【μμμμμμμμμμμμμっ!!!!】
興奮作用もあるこのカクテル酒を飲んだミューンは感情が抑えきれなくなり、今にも暴れだしそうになっている。
あっ、そういえばミューンは酒に極度に弱かったな!?
ヤベッ、これは逃げたほうが……
【μμμμμμμμμっ【兎月伝心】っ!!!!!】
ミューンは激情に囚われたまま、スキルを起動して光の粒子を鉤爪の先端から発射した。
その粒子が俺を取り囲むようにして移動してきて、数秒の猶予も与えられないまま俺の身体は千切りにされて死に戻りすることとなった……
どうしてこうなった!
これは完全にとばっちりですね……
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