44話 ぬっと現れるあの人
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
今日も元気にログイン!
小言を言う【菜刀天子】をスルーして新緑都市アネイブル散策だ!
出る前に礼拝室で寝ている紫チャイナ娘に声をかけてから外出。
王宮を出たところで背後から何やら気配がした。
「おはようございます、元気そうですね?」
ぬっと現れたのは【釣竿剣士】だった。
いつも唐突に現れるなこいつ……
というか俺王宮から出てきたのに何で後ろから声かけられるんだ!?
「当然ですよ、生産プレイヤーなら」
いや、そんな生産プレイヤーは当然ではない……
で?俺に何のようだ?
「……あなた私との約束完全に忘れてませんか?
レイドボス討伐が終わってから数日経ってもコンタクトがないので確認しにきたのですけど」
あっ……いや、大丈夫忘れてない!
いや、忘れてないからそんな目で見ないで!!
全力で【釣竿剣士】から目をそらしながら冷や汗を流して言い訳を探している。
そ、そう!あの後公式イベントの次元戦争ってやつに巻き込まれてだな……
他の次元のプレイヤーと戦ってたんだよ~いや~大変だったな~
「そんな嘘臭い話で誤魔化さないでくれませんか?
公式サイトにもそんな告知ないですよ」
いや、本当に本当だって!
確かに公式サイトに告知が無かったのは俺も確認したけど、サポートAIが直々に俺に教えてくれたんだって!
それに、嘘だと思うなら【槌鍛治士】に聞いてみてくれよ。
あいつもその次元戦争に参加してたし俺の潔白を証明してくれるハズだ。
「そんなに言うなら確認してみますけど……
【渡月伝心】!」
【釣竿剣士】はレイドボス討伐の報酬で手に入れたメッセージを送れるほうの【渡月伝心】を使い、【槌鍛治士】に確認しているようだ。
円環の方を使ってきたら色々な意味でおったまげたところだが、あっちのバージョンを使ったプレイヤーは紫チャイナ娘しか知らないし何かしらの条件があるのだろう……多分。
【釣竿剣士】はスキルのデメリットとして体が硬直しているらしいので、こいつから逃げようと思えば逃げれるがこの状況が悪化するだけだと思ったので素直にじっと待っている。
辛抱の時だ。
「……信じがたかったですが、確かに次元戦争というイベントに2人とも参加されていたようですね。
これは失礼しました、その状況ならたしかに私に接触するのは難しそうですね。
色々と情報の整理とかで時間もとられますし」
いい方向に解釈してくれたな、タスカルタスカル!
わりと自由にブラブラしていただけ、かつ、こいつとの約束を忘れかけていたのは俺の名誉のためにも黙っていよう……
それで?今から早速沼地エリアに行くか?
今すぐにでも行けるぞ?
「そうですね……行きましょうか!」
とりあえず俺たちは沼地エリアに移動することになった……徒歩で。
【Raid Battle!】
【底無し沼の棘亀】
【レイドバトルを開始します】
エリアに入った時点でレイドバトルが始まる特殊な仕様の沼地エリアに到着した。
ジェーを倒すために【釣竿剣士】の力を借りる条件としてここのレイドボス討伐を手伝うことになっていたのだ、半分忘れかけてた……
で?何か倒す算段とかついてるのか?
正直ここのレイドボスについて俺はほとんど知らないので、北のトッププレイヤーである【釣竿剣士】に確認する。
ここには【釣竿剣士】の他にも検証班の【モブ】が5人ほどいるが、トッププレイヤーに直接聞いたほうが早いだろうと思ってそうした。
「おさらいも兼ねて幾つか説明しましょうか。
まずは、ここのレイドボスの特徴としてとても巨大で、基本は沼の底に眠っているということですね。
なので待っているだけでは戦うことすらできません、そのためにこれを使います!」
【釣竿剣士】は誇らしげに手に持っている釣竿を見せてきた。
こいつのチュートリアル武器は釣竿だったらしい。
チュートリアル武器特有の耐久値が無限という特性を活かせば、レイドボスを地上に引っ張り上げる大がかりな器具をわざわざ作ることなく、何度でも使えるというわけだ。
ただ、器具が何度でも使えるとしてもあの巨体の亀を釣り上げることができるプレイヤーがいるとすればだが。
……なお、この【釣竿剣士】は釣竿一刀流という訳のわからないリアルスキルをこのゲームに持ち込んでいるので、1人でも釣り上げることができるというトンデモなプレイヤーの模様。
「当然ですよ、生産プレイヤーなら」
そんな生産プレイヤーはお前だけだ。
「そして、釣り上げた後ですが……現状攻略の手立てがないです。
こちらの攻撃が全くと言っていいほどダメージソースになっていないので、今までのままでは倒せないでしょうね?
ただ、今回手に入れた新しいスキルや深度の上昇、称号の獲得のようにこれまでとは前提条件が違ってきています。
なので、来てもらった検証班の方々も含めて一度再検証してみましょう」
「了解です!」
「頑張りましょう!」
「身を粉にして検証します!」
「テンション上がってきますね」
「ほう沼地エリアレイドボス検証ですか、大したものですね」
5人の検証班の士気も高いようだ。
なんか5人目のやつボマードちゃんのライブでも見た気がするが、あれも検証班が手伝っていたので、検証班としてこっちに来ていてもおかしくはないがあいつファン側の方にいなかったか……?
細かいことは後だ、さあレイドバトル頑張るか!
【釣竿剣士】が釣り上げるまで暇なのを忘れてた……あのテンションを返して……
釣り上げるまで暇なので適当に雑談している検証班と包丁使いが居たとか居なかったとか……
【Bottom Down-Online Now loading……】