439話 凱旋
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
俺がログインするとすぐに目の前で【菜刀天子】が腕を組んで待ち構えていた。
うわっ、軽くホラーだろこれ……
急に目の前に他人の顔が現れて驚かないやつっていないだろうし、なんてことしてくれたんだ……
「いつも私を驚かせる劣化天子への仕返しです。
この程度では返しきれたとは思えませんが、気分は清々しましたね」
なんという悪趣味な仕返しなんだ……
仕返しにしては地味なやり方ではあるが、心臓にダイレクトに与える衝撃は死に戻りさせられるより大きい気がする。
だって死に戻りはいつもしてるからな!
「それは劣化天子が一向に私を敬う気配が無いからです。
まさか死に戻りさせるよりもこちらの方が効果的とは思っていなかったですが……
全く、これだから劣化天子は……」
いや、これは劣化天子関係ないだろ……
そう思いながらも、口にせず言葉を続けようとする【菜刀天子】に発言権を譲った。
「それは置いておくとして、今回もなんとか勝利に漕ぎ着けましたね。
【パイルバンカー次元】のMVPプレイヤー【ギアフリィ】を途中から味方に引き込んだのが決め手ですが、私の思惑通りになって安心しました。
もし【ギアフリィ】を優先的に倒していたらと考えると頭が痛いですが、それは実現しなかったことですからホッとできますね。
わざわざ3つの次元での次元戦争にした理由は上位次元を蹴落とさせるためでしたから」
……あ、そういえば次元戦争前にそんなようなこと言っていたな……
戦っている最中に完全に忘れ去っていたぞ。
目の前の相手を倒すことに必死になっていたからな。
そういうこともあるだろう。
「いや、要の作戦だったのですから覚えておいてほしかったものですが……
まったく、これだから劣化天子は……
せっかく上位3位まで上り詰めたというのにこの威厳のなさには呆れるしかないです。
そんな様子では1位の次元を打破出来ませんよ」
1位の次元ねぇ……?
前に少し話は出た気がするが、そんなに凄いやつらがいるのか?
「現時点では間違いなく最強の次元ですね。
MVPプレイヤーが次元天子になっているといえば、今の劣化天子が手をこまねいているのと対比して強さが分かるでしょう。
しかも、その次元は聖獣レイドボスを一体討伐した後にすぐ次元天子と対決し勝利したと聞きました。
悔しいですが、控えめにいってもこの包丁次元とは格差を感じます」
つまり、俺たちの次元で言い表すと【ジェーライト=ミューン】を討伐してすぐに【菜刀天子】を倒したってことだろ?
いや、無理だって!
俺たちの手札がまだ1つしかない状況でスペックに歴然の差がある【上位権限】持ちレイドボスを倒すなんて……
俺だって今も手も足も出てないし……
「それは次元天子側からしても似たようなものですが。
大元が【底辺種族】であるプレイヤーたちに次元天子の配下である聖獣レイドボスたちを倒してもらわなければ、次元天子のスキルも増えませんからね。
その分特殊防御権限が重なったままなので、ダメージはほとんど通らないはずですが……
その状況でどうやって次元天子とプレイヤーが戦い、次元天子が破れることになったのかは気になりますが、今気にしてもしょうがないでしょう」
断片的な情報しかないからなぁ……
とてつもなく強力な敵がいるということは分かったが、それ以上の収穫はない。
【菜刀天子】はいつも不安を煽るようなことを言ってくるが、それは【菜刀天子】本人も心の中で不安になっているということだろう。
その不安を抑えきれないからこそ、こうして俺に語りかけている……のかもしれないな。
少なくとも俺が真っ正面で戦って勝てる相手じゃない次元だから、今のうちに小細工をいくつか用意しておくか。
そう、俺は生産プレイヤーだからな。
勝つのに手札が足りなければ作り出すのみだ!
「最近生産プレイヤーの活動をあまり見ていない気がしますが……
今さらアピールしてきて何のつもりですか?」
俺が生産プレイヤーなの忘れられてそうだからアピールしようかと思ってな。
気を抜くといつも戦闘ばかりしてしまっているから、ワンパターンの行動になりがちだ。
「いや、気を抜くと戦闘を開始する時点で上位権限AIとしては、生産プレイヤーとは認めたくないですね……
ただの蛮族、狂人、戦闘狂でしょうそれは。
まったく、これだから劣化天子は思考回路がおかしいんですよ」
失礼なやつだな……
俺の思考回路はそんなに狂ってないはずだが……
(そんなことは)ないです。
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