436話 キャノン砲撃
「オラオラオラオラァ!
聖女であるアタイの拳を存分に味わえ!!」
【綺羅星天奈】はチュートリアル武器の十字架ではなく、大罪の力が込められた包帯を巻いた拳で殴りかかってきた。
単調な攻撃ではなく、左右へのフットワークを有効活用して攻撃する場所やタイミング、角度などを細かく調整してきていて厄介ではある。
……普段ならな!
そう、今の俺は全能感溢れ出るルル様の力を纏ったレイドボスだ。
拳による攻撃を見切るのは至難の技だが、それをあえて無視してスペックによるごり押しでこっちも攻撃を仕掛けていく。
スキル発動!【魚尾砲撃】!
俺はルル様の漆黒の羽の一部をジェーライトの頭に変化させて極太レーザーを放った。
前まではジェーライトの尻尾を生やしていないと発動できないと思っていたが、そもそもジェーライトの力は元々ルル様のものだったから、ルル様の力を弄れば、ほれご覧の通り!
いつも通りの極太レーザーを放てるってわけだ。
まあ、本当のレイドボスではない俺には手に余る方法だからか、威力自体はかなり劣化してしまうみたいだな。
それを差し引いても深淵種族配下の力を満遍なく行使できるルル様フォームは使い勝手が良い。
流石ルル様だ!
そんな極太レーザーだが、女子高生聖女の【綺羅星天奈】は背中に背負い直していた十字架を盾にして防いできた。
この反応力……天性のものだな?
「ハンッ!
聖女であるアタイにそんなちゃちな攻撃は通用しないなァ!
攻撃を通したいのならもっとドデカイの持って来やがれ!」
俺の極太レーザーは十字架に止められており、その十字架を押しながら俺に接近してきている。
……極太レーザーを押し返しながら迫れるようなパワーがあるとは思っていなかったが、何かカラクリでもあるのか?
何はともあれ、このままだとあいつの拳を喰らうことになってしまうが、それは出来れば避けたい。
あの重圧に耐えられる力を持ったやつの拳なんて喰らいたくないからな!
というわけで【ギアフリィ】任せた!
「投げやりすぎじゃん!
実力派のオレが味方にいるからって、頼りたくなる気持ちは痛いほどわかるぜ!
しゃーなし一丁やってやるぜ!
スキル発動!【神鳥機砲】!!」
【ギアフリィ】は鳥の頭の形をしたヘルムについているくちばしにエネルギーを溜めている。
パイルバンカー次元のスキルは本発動までのラグがあるから少し待つ必要がある。
その間にも俺は【魚尾砲撃】による極太レーザーを放ち続け、迫り来る【綺羅星天奈】の進撃スピードを遅めているがそろそろ目の前に来そうだぞ!
はやくしろ!
「いちいち注文が多いやつだぜ!
待たせたな、実力派のオレによる必殺技!
【神鳥機砲】発射だ!」
レイドボスがスキルを使ったとき特有のカットインで、【ギアフリィ】の顔が視界に流れてきた。
そして、それと同時に鳥のヘルムから金属の塊が放たれた。
その金属は宙を勢いよく飛んでいっているが、通りすぎた場所には溶解した金属が垂れ落ちていくようだ。
垂れ落ちていくのを気にしていないかのように金属の塊は十字架の裏に隠れている【綺羅星天奈】に向かっていく。
「アァン!?
そんな溶けかけのガラクタなんざ聖女であるアタイがぶっ潰してやらァ!
大罪スキル発動!【虚飾栄光】!」
【神鳥機砲】を迎撃するために【綺羅星天奈】は大罪スキルをさらに重ねてきた。
スキルを発動すると【綺羅星天奈】の拳に巻かれていた包帯が爛々と輝き始めた。
「小細工なんざ不要!
聖女であるアタイの魂の一撃を喰らいなァ!!
歯ァくいしばれ!」
その爛々と輝く拳で【神鳥機砲】を打ち返した。
いやいや、ちょっと待てレイドボス級の必殺技をこぶしで!?
流石に規格外過ぎないか!?
「グワァアワアワォァァ!?
じ、実力派のオレの技を跳ね返してくるとはやるじゃん!
それくらいはやってくれないと張り合いがないし、ハンデみたいなもんだぜ!」
攻撃を拳で跳ね返されて明らかに大ダメージを食らっているのにも関わらず強がりを口にする【ギアフリィ】。
打ち返した……じゃなくて跳ね返した……ね?
どうやらスキルで攻撃した側だからこそ見えたものがあったのだろう。
俺の【魚尾砲撃】は相変わらず十字架で防がれているから分からないが、【ギアフリィ】の口振りからしてさっき【綺羅星天奈】が使ったスキルは攻撃をそのまま跳ね返すカウンタースキルなのだろう。
格好や口調、動作が攻撃的になったように見えたが、思ったよりも冷静に受け身の姿勢で対応してくるようだ。
一応聖女としての慎ましさの欠片だろうか……
それならこれはどうだ!
スキル発動!【阻鴉邪眼】!
俺は深淵種族のアルベーの邪眼スキルを起動して、瞳に黒いオーラと翼を宿していく。
本来ならば右半身が行動不能になるデメリットがあるはずだが、ルル様の力を纏った俺はそのデメリットを無視していく。
俺の邪眼は敵である【綺羅星天奈】を写し、そこに黒い霧で形成されたデバフサークルを発生させた。
「これはデバフスキルかっ!?
十字架次元では見たことがない嫌らしいスキルだなァ!?
舐めたことしてくれんじゃねぇか!
アァン!?」
「【包丁戦士】、そんな補助も出来たのかよ!
意外だけど、やるじゃん!」
フフフ、普段あまり使わないから今まで忘れてただけというのは秘密にしておこう……
肝心なところが抜けてますね……
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