431話 感動の再会
「ククク……【祓聖纏漆黒闇領域】の詠唱が完了した今!
我輩も攻撃に参加できるということだ。
狂巫女よ、我輩と共に征こうぞ!」
それは願ってもない話だ。
【短弓射手】がやられてしまったからこそ、【黒杖魔導師】が攻撃に参加できればでかい。
聖域が失われたから魔法攻撃にこだわる必要は無くなったが、それでも手数が増えるというのは選択肢の広がりに繋がるからな。
これまで参加していなかった分、馬車馬のように働いてもらうぞ!
「ククク……それならばまずは幻界拘束を解除せねばな。
我輩の真なる力を今ここに!
スキル発動!【現界突破】!
ククク……フハハハハハハ!!!」
【黒杖魔導師】はability【現界超技術】による威力低減デメリットを解除し、高笑いを始めながら魔力の塊のようなものをチュートリアル武器の黒杖から連続で放ち始めた。
魔力の塊は黒ずんだ紫色の光を帯ながら女子高生聖女の【綺羅星天奈】へと向かっていく。
「そんな禍々しいもの、聖女様に近づけさせるわけにはいかない!
打ち落としてやる!」
その間に割って入ったのはコンパウンドボウ使いの【ポロロッカ】だ。
MVPプレイヤーであり、戦術の基軸になる【綺羅星天奈】を守るために、矢をつがえて魔弾に向けて矢を放った。
だが……
「なにっ!?
弾かれただとっ!?」
「ククク……そのような脆弱な攻撃で我輩の漆黒闇を止められると思っていたのか……
虚飾聖女もろとも地に伏すがいい!!」
「グワァァァァ!!」
【ポロロッカ】は矢が真正面から弾かれて動揺して回避ができず、そのまま魔弾が直撃したようだ。
しかも、魔弾は連続して放たれているため、立て直しが出来ていない【ポロロッカ】はなすすべもなく魔弾の雨に曝されることとなった。
「ポ、【ポロロッカ】さん!?」
「ククク……、そやつはもはやこれまでだろう」
「そんなことありません!
【ポロロッカ】さんはいつでも逆境を乗り越えてきました!
こんなところで負けたりしません!」
どうやら【綺羅星天奈】と【ポロロッカ】はこれまでも行動を共にしてきた仲のようだ。
それに対して、こっちは……
「ククク……精神論ではどうにもならないということもあるのだ。
我輩、そういうのにすがるのは正直どうかと思うぞ」
仲間の絆を正論(?)で論破していく変なやつだ。
いや、プレイヤーキラーの俺も賛同はするが。
「ククク……狂巫女よ、それは自分で変なやつと言っているのと同じことだぞ。
だが、世界摂理を覆すための同胞としては快い潔さだ」
うっ、墓穴を掘ってしまった。
というか世界摂理なんてものを覆す予定ないから、同胞扱いにしないでくれよ。
「ククク……そろそろとどめをさしてやろうか。
実は我輩、もう1つ詠唱を終えている魔法があってな。
それを使ってやろう。
禁忌に触れし、臨界点を突破せよ!
禁忌漆黒闇極大魔法!【ハリクロス】!」
【ハリクロス】だって!?
これは前に【釣竿剣士】が話していたこいつら異世界人の世界にあるという大魔法の名だ。
詳細は聞いていないが、高層ビルを難なく倒壊させるほどの大規模なものらしいが。
呪文発動を告げると、黒杖から黒ずんだ紫色の輪が1つ、また1つと何重にも発生していく。
輪が形成されるたびに重低音がフィールドに鳴り響き、俺たちは身動きが取れなくなった。
そして、輪が【ポロロッカ】に纏わりつき、膨張しながらエネルギーで内部を圧迫していっている。
そのまま圧迫したエネルギーによって【ポロロッカ】の身体は弾け飛び光の粒子に変わって消え去った。
「ククク……愚者にはお似合いの結末よ。
ククク……ハハハハっ!?
なんだとっ!?」
後方にいた【黒杖魔導師】は【ハリクロス】を発動させ【ポロロッカ】を葬り去ったのを見届けて高笑いをしていたが、急にその高笑いが止まり驚愕と苦悶の声が響き渡った。
いったい何事かと思い【黒杖魔導師】の胸から槍のようなものが突き出ていた。
背後から突き刺されたようだが、その槍のようなものは物々しく嘶きながら振動し、【黒杖魔導師】の身体全体に衝撃を与えて光の粒子へと変えていった。
「む、無念……
狂巫女よ、あとは、たの、んだ、ぞ……」
そして、光の粒子が消え去ったところには1つの人影があった。
あいつが下手人で間違いないだろう。
現れた人影は、全身が銀色の鎧(?)に包まれ、頭にゴーグルをつけた大学生くらいの見た目の男だ。
赤髪で派手な見た目だが、その自信を持ったしゃべり方とマッチしていて違和感はない。
それくらいならファンタジーもののVRゲームならばそこら辺にいるような見た目だが、ある一点で目を引くような大きな特徴がある。
右腕に背丈の二倍ほどあるような大きな装置を装着している。
削岩機のような、杭のような見た目の鋭利なものが先端についているから武器だと推測されるが……
まてよ、そんな特徴がある武器に心当たりがある。
この次元戦争の参加次元の中にヒントはあった。
そうか、あれはパイルバンカーだ!
ってことはあそこにいるのは……
「そう、実力派のオレだ!
また会ったな【包丁戦士】ィ!」
パイルバンカー次元のMVPプレイヤー、【ギアフリィ】がこの混沌とした戦場に現れたのだった。
感動の再会ですね(?)
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