428話 消耗戦
包丁次元のアーチャー【短弓射手】と十字架次元のアーチャーであるコンパウンドボウ使いの【ポロロッカ】のスキルを乗せた矢同士が衝突し、戦場に強い衝撃が走る。
【ポロロッカ】の矢を取り囲んでいた岩が砕け散り、【短弓射手】の放った矢の光が弱まっていく様子を見るとかなり拮抗しているのだろう。
その衝突だが、最終的には岩に囲まれた矢が砕け散り、光に包まれた矢がそのまま大剣使いの【フェーン】へと飛んでいき腕に突き刺さった。
おおっ!?
女子高生シスターの【綺羅星天奈】の発動していたスキル【天元聖域】を突破したのか!?
今までまともに物理攻撃が効かなかったのに腕に矢が刺さるとは。
「なるほどねぇ……
デバフと物理防御はたしかに上がっているみたいだけど、どうやら魔法攻撃には耐性がないみたいだねぇ!
オジサンが昔ハマっていた古きよきゲームでは、魔法戦士っていう枠組みのキャラクターがいたけど、そのキャラクターの活躍どころは相手の物理耐性と魔法耐性どっちも対応できることだったからねぇ!
それをふと思い出しただけさ」
「そんな方法で聖女様の守りをものともしないなんてズルいんだなぁ!?」
なるほど、スキル【シューティングスター】は矢を物理攻撃判定じゃなくて魔法攻撃判定に変更するスキルなのか。
だから普通にダメージが通ったというわけだ。
【短弓射手】のやつ、そこまで考えて【シューティングスター】を発動させたんだな。
あいつは、多属性同時攻撃とか魔法攻撃変換とか自己犠牲スキルとかで包丁次元の中でもオリジナリティの高い戦い方をしているから、こうやって一緒に戦っているだけでも見応えがある。
荒野エリアをメインの活動場所にしているからなのか、【短弓射手】自身の行動に起因するものなのかは気になるな。
「くっ、聖女である私の、聖域の抜け穴をさっそく突いてきましたね……
神の祝福を受けた私の美しき守りをこうと容易く」
この【綺羅星天奈】という聖女、かなりナルシストだな?
発言を何度か聞いていると自分のことを美しいと何度か言っている。
こいつは多分、鏡を見て自分の姿で悦に入っているタイプの人間だ。
こういった手合いは、性格的に明確な弱点があったりするが今はそれをまだ突ける段階じゃないから待つしかないが聞いてるとなんとなくもやもやする。
「お嬢ちゃんに似てるところがあるからじゃないかねぇ……」
俺とこの女子高生聖女の【綺羅星天奈】が?
どこがだよ?
「いや、ナルシストなところだねぇ……
お嬢ちゃんも自分で可憐な乙女って自称しているのを聞くたびにそう思ってたんだけど、違ったカナ?」
いや、そんなことないだろ……
俺のは半分自虐も入ってるところがあるからな。
見た目は可憐な乙女だが、中身はプレイヤーキラーだからな。
外見と一致していないのはたまに弄られる要素だから、自分でネタにしているだけだ。
「聖女である私が美しいのは当然ですし、誤りでもないです。
ただ事実を述べているだけですので」
そんな弁明をする【綺羅星天奈】だが、それをナルシストと言うんだよなぁ……
「どっちもどっちだねぇ……
二人とも見た目に自信を持っていることには変わりがないのに気づいてないだけカナ?
オジサン、そこまで気にしてないからこの話題止めたいんだけどねぇ!」
そう言いながら、スキル【シューティングスター】を連発して大剣使いの【フェーン】を追い詰めていっている。
【シューティングスター】はクールタイムが短いスキルのようだが、クールタイムが短く使い勝手のいいなんてそんな都合がいいスキルがこのゲームに存在するのだろうか。
……いや、同じくカタカナスキルの【フィレオ】もクールタイムが短いがデメリットとして己の身体の一部を犠牲に放っているくらいだ。
何かしらの代償を支払いながら【シューティングスター】を放っているに違いない。
だが、それを表に出さずに淡々と相手を追い詰める様子はまさに熟練の狩人といったところか。
流石だな。
「ん?
オジサンに何か言ったかねぇ……?」
相手に代償のことを知られないようにするためかおどけてとぼけている【短弓射手】。
そういう作戦なら俺も便乗しておくか。
「このままやられるわけにはいかないんだなぁ!
もう一回発動!【巌亀開花】!」
弓矢での猛攻を晒されている中、再度、岩を発生させる【生命花】スキル【巌亀開花】を使ってきた大剣使いの【フェーン】。
大剣何度も振るい、発生した岩が再度俺を狙ってくるが、さっきとは違って俺が距離を取っているからか礫に分裂させて飛ばしてきている。
当たるとダメージがでかそうだが、俺は包丁の腹を利用した受け流しによって1つ1つ丁寧に軌道をずらしていく。
この受け流しはジェーライトと戦っていたときにも常に使用していた俺の防御の要だ。
レイドボス相手に磨いた技量は、プレイヤーの遠距離攻撃ならばそれなりに通用する。
実際、【短弓射手】がメインとなって攻撃してくれているから俺は防御に専念出来ている。
岩と共に【ポロロッカ】が放った矢も飛んできているが、お前たちみたいに聖女の加護なんて無くても対処できるってわけだ、そう俺はプレイヤーキラーだからな!
「ああ、なんと野蛮なのでしょう……
やはり聖女である私が救済しなければ!」
プレイヤーキラーってここで自慢するところですか……?
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