427話 ながれぼし
「聖女である私の聖域の加護を受けた同胞たち、神の名のもとに救済を!」
「【短弓射手】は俺に任せてください、聖女様。
必ずやこのコンパウンドボウで仕留めてみせよう!」
「【包丁戦士】はオイラに任せるんだなぁ!
大剣の錆にしてやるんだなぁ!」
……と、相手は一対一をご所望だがどうする?
俺としてはそれに付き合う義理もないが。
このパーティーバランスとれてるし、せっかくだから連携して撃破していかない?
「オジサンもそう思うねぇ……
この一対一は疲れるからねぇ、お嬢ちゃんのサポートをしたほうが楽で助かるよ」
「ククク……漆黒闇の力は近接攻撃に弱い……
狂巫女と先導者の力は借りたい」
そうと決まれば狙い打ちだな。
俺は一対一に応じる振りをして大剣使いの【フェーン】に向かって駆け出した。
手に持った包丁で切り裂くために距離を詰めようとするが、大剣によるリーチを意地でも保ってきているので有効打が与えられない。
仮に包丁がかすっても女子高生シスター【綺羅星天奈】のスキル【天元聖域】の効果で物理ダメージを大幅に減少されてしまうから、雀の涙ほどのダメージになってしまう。
次元戦争に出てきているだけあって、MVPプレイヤーではなくともかなりの実力者のようだ。
他の次元ならMVPプレイヤーになれたかもしれないんじゃないか?
「例えそうでも、オイラは聖女様のために戦うと決めたんだなぁ!
スキル発動!【巌亀開花】!」
【フェーン】がスキルを発動すると、大剣が触れた地面から岩が突き出てきた。
しかも、一回ではなく地面に大剣がぶつかるたびに何度も先端が突起状になった岩が飛び出てくるのだ。
つまり、実質、剣の軌道が変則的になって俺を襲いかかってきているのと同義ってことだ!
厄介すぎる……
スキルの名前は【巌亀開花】だったか?
花が名前に入っていることから生命花の力を宿したスキルなんだろう。
だが、そもそも【伝播】の力とか【生命花】の力とかいう言葉は何度か色んなやつから聞いたが、スキルの名前から系統が分かるだけで実際にそれらがどんな力なのか今まで説明されたことは無いんだよなぁ……
そんな大剣と岩による変則攻撃を回避していると、コンパウンドボウ使いの【ポロロッカ】が隙を見て俺を狙撃してきたようで、矢が迫ってきている。
このままだと俺に直撃するのは間違いないから普段ならガードすべきか、切り落とすか悩むところだが……
今回の俺の味方は誠意を見せているうちは最高の味方になってくれる凄腕アーチャーだ。
それを信じて俺は飛んでくる矢を無視して【フェーン】に包丁を振りかざしていく。
「お前、死ぬ気か!?」
「チッチッチッ、オジサンが味方のお嬢ちゃんを見殺しにするわけないよねぇ!
それそれそれ!」
俺に飛んできていた矢を【短弓射手】は射撃で見事に撃ち落とし、さらにはお返しにそのまま矢で【フェーン】を牽制し始めた。
これが連携プレイってやつだな!
今までの次元戦争では包丁次元のプレイヤーで、俺の動きについてこれるやつで連携してくれる意思のあるやつが【釣竿剣士】しかいなかったから、ほぼ別行動で各個撃破していたが遠距離攻撃武器使いの【短弓射手】であれば遠目で冷静にサポートしやすいのだろう。
あのオジサンの実力は身をもって知っているからこそ、背中を預けて安心して戦えるぞ!
「可愛いお嬢ちゃんにそう言ってもらえるとこんな枯れたオジサンは舞い上がっちゃうねぇ……
それならもっと良いところ見せてあげようかねぇ!
スキル発動!【シューティングスター】!」
【短弓射手】は今まで俺にも使ってきたことがなかった新たなスキルを起動したようだ。
しかも、またしてもカタカナスキルだ!
どれだけカタカナスキルを隠し持ってるんだろうか……
機会があればカタカナスキルについて聞いてみたいところだが……
【短弓射手】の腕に光が白い光が灯り、そのまま矢をつがえた。
そして、腕の光が矢へと伝播していき放たれた!
「狙いはオイラなんだなぁ!?
これは流石に不味そうな予感がするんだなぁ……」
大剣使いの【フェーン】は俺への攻撃を中断して【短弓射手】の放ったスキル【シューティングスター】に身構えている。
【シューティングスター】は、その名の通り流星のごとき輝きで煌めきながら【フェーン】へと向かっていっているからな。
「矢には俺が対抗してみせる!
聖女様、援護をお願いします!」
「聖女である私が【ポロロッカ】、あなたに加護を与えます!
神の祝福を受けた美しき私による救済です!
スキル発動!【神月信心】!」
【スキルミックス!】
【【天元顕現権限】【神月信心】】
【混合発動【神月聖域】】
【修練武器に概念混合されます】
【デメリットとして魔力が減少しました】
「聖女様の御力、光栄の極み!
これで200%の力が出せるってもんよ!
スキル発動!【巌亀開花】!」
コンパウンドボウ使いの【ポロロッカ】が放った矢は宙に舞うと同時に岩によってコーティングされていき、【シューティングスター】の光の大きさに迫る大きさへと膨張していっている。
さらに、女子高生シスターの【綺羅星天奈】による謎のスキルによる支援で【シューティングスター】ほどではないが、緑色の光を帯ながら加速していっている。
さあっ、どうなるっ!?
MVPプレイヤーにしては動きが地味ですね……?
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