421話 おねろり(ろりではない)
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は荒野エリアを見て回るぞ!
えっ、【荒野の自由】が勘づくんじゃないかって?
それは銀髪褐色ロリの【大罪魔】に罪の気配を隠蔽してもらったのでなんとかなる……だろう。
そんなことをできると聞いたときには驚いたが、これで大手を振って隠しエリアである荒野エリアを散策できるというものだ。
というわけでやってきた荒野エリア!
ここではテイマープレイヤーたちが馬に跨がり闊歩する変わったエリアだが、他に何か見るものはあるだろうか。
そう悩んでいると、俺の前に一人の女が現れた。
深紅のチャイナドレスを来た茶髪の女だ。
気が強そうな顔つきをしていて、しなやかな四肢がすらりと伸びている。
俺と違って、背が高いのが羨ましい。
こいつは……【虫眼鏡踊子】!
【風船飛行士】の彼女だな。
「あら、こんなところで会うなんて珍しいわね?
荒野エリアには何をしに来たのかしら」
普通に向こうから声をかけてきたな。
【風船飛行士】関係だから、向こうがスルーしてきたらこっちも触れない予定だったが、あちらはそんなことはお構い無しのようだ。
用事といった用事はない。
ただの観光ってところかな?
俺は正直にそう伝える。
この【虫眼鏡踊子】の様子を見るに、【風船飛行士】のように俺に敵対心を持っているわけでもなさそうだし話くらいは付き合ってやろうと思っての返答だ。
「荒野エリアで観光なんて変わってるわね。
残念だけど、あなたみたいな可愛らしい女の子の求める観光スポットはそんなに無いわよ。
オシャレなお洋服とかアクセサリーの店もあるにはあるけど、数は男向けに比べるとごくわずかしかないわ。
ここは男のロマンっていうのがある場所みたいだから、店も男向けばかりなのよね~あ~やだやだ」
【虫眼鏡踊子】は肩を竦めながら、うんざりしているように呟いた。
この【虫眼鏡踊子】は、レイドバトル中もそうだったが俺を完全に年下女子みたいな扱いで接してきているな。
別に俺としては不都合はないんだが、奇妙な感覚だ。
「とりあえず、荒野バーでも行く?
実績照会にも名前が出てきてた施設なんだけど、ここなら行く価値はあるかもね」
ほーん、それじゃ連れてってくれよ。
俺は場所わからないし。
「しょうがないわね。
手間がかかる妹の面倒を見ている気分だけど、悪くはないわ!
頼られるのは好きだからね」
そんな姉御気質をアピールしながら俺たちはのほほんと荒野に広がる町並みを歩いていく。
馬が隣を通るときは若干びびるが、そのうち慣れることを祈るしかない……
「ここが荒野バーよ。
あっちのカウンターで飲み物が注文できるし、まずはいきましょうか!」
【虫眼鏡踊子】に連れられて荒野バーに入ったが、なんか中にいた客の目線が一気に俺の方を向いた気がする。
やっぱり俺が可憐な乙女だからだな!
「狂人っ!?
どうしてこんなところに」
「くそっ、隠しエリアなら【包丁戦士】が来ないと思って亡命してきたのに……」
「あんまりだ……」
「でも手配書があるってことは……」
「ああ、間違いないだろう」
「それなら安心か?」
「いや、狂人を常識に当てはめるのは不味い気がする」
まあ、違うよな。
話のなかに気になるワードがあったりはしたが、プレイヤーキラーとしての俺を警戒しているってことはわかった。
「あら、結構あなた有名人なのね。
こんな可愛い顔して意外ね」
そういうお前も可愛い顔して有名人だろ?
クラン【紅蓮砂漠隊】の姉御って掲示板だとよく話題に上がってくるからな。
レイドボス【エヌレッド=シャーク】の討伐の要になったって噂もきくし。
「そんなに話が広がってたかしら?
たしかに【エヌレッド=シャーク】を倒すのに協力はしたけど、一番頑張ってたのはリーダーの【トンカチ戦士】よ。
私がこのゲームに復帰した時にはほとんど情報を集め終わっていたからビックリしたわ!」
ほーん、今度会ってみたいところだ。
ボマードちゃんファンというわりには顔を見ないし。
「タイミングに嫌われているからしかたないわね」
俺たちがそんなことを話しているとカウンターに飲み物が出てきた。
俺が頼んだのは【大暑サボテンのタピオカジュース】だ。
大暑サボテンといえば、俺が朱雀レイドボスである【クシーリア】を倒すための炎対策としての素材に使った植物だが、あれを飲み物として取り扱っているのを見つけて気になって注文したのだ。
グラスを傾け、液体を唇を通して喉に運び込む。
青っぽい苦めの味わいに、甘いタピオカジュースのマリアージュがいいな。
料理系生産プレイヤーとしてもこのジュースは気に入ったぞ。
そんな俺の横で【虫眼鏡踊子】が飲んでいるのは【酩酊ブドウの特製ワイン】だ。
「うーん、ゲームの中とはいえ昼間からお酒を飲めるのは最高ね!
クセになっちゃいそう!」
そう言いながら妖艶な雰囲気でグラスを傾ける様子は映画のワンシーンのようだ。
スラッとした体型とバーの雰囲気がマッチしていて羨ましいぞ!
劣化天子……また懲りずに荒野エリアにいっているのですね。
どうなっても知りませんよ。
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