420話 鉄の血罪
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は新緑都市アネイブルの深淵種族に対する拒絶反応を解除していくぞ。
というわけで【大罪魔】を草原エリアに連れてきた。
いきなり新緑都市アネイブルに連れて入ると【上位権限】的な意味で【菜刀天子】と干渉し始めそうだから、その外であるこのエリアから作業をしていこうというわけだ。
そうなると周りのプレイヤーに【大罪魔】の姿が晒されてしまうのだが、【大罪魔】は気にしていない。
本来遭遇したプレイヤーにレイドアナウンスが流れていっていると思うのだが、それに気づいていないかのようだ。
「レイドアナウンスが意図的に流れなかったりするようにしたの。
次元渡航で破損したデータが多かったから、それを逆手に【上位権限】で悪用して隠蔽出来たりする……」
今回はそれでラッキーだった。
見知らぬレイドボスが現れたとなれば、プレイヤーたちがよってかかってこの銀髪褐色ロリ【大罪魔】を討伐しようとするに違いない。
どうせ、破損データが多いってことはレイドボスとしての戦闘スペックもかなり低下しているはずだ。
下手すると簡単に倒されてしまうんじゃないのか?
……段々とそう思えてきた。
「合っていたり、合ってなかったりする……
戦闘スペックは他の【上位権限】持ちレイドボスよりもかなり弱くなってるの。
でも、簡単には負けなかったりする!!」
珍しく語気強めに負けないということをアピールしてきたが、この様子だと半分強がりだろう。
その辺のモブプレイヤーたちにはただの銀髪褐色ロリプレイヤーだと勝手に誤解させておくと都合が良さそうだ。
……まあ、銀髪褐色ロリプレイヤーでも物珍しいから草原エリアと新緑都市アネイブルを行き来するプレイヤーたちの視線がこいつに集まっているのが露骨に伝わってくる。
まあ、仕方がない。
そりゃこの見た目なら俺でも凝視するだろうからな。
とりあえず雑な口封じのために、たまに通りかかるプレイヤーを無差別に包丁で切り裂いておく。
「うぐっ、【包丁戦士】にやられたっ!?」
「今日はこんなところで狂人が張っていたのかよ……
運無さすぎて泣きそう……」
「やれやれ、また移動し直しかよ」
……よしっ、とりあえずこの銀髪褐色ロリに興味が集まる前に俺のプレイヤーキルに注目して死んでもらえたな。
適度にこの作業をやっていくとするか。
それで、新緑都市アネイブルの地脈への干渉はできそうか?
「できたり、出来なかったりする……
データの破損した私だと何日間かかかりそうなの。
予想以上に次元天子は深淵種族に対しての拒絶反応を設定していたりする……
他の次元でもここまではやってなかった。
だから思っていた以上に難しい事業になりそうなの」
そこまで深淵種族を毛嫌いしていたのか【菜刀天子】は……
それほど深淵種族に対して警戒を強める何かがあったはずだが、これはあれか?
何度かルル様と【菜刀天子】が口にしていた聖獣深淵対戦というものがそれに当たりそうだが……
肝心のそれがどういうものだったのか経緯や内容まで分からないから、どのように争っていたのかは両陣営からたまに漏れてくる情報を纏めるしかないし、現時点では本当にこの聖獣深淵種対戦が影響しているのかすら確定できない。
「私もここで野ざらしでいたりすると、不味かったりする……
次元天子との相性は深淵種族ほどじゃないけど良くないの。
身を隠しながら作業したり、しなかったりする隠れ家がないとゲリラのようにここに来ないといけなかったりする……」
それは面倒だな……
とりあえず、【槌鍛治士】のところに連れていくか。
あそこならギリギリ新緑都市アネイブルへの距離的に作業はできるはずだ。
というわけで急遽やって来ることになりました草原エリアにある【槌鍛治士】の鍛治場。
熱気溢れるその鍛治場、その奥でムキムキの暑苦しいおっさんが鉄を叩いていたので声をかける。
よお、【槌鍛治士】。
なんか最近面白いものとか作ってるか?
「おお、【包丁戦士】じゃないか!!!
ガハハ!!!
最近は邪神像の外付けギミックを作ってみたりしているぞ!!!
本来のレイドボスには無かった攻撃方法とかを増やせないか試しているのだ!!!」
えっなにそれ、そんな面白そうなことをやってたのかよ!
水臭いな~教えてくれたら良かったのに。
「ある程度形にしてから見せてやろうと思っていたのだ!!!
だが、せっかく来てくれたのだから土産話くらいしてやるかと教えたのだ!!!」
そうか、お前なりの気遣いだったというわけだな。
今は深く聞かないでおいてやろう。
それで、こいつを見てほしいんだがどうだ?
ちょっもわけありのやつでな?
ここにしばらく置いてほしい。
そう言って俺は背後に隠れていた銀髪褐色ロリを【槌鍛治士】に対面させる。
おずおずと出てきた【大罪魔】は、ガチムチおっさんを見て少し驚いたようでたじろいでいる。
「……えっ?」
「ん?
なんだ!!!???」
「【暴食】は知っててここに案内したり、しなかったりした?」
ん?
なんのことだ?
俺はとぼけながらそう伝える。
「いや、知らなかったのならいいの」
俺はおかしな様子の銀髪褐色ロリの様子に首をかしげながらも、【槌鍛治士】に俺の問いに対する返答を待つ。
【槌鍛治士】は腕を組んで鍛治場の暑さからか頭から汗を流しながら考えているが、ひとしきり考え終わったのか組んでいた腕をほどいて俺に向き直り口を開いた。
「……ワシの鍛治場で雑用をやるという条件ならば置いてやってもいいだろう!!!
働かざる者食うべからずという言葉を他のプレイヤーから聞いたことがあるが、その通りだからな!!!」
「私が雑用……?
正気なの?」
「正気だとも!!!
ここに居るのなら、それくらいはやってもらわないとな!!!
ワシからお前に対する譲歩だと思っておいてくれ!!!」
「譲歩したり、しなかったりする……
でも、【暴食】に恩を返すため……我慢してやることにする……」
「ガハハ!!!
お前も【包丁戦士】に助けられた口か!!!
ワシと同じ境遇なのは親近感があるぞ!!!」
「同じなのは興味があったり、無かったりする」
うんうん、最悪の事態にならずに済んで良かった。
仲もそんなに悪く無さそうだし、これからよろしく頼むぞ!
「ガハハ!!!
預かってもいいが、お前もここに顔を出す頻度を上げておけよ!!!
ワシが寂しい!!!」
お前は正直者だな!
そこが気に入ってたりするんだけど!
予想外だったり、想定外だったりする……
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