411話 ジャッジメントですよ
【Raid Battle!】
【荒野の自由】
【????】
【機戒天使】【上位権限】【保安官】
【螺旋のように回る歯車は輪廻の象徴】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【罪を裁き悪を挫く】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【罪を迎え撃つ雌伏する弾丸は】
【増長する悪意を討ち滅ぼす】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
俺が荒野エリアにある保安施設に足を踏み入れると、レイドクエストのアナウンスが流れると共に身体に重圧がかかり始めた。
このエリアに来たときも若干身体が重くなっていたが、まだ軽く流せるくらいの程度だったが今は立っているのが精一杯なくらい身体が重い。
どうして急にこんなことになってしまったんだ?
「やっぱりそうなるよねぇ……
オジサンが危惧していた通りだ」
俺の付添人である【短弓射手】が呆れたような表情で肩を竦めている。
……こいつは何やら事情を知ってそうだな。
なんで俺はこんなに動けない状態になってるんだ、答えろ!
「それは上官さんに聞いた方がいいと思うねぇ……
さあ、念願の【荒野の自由】……オジサンの上官のお出ましだ!」
【短弓射手】が道を開けると、その後ろから金属が擦れるような音をさせながら力の塊のような気配が漂いはじめた。
「HEY!
そこのガール、そうそうユーのことさ!」
若干陽気な雰囲気の挨拶をかましてきたのは、茶色のカウボーイハットを被り赤いスカーフを首に巻き、茶色のジャケットに、ダメージジーンズを履いた男……男(?)だった。
性別が疑問系なのは、このカウボーイが機械の体だからだ。
スカーフによって隠された部分の奥を見てみると、鋼鉄の顔があるからな。
だからこそ、機械に性別を求めていいのか悩んだわけだ。
喋り方が男っぽいから一応男として扱っておくが。
そんないかにもカウボーイという服装をしたやつがなんか俺を指差しているが、どうしたんだろうか。
「ユーからギルティな臭いがプンプン漂ってくるぞ!
この保安施設の中で動けないのが何よりの証拠さ。
さあ、ユーは今までどんなギルティなことをしてきたのか【看て】みようじゃないか!
これも試練さ、【ジャッジメントアイ】!」
こいつっ、レイドボスの癖してカタカナスキルを使ってきたぞ!?
今までレイドボスが使ってきたスキルは漢字表記のものでしか無かったのに……
そんな俺の動揺を他所に目の前にいるカウボーイ……【荒野の自由】は俺をスキルで見定めている。
アルベーの邪眼スキルとは違ってデバフをかけられているわけでは無さそうだが、俺は一体何を見られているのだろうか。
「ミーはユーにジャッジメントを下さないといけないみたいだね……
やっぱりユーはギルティだったようだ、しかも特大の。
罪状は合意なきプレイヤーキル、対象は131581人……うっかりやってしまったというにはメニー過ぎる」
はえー、俺がキルしたプレイヤーの数が分かるのか。
合意なき……ってことは闘技場イベントとか俺がレイドボスになって初心者を蹂躙した初心者イベントのプレイヤーキルの数は除外されているだろう。
あれは双方ある種の合意があったからな。
なにせ、初心者イベントなんて俺の身体が無休で襲い来るプレイヤーを撃退してだけだからな。
いや、解釈によっては含まれているのか?
あんまりその辺は自信がない……
「それに……ユーはそれとは格の異なるビッグギルティの烙印を捺されているようだ!
なんとも……なんとも嘆かわしい!!」
ビッグギルティ?
……大罪か。
俺に烙印されている大罪とは【暴食】のことだろう。
【荒野の自由】の様子を見ると、13万人越えのプレイヤーキルよりも圧倒的に【暴食】の方が重きを置かれているようだ。
ただの罪じゃなくて大罪と呼ばれるものだしな……
「まずユーに問いたいのは、そのビッグギルティをユーに与えた存在は今何処にいるのか……だ」
俺に【暴食】を与えた存在……?
そんなやつ居たか?
だって【菜刀天子】もルル様も全く触れてこなかったし、どっちも違うとすれば俺に心当たりが無さすぎる。
そんな力を与えられる存在といえば思いつくのは【上位権限】持ちだが、俺が知っているやつは【荒野の自由】を含めて三体だけだし……
いや、もう一体レイドクエストの名前だけ知ってるやつがいたな。
【鉄血森林の森人君主】のことか?
ルル様が何度かもう一体の【上位権限】持ちの名前を挙げていたときにその名前があった気がする。
「そんな腑抜けの話はしていない、あれは【上位権限】の責務を放棄しているだけだ!
……どうやらユーは本当に知らないようだ」
ありゃ、違ったか。
ということは、俺の知らない【上位権限】持ちが暗躍しているということになるが……会ってみないことには何とも言えないな。
「ミーがユーに聞きたかったことはこれだけさ。
さあ、後はユーにジャッジメントを下すだけ。
その身体に正義の鉄槌を!
【ジャッジメントバレット】!」
その直後、何をされたのか理解が及ばないまま死に戻りすることとなった……
えっ、俺何かされたのか!?
【荒野の自由】が動いたのすら認識出来なかったぞ……
裁かれたり、裁かれなかったりする……
【Bottom Down-Online Now loading……】