409話 借りの揺すり逢い
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は草原エリアに行くぞ!
というわけでやって来ました草原エリア。
俺は今ここでプレイヤーキラーとしてその辺のモブプレイヤーたちを虐殺している。
ふははは!!
どうしたどうした!!
脇ががら空きだぞ!
「くっ、隙が無さすぎる……」
斧がチュートリアル武器と思われる大柄の男プレイヤーが斧を振り上げた瞬間に、俺は急接近して浮わついた腕の下……つまり脇腹を包丁で切り裂いて光の粒子へと変えていく。
これで五人目!
やっぱりプレイヤーキルは最高だな~!
どんどん向かってくるプレイヤーたちを俺は切り捨てていくが、今回のプレイヤーキルは俺にしては珍しく本目的じゃない。
さあ、早く来るんだ!
……これで30人目!
孫の手を装備した女プレイヤーの喉元を切り裂いた時、背後から矢が飛んできている気配を感じすぐさまサイドステップで回避していく。
それを読んでいたと思われる襲撃者は俺が避けた方向へと既に矢を放ってきている。
ちっ、この乱射……まるでガトリング砲かよ!
悪態をつきたくなるくらいの速射で俺を追い詰めていく弓矢による奇襲だったが、この奇襲は想定通り。
いや、むしろ待っていたぞ!【短弓射手】ぅぅぅぅ!
そんな俺の叫び声を聞いた下手人……不機嫌そうな表情ボロボロマントを羽織ったオジサン【短弓射手】は怪訝そうな顔をしながら茂みの中から姿を表した。
「あらあら、オジサン待ちだったんだねぇ?
それなら普通に【渡月伝心】で呼んでくれたら良かったのにねぇ……」
さも常識のように語り始めた【短弓射手】だが、その常識は俺に当てはまらない。
お前、フレンドリストに俺が載ってるとでも思ったか?
「ありゃ……そういえば登録してなかったか……
それなら今から登録を……」
出来ないんだよなぁ……
俺の天敵であり、プレイヤーキラーキラーである【短弓射手】に情報漏洩するのはあれだが、俺はability【会者定離】のデメリットでプレイヤーのフレンドを増やすことが出来ない。
だからさっきオジサンが言った【渡月伝心】によるメッセージ送信は俺とお前では使えないというわけだ。
覚えておくといいぞ。
「それは難儀なabilityが定着してるねぇ……?
そんな状況になったら、オジサンだったらキャラクリエイトからやり直してたかもしれないねぇ。
オジサン、こう見えて寂しやがりだからネ」
そんな柄にもないことを言われても胡散臭いだけだが……
まあ、俺の事情は一度置いておく。
お前をこうやっておびき寄せたのには目的がある。
俺を【荒野の自由】に会わせろ!
今まで避けてきたが、ユニーククエストの進行に必要になってきた。
俺では場所がわからないから、やむを得ずお前を探していたというわけだ。
「なるほどねぇ……
だけど、お嬢ちゃんと【荒野の自由】は致命的に相性が悪いと思うが……
会わせて大丈夫かねぇ……?
オジサン、今から心配になってきたんだけど……」
……そんなに合わなさそうに見えるか?
「見えるもなにもねぇ……
いや、お嬢ちゃんは会ったことがないから分からないか……
参ったねぇ……」
【短弓射手】は頭を手でわしゃわしゃしながら悩んでいるようだ。
だが、俺にはここで使える手札がある。
この前のレイドボス攻略戦に俺のクランに混ぜてやっただろ?
その借りをここで返してもらおうか!
忘れたとは言わせないぞ?
俺がそのことを指摘すると苦虫を噛みつぶしたような表情を顔に浮かべながら口を開いてきた。
「オジサンから頼み込んだ以上、その借りを押し出されると弱いねぇ……
ただ、会わせてもいいけど色々と自己責任でという条件でなら……どうかねぇ?」
乗った!
それで手を打ってやろう。
どうしても【上位権限】持ちである【荒野の自由】の力は借りたい。
それほど俺は切羽詰まってるからな。
辛うじてお前みたいなつてで【荒野の自由】の居場所は分かるが、もう一体の【上位権限】持ちレイドボスの居場所……どころか一切の消息が不明だからな。
この機会を逃すと、もはや振り出し以上の状況に陥ることになる。
その条件でも充分過ぎるくらいだ。
こうして、俺は【短弓射手】と共に【荒野の自由】が居るという荒野エリアに向かうこととなったのだった。
自分から茨の道を行くというのですね。
その先は劣化天子にとって地獄ですよ。
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