407話 協力と対価
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はボマードちゃんとほのぼの市場デート!
「って嘘じゃないですかっ!?
いや~、【包丁戦士】さんがデートとか言うはずがないと思ってましたけどっ!?
罠だと分かっていてもついてきてしまう【包丁戦士】さんの誘惑……そういうのもいいですね~!」
タンクトップロリ巨乳のボマードちゃんを連れてきたのはほのぼの市場ではない。
そして、当然だがデートでもない。
ここまでの話の流れからしてボマードちゃんをわざわざ呼んだのにだらだら時間を浪費させるわけないだろ。
もちろん、深淵結界絡みだ。
「あ~、最近何回かワールドアナウンスで流れてきていたユニーククエストのやつですか!
いや~、やっぱり【包丁戦士】さんが攻略している最中だったんですね。
他のプレイヤーで深淵種族関係のクエスト進めている人なんて見たことないですけど……」
言われてみるとそうだよな。
他の次元なら望遠鏡次元がアルベーの眼のスキルを手に入れていたから、全く手がかりがないわけじゃないんだろうが、それ以外では見てないな……
俺が関与してない深淵関係のものって今まで存在してなかったなぁ……
「その深淵のスペシャリストの【包丁戦士】さんがなんで私を呼んだんですか?
いや~、【包丁戦士】さんよりも深淵種族のスキルを私が扱えるとは思えないんですけど……」
スペック的に考えるならそうだろうな。
俺の方が圧倒的に深度も高いし、深淵細胞も多く持っている。
だが、俺になくてボマードちゃんにあるものが存在する。
「そんなものありますか?
いや~、思いつかないですね~」
やっぱり頭お花畑だなこの爆弾魔は……
ジェー……【ジェーライト】の意識だ。
これまで俺が【深淵顕現権限】をしてその深淵細胞に付随する深淵スキルを使ってみたが、そもそも結界の張り方が分からなかった。
だが、ポリンお嬢様の身体に眠る【アルベー】の意識を引き出してみたら結界を張ってもらえたのだ。
あと、デカブツムカデの場合は身体だけ提供したら核が結界を張ってくれた。
つまり、スキルを使ってきたレイドボスの意識を持っているやつがそのレイドボスに協力してもらえば結界を張れるということだ。
さあ、ここに生け贄になってくれる酔狂なボマードちゃんファンを連れてきたからこいつを生け贄に捧げてジェーライトを呼び起こすんだ。
「ぶひぃぃぃぃ!!
ボボボっボマードちゃんの生け贄になれるとは光栄の極みっ!」
ほら、このドルヲタもそう言ってるし遠慮はいらん。
「そこまで【包丁戦士】さんが言うのならやりますよ!
いや~、ファンのあなたもどうもです!
スキル発動!【深淵顕現権限】!」
ボマードちゃんはファンの手を両手で包み込んで口を開く。
両手から発生した黒い霧がボマードちゃんファンを包み込み光の粒子へ変換していく。
代わりにボマードちゃんの臀部から黒光りするウナギの頭のような尻尾がドロドロの粘液を滴しながら生えてきた。
これが俺たちを一番苦しめてきたレイドボスの片割れである【荒れ狂う魚尾砲】の【ジェーライト】の身体の一部だ。
「ヨォ俺様の半身!
イャ~、これまたけったいな用事で俺様を呼んでくれたもんだナァ?
スキルで結界を張るなんざ侵略を司る俺様のガラじゃないんだがナァ!」
ボマードちゃんは普段の何も考えてなさそうな無邪気な表情から一転して、邪悪な笑みを浮かべながら俺に声をかけてきた。
こいつが元レイドボスの【ジェーライト】の意識だ。
ボマードちゃんの身体を使って辛うじて動けているが、ロリ巨乳ボディでその喋り方だとギャップが激しすぎて何かに目覚める男も続出しそうだ。
お前は深淵種族の中でも貴重な攻めに重点を置くやつだからな。
他のやつはデバフ、防壁、状態異常付与なのに対して極太レーザーと爆発が主戦力だしお前が結界を張れるのか疑問にすら思っていたが……
「アァン?
それは俺様を見くびりすぎってもんだゼェ。
イャ~、好みじゃないがやってやってもいいゾォ?
ただし、条件があるがナァ!」
条件?
一体なんだろうか……
ろくでもないことだったら面倒だな……
「ナァニ、結界を張った後に教えてやるヨォ!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
このスキルはこうやって使うって見ておけヨォ?」
ボマードちゃん(ジェーライト)はドロドロの粘液を滴す尻尾から極太レーザーを放ち王宮の外周の一辺を直進させている。
だが、これでは結界を張るために四方を覆い尽くすことなんて無理なんじゃないか?
そう思っていたが、ボマードちゃん(ジェーライト)は腕をせわしなく動かし始めた。
すると、その腕の動きに連動して極太レーザーが90度曲がり別の一辺を進み始めている。
さらにそれを連続させていき四方が極太レーザーの線で囲い込まれた。
極太レーザー……【魚尾砲撃】はこんな芸当できるのか!
直線だけじゃなくて自由に曲げられるんだな。
レイドボスになっていなくても出来るんだな。
「俺様を誰だと思っているんダァ?
【侵略】を司っているのは伊達じゃないってことを覚えておけヨォ!
そこらの底辺種族上がりとは経験値が違う、それにスキルとの適合率も違うからナァ!」
スキルの適合率……ふーん……?
【検証班長】に話すネタとして持ち帰っておくか。
そんなふと出たワードに思いを馳せていると、脳内に無機質なアナウンスが鳴り響き始めた。
【ワールドアナウンス】
【【ユニーククエスト【荒れ狂う魚尾砲】のスキルで結界を王宮に張り巡らせよ】clear!】
【新緑都市天子王宮の深度が深まりました】
【新緑都市天子王宮での【菜刀天子】は包丁次元のプレイヤー相手時に継続延焼ダメージを受けるようになりました】
へー、延焼ダメージか……
今までの行動範囲限定、デバフと比べると同じ深淵結界と言っても攻めの効果になっているのは結界を張った【ジェーライト】の性格が反映されているのかもしれない。
「結界は張ってやったゾォ!
代わりに俺様の条件を呑んでもらおうかナァ?
【下克上の陰陽妖狐】を【菜刀天子】討伐戦に参加させロォ!
これが俺様からの条件ダァ!」
うわっ、これまた面倒な案件だな……
あのロリ狐陰陽師とまた関わらないといけないってことか……
連日、こうも不愉快な結界を張られるのは気に入りませんね……
【Bottom Down-Online Now loading……】