404話 核核しかじか
【Raid Battle!】
【深淵域の管理者】
【エルル】
【???】【上位権限】【ボーダー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【深淵へ誘い】
【冒険者を堕とす】
【深き真価を見極め】
【境界に流転する】
【封印された夢想が解き放たれし時】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は先日拾った漆黒のダイヤモンドをルル様に見てもらおうと思っている。
だからボトムダウンーオンラインーアビスの方でログインしたというわけだ。
深淵の力によって生み出されたものだから【菜刀天子】に聞くより情報量が多そうと思ってルル様を優先したというわけだ。
「ふむ、懸命な判断であるな。
我は深淵域の管理者である故に、あの憎き次元天子よりも深淵についての理解が深いのは当然の理だ。
お前はよく分かっておるのぅ!」
ルル様は【菜刀天子】と比較して優れている……と誉めるとかなり喜んでくれるから、その方法で最近はおだてるようにしている。
実際、俺的には【菜刀天子】よりもルル様に情報をもらったり、身体を弄ってパワーアップさせてもらったりと世話になっているからな。
贔屓目に見ているところは多々ある。
「では我の配下である【蕭条たる百足壁】が生成したという鉱石を見せてみよ」
ルル様に促された俺はポケットから漆黒のダイヤモンドを取り出してルル様へと渡す。
ルル様の触手が一瞬手に触れてひやっとしたが、漆黒のダイヤモンドを取るとすぐに引いていった。
……あのときの触手による蹂躙を思い出してしまって少し恥ずかしい。
そんなことを考えているとルル様が目を見開いて驚いている……ように見えた。
ルル様の表情なんて分かりにくいから合っているかは分からないが、まあ、多分驚いているのだろう。
「これは【蕭条たる百足壁】の核の欠片ではないか!
あやつ、失伝秘具【天地照堕盾】の件といい露骨に【包丁戦士】を優遇しておるな……
結果的に、我としては手間が省けて良かったが迂闊すぎではないかのぅ……
今度会ったときに問い詰めねばならぬな」
【蕭条たる百足壁】……御愁傷様!
俺がチクったばっかりにボスに怒られるはめになるとはな。
あいつは俺の犠牲となったのだ。
カワイソウニ……(棒読み)
それで、【蕭条たる百足壁】の核の欠片が手に入ったのはいいがこれで何が出来るんだ?
所詮欠片だろ?
てっきり【失伝秘具】とかだと思って回収してきたんだが、あてが外れてちょっとがっかりしてるんだが……
「まあ慌てるではない。
これがあれば深淵結界を張るのに役立つのだ。
これが仮初めの魂になるとして、あとは依り代さえ用意出来れば良いのだがのぅ……」
この漆黒のダイヤモンドが魂と同等の扱いなのか!?
そんなに貴重なものをあのデカブツムカデはほいほいと落として来たのかよ……
もっと大事にしろよ……
「軽率に死に戻りしているお前が言えたことではないがのぅ……
それに、この欠片に宿る魂の格だけでも底辺種族上がりのお前よりも圧倒的に上回っておるのだぞ。
レイドボスの魂の質を嘗めてはならないということは覚えておくと良いであろう」
まあ、薄々そんな気はしてたけど……
だって、この欠片から深度100程度に相当する俺よりも強い深淵の力を感じるからな……
迂闊にアルベーの眼でじっくり観察しようとしたら、風見鶏状態だったキリゲーを視たときのように死に戻りさせられてしまうだろう。
……というか、もしかしてあの風見鶏もキリゲーの核だったりしたのか。
「その通りだな。
深淵種族は核が補強されて身体が形成されていくのだ。
逆に言ってしまうのであれば、身体は代わりが利くということにもなるが……
今回の場合は【蕭条たる百足壁】に見合う依り代を見繕う必要があるのぅ……
お前の身体を使ってもいいが、これは深淵細胞よりもプレイヤーに毒になる代物でもある。
故に、あのabilityを持つお前であっても取り込ませるには気が引けるのだ」
ルル様は俺を心配してくれているが、実のところは俺個人への心配というよりも労力をかけて育成してきた同胞を安易に失ってしまう可能性を避けたということだろう。
ルル様は俺に親切にしてくれるがそれはWin-Winの関係だからこそだ。
そこを取り違えるとルル様は俺に牙を剥くことになる……と思う。
それは弁えておかないとな。
それで話は戻るが依り代だな。
それってプレイヤーとかじゃないとダメなのか?
最悪その辺のモブプレイヤーを捕まえてこの漆黒のダイヤモンドを身体に埋め込んできてやってもいいんだが。
「軽く一般的プレイヤーの倫理観を無視してくるのぅ……
流石は最上級深淵適正プレイヤーなだけはある。
だが、そのアイディアは却下せざるを得ない。
お前が依り代となれば形は保てるだろうが、他のプレイヤーでは原型すら残らぬだろうしのぅ……
そのプレイヤーがロストするのは大した問題ではないが、それと同時に【蕭条たる百足壁】の核も消失する可能性が高い。
故にプレイヤーへ埋め込むのはやめた方がいいのぅ」
プレイヤーをロスト……つまりアカウントを消し去ることが出来るのか……
ちっ、量産できたならプレイヤーキルしたときに都度埋め込むとか出来たものを……残念!
それなら依り代はどうするって話だ。
プレイヤーがダメなら……他のレイドボスに埋め込むとか?
「それならば間違いなく原型は保てるであろうが、主な意識が【蕭条たる百足壁】になるのか埋め込まれた側になるのか不確実であるから止めるべきだな。
分かりやすい例で言うのなら、お前が戦ったという我の配下の【ジェーライト】と憎き次元天子の配下である戦闘狂【ミューン】が混ざりあった【ジェーライト=ミューン】である。
話を聞くところによると、どちらの意識も無い状態に近かったようだ。
それは深淵結界を張る上で邪魔な要素でしかないのだ」
うーん、それなら……
……なんか他にあるか?
「お前は自分がこの核を手に入れるためにやっていたことを忘れておるのかのぅ?」
漆黒のダイヤモンドを手に入れるためにやったこと?
いや、これはあくまでも副産物で、本来の……目……的……はっ!?
そうか、ルル様が言いたかったのはそう言うことか!
ようやく気づいたのか。
手が焼ける同胞だのぅ……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】