403話 漆黒のダイヤモンド(挿絵あり)
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はボマードちゃんと【蕭条たる百足壁】のところへ向かう予定だ。
というわけでやって来ました山間部エリア……の近くにある崖っぷち。
ここから、恒例のダイブだ!
「恒例にしたくないんですけど、なんで恒例になっちゃったんですか……
いや~、ここに来れる人が私たち以外にいればいいですけどね~」
そう、ここにはボマードちゃんと俺しか現状入り込めないのだ。
他のプレイヤーを実験で崖まで連れてきたことはあったが、ダイブすると黒い霧の壁にぶち当たって崖下にたどり着く前に死に戻りしたからな。
あの黒い霧の壁は崖下にいる大型ムカデのレイドボス【蕭条たる百足壁】が作り出したものと似ているから、会いに行く資格の無いやつを事前に弾いているんだろう。
ルル様のいる【深淵奈落】も同じ仕組みだしな。
同じ種族である【蕭条たる百足壁】も似た系統だろう。
「ここって本当に広い空間が広がってるだけですよね~
いや~、物寂しいってものじゃないですよ!
まるで、廃墟みたいじゃないですか」
廃墟か……言われてみればそう見えなくもないな。
周囲を見ると砂にまみれて建物の破片のような瓦礫がちらほら落ちている。
廃墟……廃墟……?
なんか頭にひっかかるが、出かかっているのに上手く繋がらない……
「今日もこのムカデさんの脱け殻を拾うんですよね?
いや~、重労働ですけど頑張りましょう!
流石にこの作業にもう慣れてきましたよ!」
俺も慣れてきてしまったな……
草原エリアの復興計画のためにこのデカブツムカデの脱け殻を使った像を作るために何度も足を運んでいるから、なんとなくマッピングも出来ている。
【竜鱗図冊】の自動マッピング機能のおかげでこの崖下の調査も自然と出来ていたわけだ。
「【竜鱗図冊】便利そうですよね~!
いや~、私もそれ手に入れてマップとして使ったり、【竜人】に種族転生してばっさばっさ敵を切り伏せたいですよ!」
いや、デバフボディーのボマードちゃんが種族転生したところでたかが知れているだろう。
頭お花畑かこの爆弾魔娘は?
「やっぱり私に対して辛辣ですね!?
いや~、愛情の裏返しってやつですか~?
照れますね!」
は?
自惚れも大概にしてくれよ!
お前はこのデカイ胸で俺を嘲笑ってるんだろ?
このっ!なにくそっ!
俺はテキトーな理由をつけてボマードちゃんの巨乳を揉みしだく。
俺の両手に収まりきらないくらいのボリュームが、俺の敗北感をより一層深めていく。
自分の胸元を見るとそこには断崖絶壁しかなく、怒りをボマードちゃんの胸にぶつけるしかないのだ。
「ちょっ、ここには私たちしか入れないからって恥ずかしいですよ!
いや~、【包丁戦士】さんは大胆ですね~!
そんな【包丁戦士】さんも好きですよ!」
知るか!
さっさと作業を進めるぞ!
俺はボマードちゃんの巨乳に怒りをぶつけて急に冷静になったので、デカブツムカデの脱け殻集めに戻った。
「情緒不安定過ぎませんか!?
いや~、もっと楽しみたかったんですけど……
まあ、こうなったら【包丁戦士】さんは作業に没頭するでしょうし、私も脱け殻集めますか……
はぁ、残念ですね……」
俺たちはそれから黙々と【蕭条たる百足壁】の脱け殻を宝物庫へひたすら奉納し続けた。
そして、ボマードちゃんが新たなパーツを何個か送ったところで声を上げた。
「あっ、あのムカデさん何か作ってますよ!?
いや~、禍々しい気配を感じますね~!」
ボマードちゃんに言われて上を見上げてみると、デカブツムカデが黒い霧を胸元に集めている途中だった。
ボマードちゃんが言ったように何かを作り上げているように見えるが、今まで何度も俺たちを死に戻りさせてきた黒い霧の壁とはまた異なる様子だが……?
そうして、俺たちは身動きせずその様子を眺めている。
変に動くと一部始終を見届ける前に死に戻りさせられそうだからな、無駄な動きは死に直結するのがこのプレイヤーに人権のないゲームの特徴だ。
特にレイドボスの目の前なんて死にやすいポイントにいるんだ、警戒してもし足りない状況というのは誰の眼から見ても明らかだからな。
油断せずにいこう。
……じっとすること一時間、若干待つことに飽きてきたがようやく完成したようだ。
黒い霧を凝縮して出来上がったのは漆黒のダイヤモンドのようなものだった。
上空から降ってくるそれを俺とボマードちゃんは慌てて走っていき、落下地点でキャッチした。
手触りも宝石のように冷たく硬いな。
「ほえー、予想していたよりも綺麗なものが出来上がりましたね!
いや~、これを私たちの結婚指輪にしましょう!
あっ、でも一個しかないです……」
ボマードちゃんと結婚する気はないから結婚指輪というのは論外だな。
相変わらず頭お花畑発想だな……
仮に結婚指輪にしようとしても、漆黒のダイヤモンドは一個しかないためそのままだと一人分にしかならないし、諦めるしかないだろう。
とりあえずなんか貴重そうだから持って帰ろう。
どうせルル様か【菜刀天子】に見せたら何か教えてくれるだろうし、今俺が調べることじゃないだろう。
後で調べることになったとしても、ここでやるよりはましだろう。
レイドボスが目の前にいるからな。
とか思っていたら漆黒のダイヤモンドを持っていた俺は黒い霧の壁に挟み込まれて光の粒子へと変換されてしまった。
「いや~、この流れ私もやられるパターンですよね!?」
ボマードちゃんも俺に巻き込まれて死に戻りしたようだ。
やったぜ!
また不穏な気配がしますね……
【Bottom Down-Online Now loading……】