402話 深淵結界(【鳴動する阻鴉眼】の場合)
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はさっそくユニーククエストのクリアを狙っていくぞ!
というわけで、王宮の外に出て待っている。
何を待っているのかというと……
あっ、来た来た!
「申し訳ございませんわ!
リアルでダンスパーティーがあってログインが遅れてしまいましたわ」
遅れてやってきたのは金髪ツインテドリルのゴスロリを着たいかにもお嬢様!という見た目の【トランポリン守兵】お嬢様だ。
背中にトランポリンを背負いながら移動してきているのはいつ見てもシュールだな。
「それで、ワタクシを指名で呼んだ理由をお聞きしてもよろしくて?
気になって昨晩寝れませんでしたのよ?」
俺の用事でそこまで気になられても逆に困るぞ……
そんなに大した用事じゃないし。
実はここに【深淵結界】を貼ろうと思ってな。
【菜刀天子】に対抗するためのユニーククエストで深淵種族のスキルを使った結界を貼る必要が出てきてしまったんだ。
そこで、【深淵顕現権限Б(ベー)】と【阻鴉邪眼】を使えるポリンお嬢様の力を借りようと思ったってわけだ。
「それは光栄ですが、あなた様も両方使えたのではないのでして?
まずはご自身で試されてはいかが?」
もちろん既に試したさ。
その辺のモブプレイヤーを生け贄に捧げてアルベーの眼を顕現させてみたがダメだった。
だから今度は俺じゃないプレイヤーに試してもらおうと思ったってわけだ。
「ワタクシがやっても、特に違いはないと思いますわよ?
それにしても、【包丁戦士】様は皆様がおっしゃるのよりも理性的な地道な作業をなさるのですわね。
その細かい違いを探ろうとする繊細さは、【検証班長】様の行動とどことなく似ている気がしますわ!」
あー、なんかそれ前にも別のやつに言われた気がするぞ。
【検証班長】と話したり、一緒に検証したりする機会がどんどん増えてきているからあいつに毒されてきているのかもしれない。
そんなに細かく条件を区切りながらやる必要は本来ないのかもしれないが、【検証班長】と話した後だと「やっぱり調べておいた方がいいのか?」とか思ってしまって無駄に労力を使っているのかもしれない。
「いえ、それが悪いと言っているわけでは無いのでしてよ?
ただ、狂人と称されるあなた様にしては意外といいますか……」
ははは、それは俺を褒めてると思わせて貶してないか?
俺の印象悪すぎじゃん!
「それは自業自得ではありませんこと?
自覚もありますわよね?」
……はい。
めちゃくちゃあります。
俺はプレイヤーキラーだからな、風評被害は人の何倍も受けるのだ。
咎人の悲しい性だな。
「自覚しているのならワタクシは今さらとやかく言ったりはしませんわ!
さあ、本題の結界を張ってみますわよ!」
まかせた!
「スキル発動!【深淵顕現権限】!」
スキルを発動したポリンお嬢様の周囲に黒い霧がかかり、ポリンお嬢様を包み込んでいく。
そして、しばらくすると頭に黒い羽飾りがつき全身から深淵の気配を漂わせるようになった。
「おーっほっほっほ!!
ワタクシを再び呼ぶとは貴様は低脳ではありませんこと?
愚行にもほどがありましてよ!」
……しゃべり方は変化していないように聞こえるが、二人称が貴様、そしておーっほっほっほ!という高笑い。
普段のポリンお嬢様では考えられない高潔さの欠片もない様子からするとまた表層に出てきたんだなアルベーさんよぉ!
まあ、元レイドボスだった深淵種族のお前に出てきてもらわないと困ったんだが。
「ということはワタクシを呼び出す前提でこの娘に【深淵顕現権限】を使わせたということでして?
面白いことを考える底辺種族ですこと!」
そう思ってもらえるのなら光栄だ。
どうせさっきまでポリンお嬢様に話していたことも盗み聞きしていたんだろ。
その前提で話すが、深淵結界はお前たちのボスであり俺の同胞であるルル様……【エルル】からのユニーククエストだ。
次元天子である【菜刀天子】を打倒するための下準備ってわけさ。
お前にとっても悪い話じゃないだろ?
「おーっほっほっほ!!
ボスからの依頼でしたらワタクシが協力するのもやぶさかではないですわ!
それに貴様からは深淵奈落を通るための資格が感じられますわね、それが嘘ではないことの証明ですわよ。
底辺種族では深淵スキルでの結界の張り方はわからないでしょうから、特別にワタクシがこの身体で張っておきますわ!
スキル発動!【阻鴉邪眼】!」
ポリンお嬢様の身体を乗っ取ったアルベーが邪眼を発動させる。
【阻鴉邪眼】によってデバフサークルが……
って何かいつもと様子が違うぞ!?
デバフサークルが円で広がっていくのではなく、線で周囲を囲むように広がっていっている。
デバフサークルだけだとこの王宮を取り囲むなんて広さ的に無理だと思っていたが、そんな応用の仕方があるのかよ。
「低脳な貴様ではこの芸当は難しいのですわ!
これは、ワタクシが長年培っていた技術でしてよ!
おーっほっほっほ!!」
高笑いと共にデバフサークルを極限まで細くした線が王宮の四方を取り囲み、線の端と端が繋がった瞬間に脳内に無機質なアナウンスが鳴り響き始めた。
【ワールドアナウンス】
【【ユニーククエスト【鳴動する阻鴉眼】のスキルで結界を王宮に張り巡らせよ】clear!】
【新緑都市天子王宮の深度が深まりました】
【新緑都市天子王宮での【菜刀天子】は包丁次元のプレイヤー相手時にステータス上昇値補正が調整されます】
「おーっほっほっほ!!
ワタクシに感謝してもよろしくてよ!
あの憎き次元天子のステータスにもデバフをかけて差し上げましたわ!」
流石はデバフサークルを応用した深淵結界!
アルベーが熟練した使い手なだけあるな。
サンキュー!
じゃ、この辺で意識を落としておくか。
俺はポリンお嬢様の身体を後ろに回り込み、包丁の柄でアルベーの意識を失わせた。
そして、ついでにポリンお嬢様を包丁で切り裂いて光の粒子へ変換して死に戻りさせた。
本当は意識を失わせただけでよかったが、包丁で切り裂いたのは俺のプレイヤーキラーとしての趣味だ!
ふふふ、役得役得!
うわっ、なんて陰湿な結界を張ってくれたのでしょうか……
許すまじ深淵種族っ!!!!
【Bottom Down-Online Now loading……】