40話 次元戦争のリワード(挿絵あり)
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
というわけで【包丁次元】の王宮へ戻ってきたぞ。
「どういうわけなんだ!
全くお前はよくわからないことを言うな!」
お、【槌鍛治士】じゃん!
囮お疲れ様、どこまでやれた感じなん?
「ワシは3人倒して、後は持久戦だったな!
あれ以上は体力が持たないわい!
王宮の前まで追い詰められていたから、あと少しお前が旗を盗るのが遅れていたら負けていたのは確実だったな!」
へー、結構頑張ってくれていたんだな。
誉めてやろう、えらいえらい!
というかよく俺が旗を盗ったって分かったな?
「それはそうだろう!
あの紫チャイナ服の娘はずっとついてくるだけだっただろう?
そうなると旗を狙いにいくのはお前しかいまい!」
……あのチャイナ娘が実は一番活躍していたかもしれないが、俺の名誉のために黙っていよう。
ここには来ていないみたいだし……
「……私を差し置いて雑談とはいい度胸ですね?
底辺種族の分際で……不敬ですよ」
あっ、ぼろ雑巾になってた【菜刀天子】さ~ん!
チッスチッス!
お疲れ様でした、いや~いい活躍されてましたね。
あの生け贄っぷり最高でしたよ!
「本当に底辺種族【包丁戦士】は生意気ですね。
もう一度私の力をその体に教えてあげましょう、【渡月伝心】!」
あっ、ちょっ、冗談だって!?
【菜刀天子】は包丁を天に掲げ、銀光の円環を刃先から放出させた。
その場にいた俺と【槌鍛治士】は為す術もなく銀光の円環に囲まれ、千切りにされた。
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、戻ってきました!
ん、【槌鍛治士】あいつ逃げたな。
さっきまで俺の隣にいた【槌鍛治士】は【菜刀天子】とこれ以上関わると面倒だと思ったのか、死に戻りを利用して王宮から脱出していた。
くそう、その手があったか。
地面にちょっと温もりが残ってて気持ち悪い感じがするのは、気のせいだろうか。
「……私を生け贄にしたことや敬っていないことは今回勝利の立役者となったことに免じて、一旦置いておきましょう。
それで、これから決めていただきたいことがあります」
俺が決めること?
なんだろうか?
「先程の次元戦争の勝利報酬ですね。
はい、これを確認しなさい。
このリストから1つ選ぶといいでしょう、本来は仲間と相談しながら決めるものということを事前学習として記憶していましたが、底辺種族【包丁戦士】には一緒に決めてくれるフレンドがいないようですからね」
余計なお世話だ。
というよりフレンドなら1人いるだろ?
キョロキョロするな、お前だよお前。
俺のフレンドリストに【菜刀天子】って書いてあるんだからボッチじゃない!
セーフセーフ!
「まあ、アドバイスくらいはしてあげましょう。
かわいそうですし……」
なんか同情してくれた。
この辺AIって言っても人間っぽいよな。
科学のちからってすごい!
「それで……とりあえず見てくれませんか?
あなたが報酬リストを見てくれないと何も始まりませんが……」
あっ、素直にごめん……
なになに……
【勝利報酬リスト】
【下記のものから1つお選びください】
【王宮拡張権】
【深度の種】
【天子の心得書】
【フレンドリストの拡張】
【攻略のヒント】
【食材詰め合わせ】
【鉱石詰め合わせ】
【水詰め合わせ】
【薬草詰め合わせ】
……なるほどね。
で、【菜刀天子】先生説明よろしく。
「自分で少しは考えてください……
【王宮拡張権】はこの王宮の封印されている機能の1つを開放できる権利ですね。
今のところこの王宮は、私がいるこの謁見の間しか開放されていません。
ここを拡張すると次元戦争で有利になったり、生産活動の助けになったりする機能が開放されます。
ただし、開放される機能設備はランダムで選ばれますので注意した方がいいでしょう」
……ってことはこの王宮今ハリボテ同然じゃないか(困惑)
こんなに見た目豪華なのにこの部屋しか今使えないの!?
この偉そうな黄色髪天子の強さのようだぁ……
「……次は深度の種ですね。
これは単純明快、食べると深度をさらに獲得できるアイテムです。
……勝手に深度を手に入れる底辺種族のあなたには不要なものだとは思いますが……
そもそも深度を手に入れることが良いことかと言われると……いえ、何でもないです」
ちょっ、不穏なことを言い残さないでね?
俺の深度どんどん数字が増えていってるのにメリットじゃなかったってマジ?
失望しました、【槌鍛治士】のファンやめます!
「勝手にやめればいいではないですか……
……次は天子の心得書です。
これは私を直接強化できるシステムサポートアイテムですね。
次元天子スキルを習得することやレベルが上がることがあるみたいです。
……王宮拡張権と同じで何が起こるかはランダムみたいですが。
まあ、これが無くとも私は強いので不要なものですね」
嘘つけ、前回ぼろ雑巾で生け贄に捧げられただろ。
というかレベルの概念あるのね?
いや、プレイヤーに実装されているかはともかくこいつにあるってことは、俺がこの天子に何度も倒されるのはレベリングになっている可能性はあるのか。
それでもおとなしくこのまま負け続けるのは嫌なのでこそっと対策を練りつつあるが。
「……私は基本プレイヤーを監視してますからね?
次はフレンドリストの拡張です、現在の制限が100人なのに対してこれを使うと次元全体のプレイヤーのフレンドリストの上限が50人増えます。
この機能を開放してもあなたには直接メリットは無さそうですけどね。
ただ、喜ぶ人は何処かにいるはずですよ」
……ないな。
これはない。
だって俺のフレンドリストに登録されてるの一桁だし……
【渡月伝心】といいどうして俺にメリットが薄そうなものばかり用意されているんだ……
恨むぞ運営とability【会者定離】!
「……ですよね、これは少し同情します本当に。
次は【攻略のヒント】ですね。
これは次に何をやった方がいいのか教えてくれます。
何をやるのかはグランドクエストの中から1つ教えてくれますよ。
地味なようで、かなり有用な報酬だと私は思いますよ」
攻略本の一頁みたいなものか。
う~ん、俺もたしかにいいと思うが即物的なものじゃないからヒントとかによってはちょっと怖いな……
それにネタバレ感があるのがなんとも。
「そういうところはゲーマー思考なんですね。
最後は詰め合わせシリーズですね。
グランドクエストの進行具合で中身が変化していきます、その時点で入手可能なものが入ってますよ?
中にはレアなものもあるらしいので度胸を試すにはおすすめ!……らしいですよ」
最後の最後でボロを出したな?
めっちゃカンペ読んでる風だった。
詰め合わせか……ただ消耗品をここで選ぶのは勇気がいるな……
いいのが入っていればホクホクだけど。
「説明は以上ですね。
それでどうしますか?
急いで決めなくとも良いですが、早く手に入れる方がその恩恵を長く受けられます。
今決めてしまうのが私は賢い選択だと思いますよ」
慌てんなよ慌てんなよ……
俺はもう決めてるからそこまで焦らせる必要はない。
「へぇ……?
素早い選択には感心しますが、何を選んだのですか?」
【菜刀天子】は値踏みするように俺をねっとり観察している。
この選択でこいつの評価が変わるのだろう、根拠は無いがそんな予感がある。
いや、変わったところで俺に何かあるわけでもなさそうだが。
「俺が選んだのは……
【王宮拡張権】だ」
俺の言葉を聞いて【菜刀天子】はにやりと笑った。
こいつ好みの選択だったようだ。
……まあ、おすすめしないものを一応教えてくれてたし、ギャルゲーの選択肢よりはチョロいチョロい。
「ちなみに理由を聞かせてもらっても?」
「理由は1つしかない、この立派な王宮をハリボテにしておくのがもったいないからだ!
この王宮が機能的に動いていないなんて俺が許せない、俺のログイン場所でもあるしな。
それに……お前もつまらないだろう?
この王宮で色々やってみたくないか?
そこでふんぞり返っているのもそろそろ飽きてきたんじゃないか、それを俺が変えてやるよ!」
ちょっと驚いた表情をしている。
こんなことを言われるとは思ってなかったんだろう。
ちょっと涙目になっているからか目元が輝いているように見える。
「……そうですか。
あなたは底辺種族で頭のネジが飛んでいるのですね」
酷い言われようだな。
「しかし、それが今は心地よく思えます。
あなたの選択に祝福あれ!」
天子が両手を広げると俺の前に表示されていた報酬リストが弾け光に包まれる。
そして現れたのは1つの鍵だった。
これが王宮改造計画の始動キーってわけか。
興奮してきたな!
変わった底辺種族です、ね……?
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