399話 竜人の特徴
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
前回は【釣竿剣士】に巻き込まれて死に戻りした後、結局二人で【菜刀天子】に挑むことになったのだがそれでも赤子の手を捻るようにやられてしまった。
包丁次元の対人戦が得意な上位二名でこの結果だから、救いようが無さすぎる……
せめて、【菜刀天子】の言うように一緒に挑戦するプレイヤーの数を増やすか、有効的な対抗策を用意していかないと無駄足になりそうだ。
というわけで、俺は渓谷エリア……【地蒜生渓谷メドニキャニオン】へとやって来た。
今回は俺一人だけじゃなくて、【フランベルジェナイト】も連れてきている。
「フェイちゃん、とうとう俺たちも種族転生できるみたいだ!
より一層強くなってフェイちゃんをもっと守れるようにならないとな」
【わ、私も種族転生できるのでしょうか……?】
【条件を満たしてないと言われないか不安です……】
「大丈夫だよ。
そんなことを言われたら俺がその条件を満たすまでどこまででも付き合ってあげるから問題ないさ」
【ふ、【フランベルジェナイト】さん……ありがとうございます!!】
俺はなんでこんな一人芝居に近い、甘ったるい空間で電波男と一緒に居ないといけないんだよ、罰ゲームか?
甘ったるい空間だけならともかく……【フランベルジェナイト】は間違いなくイケメンのアバターだが、周りからは空中に話しかけているようにしか見えないので周囲からの目線が痛いのだ。
発言もどこぞの主人公かと思うような勇ましいものばかりなので、メス堕ちした【フェイ】は実は別の世界線の俺なんじゃないかと思ってしまい複雑な気分にもなっている。
そんな諸々の理由が重なって辛すぎるぞ……
それはまあいい。
とりあえず俺たちが来たのは冒険者ギルドだ。
先日、ここのギルドマスターを倒したんだが誰が管理してるんだ?
「それはわっちじゃ!」
うわっ、びっくりした!?
俺の呟きに反応したのは和服を来た竜人のロリババア……レイドボスだったはずの【オメガンド=メイローン】だ。
お前、倒されたはずでは……?
「わっちを甘く見ておるのじゃな?
レイドボスとしては機能しなくなったのじゃが、どうやら【ギルドマスター】としての役割が残っておるから消滅しなかったようじゃ!」
そういうことか……
それなら、同様に消滅しなかったミューンにも何か役割があったのか?
「それはわっちに聞かれても知らぬのじゃ……
何せあやつには久しく会っておらんのじゃからな。
わっちも今度ミューンに会いに行くとするかのぅ……?
せっかくレイドボスとしての軛から外れることができたのじゃ、楽しまねば損じゃ」
そんな今後の期待に胸を膨らませてるのは悪いが、これからも【オメガンド=メイローン】って呼べばいいのか?
ミューンは負けたら名前が無くなるとか言ってたけど。
「そうじゃな、レイドボスではなくなったわっちのことはただのオメガンドと呼ぶが良いのじゃ。
レイドボスではなくなったとはいえ、お主らよりは強いままじゃから敬意は持っておくのじゃぞ?」
はいはい、オメガンドね。
それでロリババアに用事があって来たんだけど。
「さっそく名前を呼んでおらんのじゃが……
まあいいじゃろう、何のようじゃ?」
いや、この俺の後輩プレイヤーの【フランベルジェナイト】を種族転生させて欲しいと思ってな。
「そう、俺とフェイちゃんを【竜人】にして欲しいんだ!
だが、【竜人】になると何が変わるのかまず教えて欲しい。
フェイちゃんをわけのわからない状態で転生させても不安にさせてしまうだけだからさ」
【そ、そこまで気を使ってもらえるなんて……】
「フェイなんてプレイヤーはここにはおらんのじゃが……
こやつは何を謂っているのじゃ?」
その辺は気にしたら負けと思ってくれ。
こいつはここがパーなんだ。
俺は頭を指差してそう説明する。
どうせ【フランベルジェナイト】は気にしないしへーきへーき。
「そうなのじゃな……
わっちもあまり触れたくないから話を進めさせてもらうのじゃ。
【竜人】になると【竜鱗図冊】のデメリットが無くなるのじゃよ、つまりabilityが無くともマップの埋め直しが不必要になる。
そして、わっちのかくし球じゃった【波状風流】も上手く使えるようになる。
他にも竜の血脈の影響で【魔法に関するスキル】も操作しやすくなるのじゃ!
聖獣の中でもわっちが司るのは【魔法】じゃから当然と言えば当然のことじゃがの」
【獣人】は肉体面での強化だったが、【竜人】は魔法か。
面白い方面での強化だな。
厨二病を患っていたability【現界超技術】の持ち主であり異世界人の【黒杖魔導師】が聞いたら喜びそうだ。
あいつとはあんまり話したことないけど、魔法とか好きそうな見た目してたし。
今度あったら教えてやろう。
それで、【フランベルジェナイト】はどうするんだ?
種族転生するのか?
【ふ、【フランベルジェナイト】さんは種族転生するのですか?】
【い、今まで迂闊に使えなかった【竜鱗図冊】と新しいスキルの【波状風流】が活用できるようになるのは魅力的です!】
俺の言葉を翻訳するように【フェイ】が間に入ってきたな。
同じ言語を話しているはずなのに、なんで通訳が必要になってるんだこの残念イケメン電波男は……
「いや、まだ判断するのは早いよ。
このゲームはメリットとデメリットが背中合わせと相場が決まっているらしい。
だからデメリットの方も聞いてからにしよう」
【フランベルジェナイト】、やはり有能なんだよな……
雰囲気がやばいことを除けばかなりきちんと物事を見れている。
第三陣プレイヤーであるにも関わらずこのゲームの真髄にも気づいているようだ。
メリットとデメリットの把握がPVPの要だ。
もちろん、プレイヤーキラーとしても必要な情報だぞ。
「【竜人】のデメリットじゃと……?
ふむ……そうじゃな強いていうのなら……
氷に弱くなることじゃな、お主らは氷を使うレイドボスと戦ったことがあるのじゃ?」
ないけど……いるのか?
「詳しくは言わぬが、もちろんいるのじゃ!
そやつと戦うときに【竜人】じゃとかなり苦労させられるじゃろう」
まあ、今まで出てきてないってことは大して気にしなくてもいいだろう。
その時はその時だ。
「それと、生えてくる尻尾が弱点になるのじゃ!
わっちも先のレイドバトルで尻尾を切り落とされた時にはもう限界じゃったのじゃよ」
まあ、あれは最後の最後だったからあんまり関係なかったが、まさか尻尾が弱点だったとは。
戦っているときには気づけなかったな。
「それはわっちが気づかせないように立ち回っておったからなのじゃ。
尻尾を攻撃に使えば、自ずと尻尾を避けてくれるようになるのじゃよ」
レイドボスのくせに姑息な真似を……
尻尾が弱点だと知っていたらさっさと【フィレオ】で切断してやったのにな。
「それを悟らせぬのが一流のレイドボスというものじゃ!
あっ、こら触らないで欲しいのじゃっ!?」
俺は今聞き出したばかりのオメガンドの尻尾を手で握り、にぎにぎと何度も握ったり離したりしてみる。
手のひらに竜の鱗の感覚が伝わってきてなんか生々しい。
ゴツゴツしているが、生暖かくてドクドクと脈動している。
握ったときに脈動のスピードが早くなるのがよく伝わってくるぞ。
「ふぉぉぉぉっ!?
こ、こらっ!そ、そこは本当に敏感なのじゃよ!?」
へー、そうなのか。
それならこういうのはどうだ!
俺は握りしめる力を強めて、尻尾の先から根元にかけて高速でしごいていく。
ゴツゴツした鱗が若干痛いが、オメガンドの反応が面白いのでどんどんスピードアップしていってしまう。
「んんっ!!??
ちょっ、それはっ本当に!!!
本当にっ、まずいのじゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
オメガンドは大声を上げて果てた。
やったぜ!
これで底辺種族の勝利だ!完!
あっ、ちなみに【フランベルジェナイト】は結局【竜人】に種族転生したぞ。
あいつがここからどう化けていくのか期待大だな。
なんですかこれは……
公衆の面前で……恥を知りなさい!
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