398話 なんというコラテラルダメージ
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は……
と、いつもの思考ルーティンからゲームでやることを纏めていたが俺がログインした新緑都市アネイブルの王宮がやけに騒がしいな。
ここには【菜刀天子】、ミューン、カイ=フジンしか居ないはずだから基本騒がしくなったりすることはないのだが。
そう思い、周囲を見渡すと【菜刀天子】が中華包丁……菜刀を振りかざして何かと戦っているようだ。
まさか、戦闘狂のミューンと戦ってるのか!?
今までそんな場面みたことなかったのに。
「胸を借りるつもりで挑ませてもらいますよ!
まずは、釣竿一刀流【抜刀斬】!」
【菜刀天子】と対峙している少女は釣竿を腰につけるように下げて体勢を前傾姿勢にした。
そして、その後はバネが伸びるかのごとき勢いで【菜刀天子】へと肉薄して一瞬で釣竿を振り切った。
その辺のモブプレイヤーならこれで瞬殺されているだろうな。
……どうやら【菜刀天子】と対峙しているのはミューンとは違うようだ。
釣竿一刀流を使っているということは【釣竿剣士】だろう。
「底辺種族にしては悪くない攻撃ですが、それだけで私に勝とうと思っているのは傲慢としか言いようがないですね。
もっと私を敬いながら戦いなさい」
その【釣竿剣士】が放った斬撃だが、【菜刀天子】の包丁によるパリィで弾き返されたようだ。
しかも、斬撃だけではなく【釣竿剣士】自身も吹き飛ばされている。
かなり勢いよく飛ばされているようで、ボマードちゃんだったら壁にゲキトツして死に戻りしていたこと間違いない反撃をくらっているが、ここは化け物スペックの【釣竿剣士】が体を空中で回転させながら勢いを低減させて立て直したようだ。
改めて傍観してみると人間離れした動きばかりで気持ち悪いなこいつ……
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!
あっ、【包丁戦士】さんもログインしてきたのですね。
どうですか私と一緒に【菜刀天子】と戦いませんか?」
いや、今回はお前が戦っているのを高みの見物させてもらおう。
図らずとも俺は【菜刀天子】との交戦回数が桁外れに多いからいまさらじっくり戦う必要もないからな。
お前が【菜刀天子】の動きに慣らしているのを邪魔するのは申し訳ない。
「やはり意図は読まれていましたか。
いいでしょう、私の生産プレイヤーとしての力を見せてあげますよ!」
見せてくれるのはいいが、なんでお前はここに入れているんだ?
「それは【王宮入場許可証】を手に入れたからですね。
私は闘技場イベントで2位でしたし、既に持っていましたからさっそく挑戦に来たというわけです」
「事情説明もいいですが、隙だらけではないですか?
並列思考能力が低いですね。
これだから底辺種族は……」
「あっ、釣竿一刀流【渦潮】っっ!」
なるほどな。
そういえば【菜刀天子】に挑戦するためには【王宮入場許可証】とかいうアイテムが必要なんだっけ。
俺は別ギミックを使ってこの王宮に入り込んだ影響かそんなアイテムな無くともずっと前から強制的にレイドバトルさせられていたから忘れてた。
【釣竿剣士】は簡潔に俺に事情を説明しながら【菜刀天子】の中華包丁による猛攻を釣竿捌きによって防ごうとした。
釣竿一刀流【渦潮】は釣竿をトーチトワリングの要領で振り回し守りに重点を置く釣竿一刀流の技で、ギリギリガードが間に合い【釣竿剣士】へのダメージは最低限で済んだようだ。
流石【釣竿剣士】、やるなぁ。
だけどあの【菜刀天子】の様子からすると……
「くっ、これは【菜刀天子】さんに遊ばれていますね……」
「当たり前でしょう、何故私が底辺種族一人相手に本気を出さねばならないと言うのですか。
私を本気にさせたいのであれば最低でも軍団としての数くらい集めてきたらどうですか。
それが次元天子である私への敬意というものですよ、それすらも出来ないのは呆れを越えて驚きというものです。
全く、これだから底辺種族は……」
今まで半分ネタキャラクターと化していた【菜刀天子】だったが、レイドバトルが発生しているしもちろんレイドボス並みのスペックはあるのだ。
しかも、聖獣を束ねるほどの存在だから潜在能力は包丁次元のレイドボスの中でもトップだろう。
そんなやつだからこそ、プレイヤーの中でもトップクラスに戦闘技術が高い【釣竿剣士】を赤子の手を捻るように簡単にあしらえるのだろう。
あの【釣竿剣士】がタイマンで防戦一方なんて、PVPでは考えられない光景だ。
「せっかくですから無様に死に戻るために私の力を見せてあげましょう。
サービスというものです。
散り散りになりなさいっ、【渡月伝心】!」
【菜刀天子】は包丁を天に掲げ、銀光の円環を刃先から放出させた。
銀光が放出されると【釣竿剣士】を取り囲むような軌道で飛翔してきた、あとなんか俺も囲まれている。
そして、その場にいた俺と【釣竿剣士】はスキルに反応することができず、為す術もなく銀光の円環に囲まれ、千切りにされた。
えっ、俺も巻き添えかよっ!?
なんというコラテラルダメージ……
劣化天子も同罪です。
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