396話 考察会議は踊る!~【波状風流】編~
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はスキル解放後の恒例行事(?)である【検証班長】とのスキル効果を確認する考証会議だ。
というわけでやってきました新緑都市アネイブルにある樹木をくり貫いてできた建物に間借りしている検証班のたまり場、メッテルニヒ。
ここの一階に顔パスで侵入して階段を駆け登り、二階へと上がっていく。
するとそこには淫乱ピンク猫耳頭巾幼女の【ペグ忍者】と白衣にメガネの青年【検証班長】が椅子に座り、机を挟んで話し合っている最中だった。
その二人は俺を見るとぎょっとした表情を浮かべてこっちを同時に見た。
「えっ、【包丁戦士】さん!?
今日は来るという予定ではなかった気がしたんだけど!?」
「にゃにゃにゃっ!?
【ペグ忍者】も驚きなのら!?」
そう、今回はサプライズということでアポなし訪問してみた。
どうだ、お茶目だろ?
「お茶目というかなんというか……相変わらず【包丁戦士】さんの思考は読めませんね。
そんな【包丁戦士】さんの考えを理解している【槌鍛治士】さんを心から尊敬しますよ」
「流石狂人なのら!」
うるさいぞお前ら……
ただサプライズで来ただけじゃないか。
「ここ検証班の拠点ですけど、一階で誰にも止められなかったのかな?
部外者は二階に上げないように言ってあるはずなんだけど、そこを通過してきている時点でおかしいんですよ」
ああ、止めてきたやつはいたけど面倒だったから片手間に包丁で切り裂いて通ってきたぞ。
話を通すよりもキルしたほうが早いからな。
「やっぱりプレイヤーキラー筆頭は常人とは考えが違うのらね~
【ペグ忍者】はまともなプレイヤーだからわからないのら~!」
嘘をつくな、お前は【釣竿剣士】の悪質ストーカーだろ!
この前釣りをしてる【釣竿剣士】を木陰から凝視してたの見たぞ!
「うっ、あれ見られてたのらね……」
「はいはい、不毛な争いはそれくらいにしておきましょう。
【包丁戦士】さんがこのタイミングで来た理由は新要素関係の考察を聞きたいからですよね。
ちょうど【ペグ忍者】と纏めていたところですから、復習も兼ねて説明しますよ」
ちょうどいい頃合いで話の流れを戻してきた【検証班長】は相変わらずのやり手だな。
軌道修正のタイミングを熟知している。
新要素目当てというのも合っているし、なんだかんだ言いつつも俺の行動を読めてるぞ。
「ボクを誉めても何も出ないですよ……
それで何から話すべきでしょうか」
「はいはいはい、【ペグ忍者】が集めてきた新スキルの【波状風流】について説明するのら!」
スキルの調査は【ペグ忍者】の担当らしいからな。
忍者という名前を冠しているだけあって、幼女のアバターを使っているわりに難しい作業もお手のものだな。
さて、気になるスキルの性能は……
「【波状風流】を簡単に説明するなら、空中ジャンプできるようになるスキルなのら!
これもよくオンラインゲームにあるシステムサポート機能がスキルとして使えるようになったのらよ~!」
おっ、とうとう空中で多少自由が効くようになるのか!
まあ俺はルル様の骨羽とか天子の黄金の羽、悪竜翼の三パターン飛行手段があるからうまみは薄い。
というか聖獣スキルって毎回俺にうまみが薄くないか!?
俺が深淵種族寄りの体質(?)だからだろうか。
……それで、空中ジャンプできるようになるのはいいがどうせデメリットとか制限があるんだろ。
次元全体に解放されるスキルは特に制約が厳しいからな。
「もちろんなのら!
まず、空中ジャンプするためにスキルを発動すると、地面にスプリンクラーみたいな核が設置されるのら!
そこから風の流れが波のように流れてくるから、その流れを足場にすると空中でジャンプできるようになるのら!
だから核が壊されるとスキルが強制停止するのらよ。
あと、核を出してる時は他のスキルが封印されるみたいなのらよ!
こう見ると【花上楼閣】に似てるのら~」
【花上楼閣】も核のような岩の花弁を設置するスキルだし、スキルが封印されるからな。
まあ、こっちは花弁が破壊されたらデメリットが発動するというデメリットのタイミングが違ってるが似たようなものだろう。
「面白い使い方は【花上楼閣】を使ってから【波状風流】を使うやつなのらよ。
核と花弁が同じ場所に作られるからバグなのか合体してるように見えるのら!
……でも【スキルチェイン】は発生しなかったのらけど」
スプリンクラーと花弁が合体……?
俺はその光景を思い浮かべる。
柱頭とかやくとかが花弁の中に出来てる感じなんだろうか。
それで、その組み合わせを同時に使うとどうなったんだ?
もしや見た目がバグってただけとかないだろうな?
「……」
「……」
「……」
「空中に浮かび上がって風に上手く乗れずに落下、【花上楼閣】の花弁の位置に死に戻りしたのらね……」
出オチかよ!
俺の叫びがメッテルニヒに響き渡ることとなった……
やはり底辺種族には扱いが難しいようですね。
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