386話 クカクセイリ
「これで地形変動は止められたと思うのら!
あとは整地するのらよ~
スキル発動!【暴虎馮河】なのら!」
【ペグ忍者】は鉤爪のようにしたペグから黄色いオーラが溢れ始めた。
そして、そのオーラは伸びるようにして鉤爪ペグを補強していく。
その補強された爪を使ってフィールドの隆起を止められなかった場所を直接削り取っていっているようだ。
ワイヤー猫ハウス戦法といい、【ペグ忍者】はフィールドの状況を変えながら戦うことが多いよな。
高速移動をする関係上、足場が整っていることが必要だからわかるが思ったよりもあいつは几帳面だ。
それはスキルの調査をするときにも思ってはいたが、普段のふざけた語尾のせいで意外に思えてしまうんだよな。
「おいwww
【虫眼鏡踊子】も手伝ってやれよwww
最近【猫獣人】に種族転生したんだろwww」
「やれやれ、こいつは困ったら私にすぐ頼るのよね。
でも、悪い気はしないからいいのだけれど!
今回は獣人系共通スキルでいこうかしら。
スキル発動!【獣王無尽】!」
【風船飛行士】に支援を促された【虫眼鏡踊子】はスキルを発動し、黄色いオーラを全身から溢れるように出しはじめた。
【ペグ忍者】も前に使っていたスキルだが、あの【獣王無尽】は身体強化スキルだ。
爆発的にパワーとスピードが上がるスキルを使用した【虫眼鏡踊子】は手に持ったチュートリアル武器の虫眼鏡を盛り上がっている岩に叩き落として粉砕していく。
「虫眼鏡で岩を粉砕する光景が爽快すぎてワロタwww」
悔しいが俺も同じ気持ちだ。
完全にネタ武器である虫眼鏡で岩を砕くやつが現れるなんて思ってすらなかったし、普通に面白映像と化している。
「そこ、笑ってないで攻撃をつづけなさい!
これだから私の彼氏は……
なんでゲームだとこんなに性格が変わるのかしら」
「オラオラオラwww
オレの風船竜のブレスをくらえwww
この攻撃に回避はアリエナイwww」
【虫眼鏡踊子】に攻撃を促された【風船飛行士】は風船竜を駆使して再びブレスによる攻撃を再開していく。
地形変動が無くなったので俺たちに合流してきたが、元々一度燃料切れになったようで地上に降りてきてさっきまで風船竜を再作成していた。
【風船飛行士】としてもここまでの長期戦は想定していなかったのだろう、若干ペース配分を間違えたのかもしれない。
既に息切れを起こしているようにも見えるぞ。
さて、これだけ地形変動を止めたのなら試練の結果は……
【まさかこのような形で試練を対策してくるとは思っていなかったのじゃ】
【じゃが、これはこれでみごとなものじゃ】
【特にミューンの伝播の力を借りてきたのはわっちも驚いたのじゃ】
【それに免じて、第四試練突破としてやるのじゃ】
やったぜ。
ここまで、俺の見せ場は深淵フルートによる【堕音深笛】の演奏くらいしか目立ったものはないが、俺はプレイヤーキラーだからな。
レイドボス相手だとどうも勝手が違うので動きにくい。
それにこれだけのプレイヤーがいれば、活躍の場も分割されるのは当然の摂理か。
【次がわっちから課す最後の試練じゃ!】
【第五試練、波状風流への抵抗をするのじゃ!】
【いや、ここまでわっちを驚かせたお主らにならば……】
【もう1つ上にさせてもらうのじゃ】
おい、勝手にハードルを上げてくるな!
俺たちが頑張りすぎたからなのか、急に悪夢のようなことを言い始めた【オメガンド=メイローン】。
ただでさえ、プレイヤーたちは疲弊しており限界が近いというのにこの状況でギアを上げてくるのはなんの冗談なんだろうか。
冗談はその身体スペックだけにしてくれよ……
【では改めて……】
【第六試練、刃状風竜への反逆を成し遂げるのじゃ!】
【オメガンド=メイローン】が試練の開始を宣言した途端に、俺の真横にいたモブプレイヤーの身体が細切れになり飛び散っていった。
!?
何が起きたんだ!?
俺は急いで周りを確認すると、同様に細切れになり光の粒子へと変換されていっているプレイヤーたちの姿が目に入った。
20人ほどがこの瞬間に同時にやられたっぽい。
一瞬でこれだけのプレイヤーなやられるとは……
「ちょっwww
初見殺しもいいとこだろwww
なんなんだよこれはwww
笑えないぞwww」
笑えないぞって言いながら笑うなよ。
いや、むしろ笑うしかないのか。
ここまで対策を万全にして挑んだからか、プレイヤーに死に戻り人数は激戦を繰り広げた割には最低限で住んでいた。
しかし、今の一瞬でその努力も水の泡に帰してしまった。
あれだけ丁寧な戦場コントロールだったのにも関わらず、ここでそれが踏みにじられるようにプレイヤーの命が失われていってしまった。
しかも、俺たちには今何が起きたのか理解すらできなかった。
ただ、プレイヤーの命が失われただけなのだ。
……これどうすんの?
どうにかしてください。
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レビューがっ、欲しいですっ!(渇望)