363話 お散歩
【Raid Battle!】
【深淵域の管理者】
【エルル】
【???】【上位権限】【ボーダー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【深淵へ誘い】
【冒険者を堕とす】
【深き真価を見極め】
【境界に流転する】
【封印された夢想が解き放たれし時】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【深淵奈落ー浅層 ルルイン】の探索をしていこうと思う。
だが、探索自体はメインではない。
俺の配下となったレイドボスの【深淵聖獣キリゲー=サキールシゥン】を引き連れて歩くことが目的だ。
【深淵聖獣キリゲー=サキールシゥン】は元々ここにいるから【想起現像】を使うまでもなく、俺のそばに呼べるが……
もう一体のレイドボスである【カイ=フジン】は流石にスキルを使わないといけない。
というわけで、スキル発動!【想起現像】!
……?
何も起きないな……?
砂がわき上がってくることもなく、スキルは不発で終わってしまったようだ。
こんなこと初めてだな。
何が原因なのか疑問が残るが、【深淵奈落ー浅層 ルルイン】自体がこのスキルを封じているわけではないというのは前にここでスキルを発動したことがあるから分かっている。
前は風見鶏状態のキリゲーに砂漠化スキルで刺激を与えたりしていたからな、エリアだけが原因ではない。
そう考えると自然と思い付くのは【カイ=フジン】に原因があるということだ。
あいつの意志が稀薄だから……?
いや、地上では呼べたからそれはないか。
復活したばかりで身体が弱っているから……?
なんだか近い気がする。
この【深淵奈落ー浅層 ルルイン】は深淵種族には過ごしやすい環境だが、それ以外の適応できない種族には毒ガスがミチ溢れた空間でしかない。
だからこそ、俺の呼び出しに対して本能で拒否しているのかもしれない。
呼び出されて毒ガス部屋に閉じ込められたらたまったものじゃないし、冷静に考えたらそりゃ来ないだろうと思った。
そんなの俺でも拒否するわ。
勝手に自分の配下の本能的な賢さに感心しながら俺とキリゲーはテクテクと【深淵奈落ー浅層 ルルイン】を歩いて行く。
生まれたばかりのキリゲーにはまずは歩行そのものに慣れてもらわないといけないからな。
いくら身体スペックがレイドボス級だからといって、動きが拙ければ使い物にならない。
だからこそ、まずは初歩的に移動の練習をさせているというわけだ。
あっ、こら!
勢い余って壁に激突するな!
キリゲーは有り余るレイドボスとしてのスペックを使いこなせず、自分の動きを制御できないまま壁に激突してしまったようだ。
これは世話が焼けるぞ……
そう思いながら、壁に頭からめり込んでしまったキリゲーを力一杯引っ張り出す。
若干痛そうな素振りを見せたが、俺は騙されないぞ!
レイドボスのスペックならこの程度の衝撃で大きなダメージになることはない。
甘えるなよ、この程度で音を上げられては困る。
お前にはプレイヤーキルの新たなる境地にたどり着くための糧になってもらわないといけないからな。
これからも修行あるのみだ!
そうして、時々キリゲーは壁に頭を突っ込みながらもひたすら歩いていく。
あれから何度も突っ込んでいるからか、見ていると流石に可哀想に思えなくもないが、自業自得だし数を重ねて慣れていってもらうしかない。
ここで甘やかすと、後でろくなことにならない気がする。
横から歩いている様子を見ると、このキリゲーはただ歩いているだけじゃなくて周囲から黒い霧を体内に取り込みながら歩いているようだ。
風見鶏状態だったときの名残なのか、こいつの能力なのかは分からないがこれくらいは自由にさせてやるとしよう。
成長促進に繋がるかも知れないし、色々な場所で取り込めばこの分だけ栄養バランスが偏らなくなるかもしれない。(露骨な料理人アピール)
この【深淵奈落ー浅層 ルルイン】もまだまだ俺の理解が及ばないところが多いし、つれ回して行くだけでも感じられるものがあるかもしれない。
その試みは徒労に終わるかもしれないが、それでも最低限俺の探索時間にはなるので総合的に見ると無駄にはならないはずだ。
憶測ばかりになってしまっているが、何もわからない状況なんだから仕方ない。
流石に【検証班長】でもここから先の思考には進めない……はずだ。
検証材料そのものがないからな。
まあ、焦らずゆっくり育つのを見守っていくとしよう。
あっ、こら俺にぶつかってくるな!!!!!!
俺は自分の配下(?)に突撃され死に戻りすることとなった……
どうしてこうなった……
元気が一番だのぅ……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】