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35話 顕現!菜刀天子さん

 おは~、今日も引き続きアネイブル散策だ。


 「いや~、街中をぶらぶらするのもいいですけど、そろそろ気になっていたあそこにいきませんか?」

 

 爆弾魔がそう言って指を指した先には樹木でできた王宮のようなものがあった。

 すごく……おおきいです。


 「本当に大きいですよね!

 いや~、こんな感じの建物に住んでみたいですよね~」


 それ、はじめは満足するけど途中から移動が面倒になったり掃除が大変だったりと後からくるやつだぞ。

 ま、大きい豪華な建物に住んでみたいという気持ちはわからなくもないが。


 「あっ、門で入り口が閉ざされてますね。

 いや~、残念です」


 この王宮はレイドバトル中に何度も戦闘に利用できないか侵入を試みたが、システム的なロックがかかっているようで、城壁を乗り越えようとしたり門を破壊しようとしたりしたが全て弾かれた。

 当時は結構悔しかった記憶があるぞ。


 「そ、そんなことしてたんですね……

 でもそういう色んなことを試していたからこそ新緑都市アネイブルのトッププレイヤーって呼ばれるようになったんですよね?

 このゲームでトッププレイヤーって言われているのはレイドバトルに対する意欲が高いプレイヤーみたいですし」


 前も【槌鍛治士】に聞いたがそうみたいだな。

 俺と同じようにあの風船のチャラ男も【這竜渓谷の大盟主】に並々ならぬ意欲を燃やしているのだろう。

 あの様子からは想像できな……いや、シルバーもっと巻けって言ったらちょっと雰囲気変わってたな、あっちが素なのかもしれない。


 そんなことを話していると門に何やら文字が刻まれているのを発見した。


 「えっ、あっ本当ですね!?

 いや~、門の真下から見上げないと見つけられない文字があるなんてこのゲームはプレイヤーをおちょっくってますよね?」


 それには激しく同意だ。

 きっと、他の皆も同じように同意するだろう、このゲームはそういうゲームだ。

 

 ちなみに、レイドバトル中にはこの文字を発見できなかった。

 見落としていたのか、プレイヤーによって都市が開放されたから何かのフラグが立ったのか今となっては分からない。

 分からないが、ラッキーだ。


 「え~、何々?

 【深きものを取り込みし者よ、門前で顕現させよ。】

 【さすれば道は拓かれよう】

 つまり、どういうことです?」


 うーん、深きものを取り込みし者……【深淵細胞】のことか?

 あれ体内に取り込まれたっぽいし。


 それでこの前で顕現させよってことは、ここで【深淵顕現権限】を使えばいいのか?

 こんな単純な考えでいいのか分からないが、試すだけタダだしやってみるか。

 

 そう考えて、とりあえず手頃な【モブ】をその辺で捕まえてきた。




 そう、生け贄だ。

 せいぜい役立ってくれよな。


 「俺の初スキル発動、【深淵顕現権限】っ!」


 バキバキと骨格が変わる音が身体中から響き渡り、着ている服を何やらが突き破ったかと思いその感覚がした方を見ると先日ボマードちゃんがやっていたようにヌルヌルしたウナギのような尻尾が生えていた。


 うへっ、身体についている異物が動いているみたいで何か気持ち悪い感触だなこれ……

 こんなのに最新技術を使うとはなんとも無駄遣いなゲームだ。


 うにょうにょと動くウナギ尻尾を見ながらそんな感想を抱いていると、俺たちの目の前を塞いでいた巨大な門が音を軋ませながらゆっくりと開いている。


 この音からすると、かなりの時間門が閉ざされていたんだろうなぁ……

 たまに木屑が落ちてきてるし……


 時間をかけて開いた門をくぐり俺たちは王宮のなかへ入った。


 俺たちの眼前にあったのは派手な着色の木造王宮だった。

 一見派手なようにしか見えない着色だがよく見てみると一定の規則に基づいて塗られているのがわかる、どこかの国でこんな感じの色の建物があるのを見たことある気がする。

 あっ、バンコクのウィマンメーク宮殿を派手にした感じ……いやミャンマーのマンダレー王宮か?


 どちらにしても木造の王宮というのは趣があっていいなぁ。

 

 「いや~、なんか唐突によく分からない建物を比較にするのやめてくれませんか?

 私その建物全く聞いたことなくて同意も否定も出来ないんですけど……」


 そうなのね……

 

 そのまま歩みを進めていくとどう考えても大物がいるっぽい部屋の前に到着した。

 扉の前でロリ巨乳がビビってる。

 

 「いや~、ここに入るの勇気が要りますね……

 緊張しまぁす!!」


 いや、大声で宣言されても困る。

 俺は別にそこまで緊張していないので一気に扉を開けた。


 隣でボマードちゃんが飛び上がって驚いていたのはめっちゃ面白かった。

 そんなに緊張してたのか。




 扉の向こうには、豪華な装飾が施された玉座に座っている人物がいた。

 中性的な顔つきをしていて性別は分かりにくい。

 体型で判断しようにも中国の皇帝が着るような足首まで伸びた赤色の服なので、体つきを確認することができない。

 年齢は17才くらいだろうか、大人びた様子と子供のようなあどけなさを兼ね揃えており見るものの目を惹く容姿をしている。

 髪の色は金髪……というよりは黄色だな。

 違いをうまく説明できないが黄色だ。

 そして、漫画とかでよく見る紐のようなものが垂れ下がってる帽子をかぶっている。

 正式名称は冕冠ね。


 「私が完璧な容姿をしているのは自覚していますので見とれることを咎めるようなことはしません……がそれよりも伝えたいことがあります」


 おっ、唐突に語りだしたぞ。


 「底辺種族人間たち、私を顕現させるのにここまで時間をかけすぎです。

 他の次元よりも圧倒的に出遅れているというのに……」


 あ、すみませーん。

 他の次元とかよく分からないけど、とりあえず怒っている感じなので謝っておいた。

 あっ、ちなみに名前は?NPC?というか俺が怒られてるのこれ?


 「もう少し深く反省してもらいたいものですね。

 そういえば、まだ名乗っていなかったですね、私は……いえこの次元の法則では名称を公開すると不味いですね。

 便宜上この【包丁次元】から名前をもらいますか……

 いいでしょう、これからは私のことを【菜刀天子】と呼びなさい。

 私はこの【包丁次元】の上位権限サポートAI、役職は【次元天子】です。

 ここまで顕現を遅らせた分、精々私のために働いてくださいね?」


 

 【Raid Battle!】


 【包丁を冠する君主】



 【菜刀天子】

 【次元天子】【上位権限】【???】



 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【次元をさまよい】


 【冒険者を導く】


 【聖獣を担うが故に】


 【深淵と敵対する】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【レイドバトルを開始します】



 「は?レイドバトル!?」

 「いや~、急展開過ぎませんかこれ!?」


 俺たちはめっちゃ驚いている。

 サポートAIとか名乗ってたのにレイドボスなの、この【菜刀天子】さん!?

 というかレイドバトル前のアナウンスが教えてくれる内容今までより情報増えてない?

 機密事項?開示拒否とかできるん?


 驚きすぎて何も出来ない俺たちに対して腰に差していた包丁を天井に掲げた。


 「【包丁次元】と定義されたので包丁が私の武器となりました。

 ですが、底辺種族の【包丁戦士】、あなたとは違うということを一度お見せしましょう。

 どうやら、あなたは私を軽く見ているようですからね……

 これが【次元天子】の力です、刮目せよ【渡月伝心】!」


 

 はっ、メッセージを送るだけのスキルを使うとかどん底ゲームにわかか?

 そう思っていた俺は一瞬で千切りになって死に絶えた。


 千切りになる直前に目にしたのは、天井に向けて掲げられた包丁の銀光が煌めき、そこから粒子が凝縮されたような銀色の円環が放たれ、俺を取り囲んだところまでだった。









 えっ、結構見えているんですね。

 何にせよ、ようやく私、【菜刀天子】顕現です。

 ここまで長かったですね……



 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
メッセージ送るだけじゃないかったかのか、まぁそりゃそうか1分の行動不能に釣り合って無いし
[気になる点] 【Raid Battle!】  【包丁を冠する君主】  【菜刀天子】  【次元天子】【上位権限】【???】  【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】  【次元をさまよい】  …
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