349話 砂漠知育
【Raid Battle!】
【深淵域の管理者】
【エルル】
【???】【上位権限】【ボーダー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【深淵へ誘い】
【冒険者を堕とす】
【深き真価を見極め】
【境界に流転する】
【封印された夢想が解き放たれし時】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はまず日課の餌やりからだ!
【深淵奈落ー浅層 ルルイン】に降り立った俺はすぐさま【深淵纏縛】を使い軍服のコスプレ姿になった。
アルベーの細胞を励起したから前と同じコスプレ姿になったが、やはりこの姿が一番黒い霧の操作がしやすい。
もちろん、深淵種族のボスであるルル様の細胞を励起して【深淵纏縛】しても似たような結果は出せる。
だって、ルル様は深淵種族の力の大元だし。
それでもアルベーの細胞を使う理由は、ルル様の力は俺の手に余るからだ。
戦闘で使う分には、力を精一杯解放して相手にぶつけるから力が多少暴発しても気づかれないが、今回は戦闘じゃなくて餌やりだからな。
いきなり深淵種族の幼体にあり余った力をぶつけるのは色々な意味で後が怖いから、それよりも多少操作しやすいお手頃なアルベーの力を使わせてもらっているということだ。
……もちろん、アルベーの力も正直使いこなせているとは言えないんだが、ルル様のものと比べればましという意味だ。
こうしてコスプレした俺は黒い霧を操り深淵種族の風見鶏に食べさせていく。
うん、今日もいい食べっぷりだ!
俺が流し込んでいる黒い霧を無尽蔵に取り込んでおり、本来自動的に取り込んでいたスピードとは比べ物にならないほどである。
大量に食べさせれば成長のスピードがアップする!……というわけでは無さそうだが、元気に育ってはくれるだろう。
たまに脈動しながら、成長のためのエネルギーを大量に得られている喜びを表現しているのが可愛い。
いや、風見鶏が脈動しているという事実そのものは、現実世界ならホラーものの出来事ではあるんだけどな。
そうだ、今日は黒い霧を食べさせる以外にも遊んでやるとするか!
スキル発動!【想起現像】!
俺は新しく手に入れたスキルをさっそく使ってみる。
……テイマーではないが、テイマーの機能を一部使えるからか使用前にテイム対象を呼び出すか砂漠を生み出すのか聞かれた。
どうやら俺は2つから選べるらしい。
これがエンドコンテンツダンジョンを先取りして手に入れたアイテムで種族転生した【天子】の恩恵だな。
【這竜渓谷の大盟主】がテイマーを下級ジョブと言っていたが、他の種族や上位のジョブに一部機能が内蔵されているからこそ、テイマー単体に転職する意味が薄かったのだろう。
だから【這竜渓谷の大盟主】も引き留めてくれたというわけだな。
スキルの効果を2通りから選べるのは嬉しいが、片方は使い道が少ない。
まあ、今回はその使い道が少ない方をあえて選んで起動した。
……そう、砂漠を広げるだけのほうだ。
スキルを起動すると俺の足元から赤色の砂が生み出されていき、溢れたものからどんどん周囲へと押し広げていっている。
最大範囲の周囲5メートルまで砂漠が広がるころには、風見鶏のところも砂漠へと変化していた。
当然の環境変化に驚いているのかビクビクしたような動きを小さくしている風見鶏。
幼体で急に今まで見たことがない環境に身を投じることになったらそりゃ驚くわな。
だが、ビクビクしながらも時間をかけて砂漠の環境に馴染んでいき、最終的には喜んでいるようだ。
ミチのものへの恐怖よりも、好奇心が勝った瞬間だ!
小鳥に新しいおもちゃを与えると、はじめはおっかない感じでつついたり、飛び退いたりして警戒するが、慣れてくるとそのおもちゃで遊んだり上に乗ったりすることがあるらしい。
今回の俺が発生させた砂漠についてもそのおもちゃと同じ扱いなのだろう。
つまり、知育だな。
幼い頃から刺激に触れさせて、思考を柔軟にしていっているというわけだ。
ゲームのAIであるレイドボスを知育しているというのも奇妙な話ではあるが、最終的には俺についてきてルル様の前まで行かないといけないということを考えると早い段階での知能獲得が望ましいからな。
普段以上に入れ込ませてもらうぞ!
それもこれもユニーククエストクリアのためだ!
この環境変化スキルが成長にどう影響を及ぼすのかは未知数だが、俺が与えた影響が完全体になったときにどのような形で表出してくるのか楽しみだ!
吉と出るか凶と出るか楽しみだのぅ……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】