344話 コスプレ戦士
【Raid Battle!】
【深淵域の管理者】
【エルル】
【???】【上位権限】【ボーダー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【深淵へ誘い】
【冒険者を堕とす】
【深き真価を見極め】
【境界に流転する】
【封印された夢想が解き放たれし時】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日も【深淵奈落ー浅層 ルルイン】を探索していくぞ!
さて、前回触れた瞬間に俺が光の粒子にされてしまった風見鶏がある場所に来た。
この風見鶏、ここにある時点で曰く付きのものだとは思っていたが俺の命を一瞬で吹き飛ばしてしまうものだと流石に思ってなかったな……
こう言うときに使うのは……
スキル発動!【深淵顕現権限Б】!
スキルを発動すると、黒い霧が俺の両目に取り込まれていき目がすげ替えられていく。
青い瞳が黒く染まっていき、闇を見据えるような、深淵を覗き込むような漆黒の色を兼ね揃えるようになった。
そして、瞳孔も翼のような形に変貌した。
手にいれた当初は使いにくそうな【深淵顕現権限】だと思っていたが、使ってみると何だかんだ便利で多用してしまっている自分がいる。
鑑定……というほどではないが、力の動きを分析するのには持ってこいのものだからな。
使いたくなるのもやぶさかじゃない。
そんな便利なアルベーの眼を介して風見鶏を観察する。
……力の動きを読み取る邪眼を使うと、止まって見えていた風見鶏が実は周りに漂っている黒い霧を猛スピードで循環させているのが見えた。
その黒色の霧は風見鶏を中心に渦巻いており、台風を圧縮するとこんな感じになるのかもしれないと思わせるほどの圧力を感じるぞ。
その動きから何をしているのかを確認しようと注視していると俺の……いや、アルベーの眼が悲鳴を上げ始めた。
血涙が流れ出るかのごとく眼から光の粒子が漏れだし始めた。
くっ、暴れるなよ……暴れるなよ……っ!!
だが、俺の制御を外れ負荷に耐えられなくなったアルベーの眼は、俺の身体をリソースとして稼働し続ける。
刻一刻と俺の身体が光の粒子へと変換されて、アルベーの眼に取り込まれていくがそれでも見ることは叶わず、最終的に全身が光の粒子へと成り果てて死に戻りすることとなった……
【Raid Battle!】
【深淵域の管理者】
【エルル】
【???】【上位権限】【ボーダー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【深淵へ誘い】
【冒険者を堕とす】
【深き真価を見極め】
【境界に流転する】
【封印された夢想が解き放たれし時】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【レイドバトルを開始します】
ちっ、今日はまだまだ行くぞ!
死に戻りで復活した俺は再度風見鶏へと突撃する。
だが、【深淵顕現権限Б】で励起したアルベーの眼で見れなかった以上、どうやって分析をすればいいんだろうか。
風見鶏の前に来たものの、頭を捻って悩む一方で考えが纏まらない。
そんな困り果てた俺を見かねたのか、脳内に声が鳴り響く。
【何を悩む必要がある?】
【【深淵顕現権限】が無理ならば、別のアプローチをすれば良いだけの話ではないか】
別のアプローチ……?
【地上では気軽に使えず、深度を代償にして起動するスキルがあるではないか】
【この深度奈落の探索を許されたお前であれば、ここ限定で代償を踏み倒せるであろう】
【何故ならばここは漏れだす深度がすぐ補充されるほどの、力が満ち溢れた場所である故にな】
深度を代償に……っ!!
そうか!
深度を深めていくために自分で使用を制限していたあのスキルがあるか。
あれならば、更なる力を持って分析に挑むことが出来るのかもしれないな!
そうと分かれば話は早い!
いくぞ、スキル【深淵纏縛】発動!
俺はルル様の言葉を全面的に信用し、迷わず俺の最終奥義である【深淵纏縛】を起動した。
スキルを起動すると、俺の全身に纏わりつくかのように黒い霧が発生していく。
この霧は俺の身体の中に眠る深淵細胞を確認すると、それに合わせて姿を変えていき頭部から順に物質として俺の身体に纏縛していく。
まず頭に現れたのは黒色のキャップだ。
ツバがくちばしを思わせるかのような鋭利な形をしており、獲物を狩り取る獰猛さを感じ取れる。
次に現れたのは首から下の軍服だ。
これも黒色の軍服で、身体のラインにピッタリとへばりつくかのようなデザインなのだが……
ボマードちゃんとか【釣竿剣士】、【トランポリン守兵】お嬢様がこのデザインの軍服を来たら色々なところ……特に胸っっ!!!とかが強調されて、扇情的な服なんだなと思うが、俺が着ても申し訳程度の膨らみしかないので普通にピッチリとした軍服だ。
ふーん、動きやすいから別にいいんだが?
虚勢を一人で張りながら、僅かな膨らみを両手で軍服の上から抑えている。
だが、そんなことをしている間にも纏縛は続いていき、足元にはガッチリとした黒色のブーツが現れた。
そして、最後に俺の眼が脈動しはじめ、すげ替えられていく。
深淵を覗き込む為の眼は、漆黒という言葉では言い表すことが出来ないほどの黒さを秘め、瞳孔は翼の形へ変貌した。
さらに、翼のような形をした瞳孔は眼の中で分裂を繰り返し、10個の翼を瞳に宿すようになった。
両目を合わせて20個か。
そして、その眼を保護するようにキランと輝く眼鏡も装着された。
そう、俺が励起した細胞は【Б細胞】、アルベーの細胞だ!
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【鳴動する阻鴉眼】
【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
これこれこれこれ!!!
そう、これだ!!!
このレイドボスになった時の膨大な力が溢れ出てくる感覚は最高だな!!!
力に溺れてしまいそうになってしまうぞ!!!
深淵に適応し過ぎているプレイヤーというのも問題なのかも知れないのぅ……
だが、それもまた一興であるか!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】