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322/2203

322話 悪竜鱗

 さて、下半身が無くなった俺だが、俺には移動手段がまだ残されている。

 1つは【深淵顕現権限P(エルル)】だ。

 ルルさまの力である骨羽を顕現させたら飛んで移動することが可能になる。


 だが、【深淵顕現権限】の発動には生け贄が必要になる。

 ここで生け贄にできるのは【風船飛行士】だが、この局面であいつを生け贄に捧げるメリットは実はそんなにない。

 【風船飛行士】は今摺鉢みすりと戦ってくれているからな。

 ほぼ万全に近い状態のトッププレイヤーを生け贄に捧げて、頭数を減らすのは得策じゃない。


 満身創痍の俺がここで強化されても総合力で見ると低下することになるからな。



 他の飛行手段だとすぐに思いつくのは【天元顕現権限】で天子の羽を顕現させることだが、包丁次元でのサバイバルイベントの最中で【ペグ忍者】やここにいる【風船飛行士】からの逃走や、【ブーメラン冒険者】と【短剣探険者】撃破のためにエネルギーを完全に使いきってしまったからエネルギーの再充電……クールタイムが明けるまでまだ半日必要だ。

 だからこそ、今このとき【天元顕現権限】に頼ることはできない。


 そうなるとどうやって移動するのかわからないやつも多いだろう。





 だが、俺には新たなるスキルがある。

 【フランベルジェナイト】とかいう気の触れたプレイヤーを俺の【コラテラルダメージ】に引き込む代償として手に入れることができたスキル、【竜鱗図冊】だ。


 そのスキルを発動させるためのキーアイテムは、幸運にも消し飛んだ下半身ではなく、首もとにチョーカーの先で垂れ下がっている。

 

 それを確認した俺は迷うことなくスキルを起動させる。

 行くぞ、新スキルのお披露目だ!


 スキル発動!【竜鱗図冊】!

 そして、ability強制発動!【会者定離】


 


 俺がスキルの発動を宣言すると、首もとから垂れ下がっている巻物が広がっていきそこから六角形の竜の鱗のようなものが現れ始めた。


 この竜の鱗は巻物を持って移動して踏破したエリアの比率に応じて性能が上がっていく位置ゲーム要素を持った特殊なスキルだ。

 そんな鱗が俺の背中に集まっていき、羽を形成し始める。

 流石にスキルを手に入れてから日が浅いからか、羽以外に竜の鱗を覆わせる余裕が無かったので、今回このスキルで強化されるのはあくまでも飛行能力だけだが、今はそれで充分だ!


 「ちょっwww

 なんでお前が【竜鱗図冊】使えるようになってるんだよwww

 オレのクランで情報を秘匿してたっていうのによwww

 テラワロリンヌwww」


 俺がクラン【冒険者の宴】で独占状態にあったスキルを発動させることに成功したからか、少し離れたところで戦っているはずの【風船飛行士】が遠巻きに声を荒くしながら追及してきた。


 くっくっくっ、この反応を見たかったんだ!

 いつも俺をおちょくってくる【風船飛行士】が焦る姿だけでご飯三杯はイケル!(確信)


 「しかもなんだよその鱗の色www

 真っ黒じゃんwww

 ガングロギャルでもそんなに黒くないぞwww

 オレのクランメンバーでも黒色に出来たやつなんて聞いたことないぞwww」


 そして、興味ありげに聞いてきた【風船飛行士】。

 やはり黒色は珍しいようだな。





 それもそのはず、【竜鱗図冊】をカスタムできる渓谷エリアの食堂に俺が持ち込んだのは【深淵奈落】に落ちていた緑色の枝だったからな。

 その黒い鱗の持ち主は余程のことがない限り現れないだろう。


 俺以外に深淵奈落に到達できたプレイヤーはボマードちゃんしか知らないし、レア中のレアだろうからな。


 「悪竜みたいなのだ……」


 「そんな感じのレイドボスこっちにはいるんやで!」


 悪竜と評された俺の【竜鱗図冊】だが、悪竜……いい響きだな!

 俺はその呼び方を気に入った。




 俺はその悪竜の羽を恐る恐る動かしてみるが、思っていたよりもスムーズに動かせる気がする。

 何度も使っている天子の羽よりも下手すると操作性はいいかもしれないな。

 【深淵奈落】由来の枝を素材にカスタムしたからなのか、俺にフィットしている気がする。

 流石に【深淵顕現権限】よりは何段階か落ちるので、深度に由来する何かの力が働いているのかもしれないな。



 それと、強制発動することになったability【会者定離】だが、発動させたのにも関わらず何かしらのアクションを起こした形跡がない。

 【風船飛行士】だとabilityの発動のために腕に巻いたシルバーを毎回飲み込んだりしないといけないとかあるのに、俺はそういうのも特にないみたいだ。



 天涯孤独、自分自身との縁が切れている今の状態そのものが発動条件……デメリットになっているから強制発動したところであまり変わらないのだろう。

 というより、常時発動型のabilityという疑いすらあるから、何を信じればいいのか俺のことなのに分からないぞ。



 「もう攻撃再開していいのだ?

 ミチのスキルについての考察だったから攻撃を止めて聞いてたけど、そろそろ出涸らしみたいなのだ!

 情報提供ありがとうなのだ!」


 俺が物思いに耽っていると、飽きてきたのかアンカーを握り直した夢魔たこすが襲いかかってきた。 

 受けてたってやる!







 せっかく聖獣が施したスキルなのに、何故深淵の力に変えてしまったのですか……


 【Bottom Down-Online Now loading……】


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― 新着の感想 ―
[良い点] 風船飛行士の前で使うのは気分が良いですね せっかく秘匿していたのに1番隠したいであろうプレイヤーに手に入れられているとは ドンマイですね [一言] 下半身が無くなっても戦ってくるって敵から…
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