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32話 考察会議は踊る!~実績照会編~

 「そろそろ今回の考察会議は終盤ですかね?

 最後の議題はグランドアナウンスの実績内容についてですね。

 これ、このゲームに存在しているコンテンツを探る上で重要な議題です。

 何せプレイヤーが見つけていない、達成していないものまで存在しているということを教えてくれていますからね」


 そういう考え方もあるのか。

 というか全く聞き覚えのない内容ばかりでほとんど覚えていないんだが……?


 「いや~、私も全く覚えてないですぅ!」


 だろうな、お前は半分俺の同類みたいなものだからそんなことだろうと思ってた。

 

 「2人とも甘いですね。

 ボクたち検証班はそれぞれメモを残していたので、それを繋ぎ合わせてグランドアナウンスの完全版を記録として残すことに成功しました!

  皆さんに感謝してくださいね」


 流石検証班、情報に対して貪欲だな。

 だが、非常に助かった。

 

 今度はもっと丁寧に肉壁として使ってあげよう。


 「まずはレイドクエストが列記されていますね、東西南北のレイドクエストの名前と【荒れ狂う魚尾砲】、そして名前が隠されているクエスト。

 名前が隠されているのはまだプレイヤーが発見していないクエスト……ということでしょうか?

 他のクエストは見たことありますし」


 俺は【這竜渓谷の大盟主】ってのは見たことないがな。

 多分まだ行ったことがないエリアのやつだろう。

 1つだけ行ったことない場所あるし。


 「あの~、この10位とか1位ってなんですかね?」


 「ふむ、レイドボスの強さやランクみたいなものでしょうか?

 数字が大きいといいのか、小さいといいのかそれすらも分かりませんが……」


 ん?

 俺が思いついたやつと違うのが出てきたな。

 俺が思いついたやつだと思ってたけど、そういうのもあるのか。


 「俺は倒したスピードの順位みたいなやつだと思ったんだが……

 ただこれは、前の考察会議で出た他の次元があるっていうのが前提だけどな。

 他のプレイヤーがいるサーバーが次元説ね」


 「そういうばその仮説もありましたね。

 ただ、運営やイベント、アナウンス何かしらでアクションがない限りこの問題は解決しなさそうなので一旦結論は見送りましょうか」


 「了解です!」


 「うい」


 俺たちの了承を待って、【検証班長】は次の実績の話について移らせようとする。


 「次はスキルの開放についての実績ですね。

 名前に関するスキルは【名称公開】、斬擊に関するスキルは土壇場で開放した【フィレオ】でしょうか?

 打撃に関しては未開放ですが、何かしらでこれから得られるということなので打撃武器の人に頑張ってもらいますか。

 魔法に関するスキルは……どれでしょう?」


 「俺は【魚尾砲撃】だと思うな。

 魔力みたいなのが体の中から溢れて暴発するスキルなんだろ?

 つまりこれが魔法だ!」


 「いや~、私は【渡月伝心】だと思いますね。

 離れた相手にメッセージを送る魔法ってファンタジーものだと定番じゃないですか、よくネット小説とかでも見たりしますよ!

 つまりこれが魔法です!」


 むむむっ、こいつ俺にケンカ売ってるのかってくらい対抗してくるな。


 「【深淵顕現権限】ではないのですか?

 これも魔法に近そうな気がしますが」


 「あ~、次の実績で召喚に関するスキルってやつがあるしそっちかなと思ったんだが」


 「確かにそちらには間違いなく該当しますね、というより今私たちが認識しているスキルで召喚に関するスキルはそれくらいしかないですからね……

 ただ、1つの項目にしか該当しないというのもおかしな話ですよね?

 私は【深淵顕現権限】が2項目該当している説を推しますね」


 おいおいおい、【検証班長】がこの張り合いに乗ってくるとは思ってなかったぞ。

 ここは……


 ボマードちゃんをちらっと見る。

 ボマードちゃんもこっちを盗み見していた、お前もそう思うか。

 うんうん、そうだよな。

 

 「「やっぱり【深淵顕現権限】が魔法!」」


 【検証班長】の考えを全面肯定だ。


 「えっ、いや……

 別にこの考えを押しつけるつもりではなかったのですが……

 まあ、これについても仮定として一旦置いておきましょう。

 次は深淵に関する手がかりですね。」


 「次の項目の深淵細胞とかクリアしてるのにこっちはクリア出来てないのは違和感あるよな」


 首を捻る俺にボマードちゃんが首を縦に振り同意する。


 「いや~、たしかにそうですね!

 充分深淵に関してそうですが!」


 「これは【深淵とは何か!?】という概念看破路線の手がかりを得ているかでしょうね。

 深淵に関しているものを手にしていても、それを解読できなければ深淵について理解できませんし。

 結果は得ていても経過が得られていないから起きた実績の逆転現象でしょう」


 「う~ん、分かったような分からなかったような……

 難しいですね!!!」


 そんな笑顔で考えることを放棄するな!

 ちょっと可愛いぞ!


 「はいはい、いちゃつくなら他でやってくれませんか……?」


 いや、いちゃついてなんかいないが……?


 「はあ、まあいいですけど……

 次は八卦深淵板ですね、全く考察しようがないのでスルーしましょう。

 次の天子についても同じくです。

 深淵奈落、聖獣結界についてもクリアされていないので一旦置いておきましょう。

 考察材料すらないので、考えるだけムダです」


 天子……中国の思想か。

 中国で皇帝の別名として使われたりしてたらしいが、そんなやつがこのゲームに顕現してくるのか?

 というか現れることを顕現って表記してある時点で只者じゃない予感しかしないが……


 大丈夫なのか?


 そんな俺の心配とは別に会議はさらに進んでいく。


 「次はフレンドに関する実績です。

 エルフとフレンドになっている実績がクリアされていますが、この実績照会がされるまでエルフがこのゲームに存在することを知りませんでした。

 竜人についても同様です。

 隠されているところは流石に見つけられていないということでしょうが、誰かが別種族の情報を独占しているということは分かりました」


 「別にいいだろうそれくらい。

 俺は特に別の種族とかそこまで興味はないし」


 「いや~、私は会ってみたいですね!

 特に竜人!!

 鱗があるレベルなのか、顔が竜なのか、羽があるのかファンタジーものが好きなのでそういうところが気になりますね!!!」


 さっきからやたらファンタジーファンタジー言ってたから何となく分かってたがやっぱりそうなんだな。

 言われてみるとこのゲームもファンタジー寄りだし、そこまでおかしいことではないが。


 俺は料理がしたかったからこのゲームを始めた……はずだったんだがどうしてこうなった。


 脳裏に花飾りの釣りざおを持った少女の決め台詞が浮かんだが、肯定したくなかったので首を激しく横に振ってその台詞を打ち消した。

 残念そうな顔をしている花飾りの少女の顔が浮かんで申し訳ない気持ちになったが、認めるわけにはいかない。


 いつか料理ライフが俺を待っていると信じて。


 「とりあえず議題はこれで全て無くなりましたね。

 正直もっと考察したいのは山々ですが、2人はそもそも検証班ではないですし、これ以上拘束するのも申し訳ないのでこれで解散にしたいと思います。

 2人しか知らない情報を対価なく提供していただいたことには感謝してますよ!」


 そう改まって言われるとちょっと照れるな。


 「いや~、私こそ自分だけだと持て余してた情報を分かりやすくして教えてもらえただけで充分な対価ですよ!

 ありがとうございました!」


 ボマードちゃん、たまにはいいこと言うな。


 「俺としても2人と喋れただけでも楽しかったし、新スキルの最新情報まで教えてもらったんだからWin-Winでいいと思うぞ!

 【検証班長】のことはみんな頼りにしてるし、また何か手に入ったら押し掛けるわ。

 ……フレンド登録されてないから【渡月伝心】使えないし……」


 俺の付け加えたような一言に顔をひきつらせる【検証班長】を見ながら【メッテルニヒ】を後にした。


 



 ……と思ったが、爆弾魔が後ろから全力で追いかけてきた。


 「はあはあはあっ……

 この後……暇ですか?

 もしよかったら一緒にアネイブルを見て回りませんか?」


 いいけど、なんで俺なんだ?

 【検証班長】とかでも良くない?


 アイドル活動とか手伝ってもらってるだろうし、そっちの方が馴染みがあるように思うが……


 「い、いや~、新緑都市アネイブルと言えばここのトッププレイヤーだった【包丁戦士】さんじゃないですか!!

 レイドバトルの思い出とか聞きたいですし、それに私1人だと全然早く歩けなくて大変なんですよ!

 具体的には【名称公開】のデメリットで……」


 あぁ……そういえばそうだったな……

 俺がそのデメリットを加速させる一端を担ってるし、ここで断るのも申し訳ないか。

 うん、たまにはぶらぶらするのも悪くないだろう。


 「いいぞ、テキトーに歩くだけになると思うがいいか?」


 俺が了承したのを確認すると、少し泣きそうになっていた表情が一変、満面の笑みを浮かべていた。

 こ、こいつ……

 ちょっと騙された気分になったが、いい笑顔を見れたので今日のところは水に流しておいてやるか。


 新緑都市に足取りがチグハグな2人の足音が響き渡り始めた。

 都市の新たなスタートを祝う拍手のようだと周りのプレイヤーたちは思ったという。








 





 えっ、なんでちょっといい話風に終わっているのですか……?

 えっ?



 【Bottom Down-Online Now loading……】

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[一言] なんで料理したいのにこのゲームを選んだの?
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