316話 バグ?
遺跡の台座が発した光に呑み込まれた俺が目を醒ますと、先ほどまでと同じ風景の遺跡に戻ってきた。
……いや、周りに俺のクランメンバーが誰もいないぞ!?
あいつらが消し飛んだのか、俺がワープしたのか分からないがどちらにしてもあまり良くない……
どうするべきか……
そんなことを考えていると脳内にアナウンスが鳴り響き始めた。
【【包丁戦士】が称号【次元渡航者】を獲得しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が37になりました】
【意図しない次元渡航の発生を確認……】
【error!】
【ability【会者定離】により観測が切断されます】
【蠑キ蛻カ蝓キ陦後?繝ュ繧ー繝ゥ繝?繧定オキ蜍輔@縺セ縺!】
【ディ繝。繝ウショ繝ウ繝トル】
【【5菴 アンカー次蜈】VS【6位 包丁次元】】
【勝蛻ゥ譚。件 敵蟇セ次元蜍「蜉の殲滅】
【異谺。蜈の風が吹き荒れ縺ヲ縺?k】
【包丁が血を求める】
【アンカーが流動を押し留める】
【Duel Start!】
は?
なんかメチャクチャ文字化けしてるけどこれ大丈夫なのか……?
バグってない?
俺は不正利用によるアカウント消失を一瞬恐れたが、バグっているアナウンスが流れる前に称号が手に入ったのを思い出した。
【次元渡航者】……つまり俺は遺跡にあった謎の機能を使って別次元へ移動してしまったようだ。
とりあえず意図せぬ要素はあったとはいえ、次元を移動するっていうこと自体はゲームとしては想定されていたわけだな。
……思い返してみると、アルベー=クシーリアを倒したときの実績照会にもそんな感じの実績が存在するということは仄めかされていたから問題はない……のか?
まあ、正規の方法ではないとは思うがこれで実績を1つ達成できたってことだろう。
そしてバグっているアナウンスを必死に読み解いていくと、何やら見覚えのある文字列が存在していることに気がついた。
……これは次元戦争のアナウンスだ!
どうやら俺はサバイバルイベントの最中なのにも関わらず、他の次元に移動して次元戦争をおっぱじめることになってしまったようだ……
どうしてこうなった!?
ともかくだ、まだ相手の姿は見えないがアナウンスから読み解くに……対戦相手は俺の包丁次元よりも1つ上の序列である5位の次元のようだ。
そして、チュートリアル武器はアンカー……イカリだな。
イカリの中でも、爪などが底質に刺さることで抵抗力を生むものをアンカー、それ自身の重さによって抵抗力を生むものをシンカーと分けているらしい。
つまり、引っ掻いたり、あるいは斬撃を放ってくる可能性もあるって訳だな。
用心しておこう……
敵はまだ現れないみたいだし、遺跡の中をじっくり探索してみるか。
包丁次元の遺跡調査ははじめにこの台座を見つけて遊んでしまったから他のところとか全く調べられなかったからなぁ……
包丁次元にあった遺跡と同一の遺跡かは分からないが、今いる戦場はここだから嫌でも何かを見つけないと。
最悪の場合元の次元に戻れないなんてパターンも考えられるし、わりと真剣にいった方が良さそうだ。
というわけで台座の周りから見ていこう。
よく見ると台座から延びるように床にも幾何学模様が描かれているな。
この幾何学模様はアルベーの眼で見ると、力の方向性を固定するための仕組みが施されている謎技術の産物だということがわかる。
てっとりばやいのはこの幾何学模様を弄って元の次元に戻るってパターンだが、さっき次元を渡るときに力を使いすぎたから同じことをやるにしてもしばらく時間が経たないとチャレンジすらできなさそうだ。
次に、壁に手を当ててみる。
壁に手を当てたまま色々なところを擦ったり、押したりしてみるとスイッチのように押せる場所があった。
怪しいがとりあえず押してみる。
うわっ、レールガンみたいなのが飛んできたぞ!?
こわっ……
まあ、ボタンを押した場所は安全地帯になるみたいだから俺には危害が及ぶことは無かったが、あのレールガンに巻き込まれたらひとたまりもないだろうなぁ……
あらかじめ弾道を予想していないと回避が難しそうなスピードだったし、この仕掛けはある意味面白そうだ。
他にもこんな感じの防衛設備があったりするかもしれないし、時間が許す限り探してみるとしよう……
【Bottom Down-Online Now loading……】