311話 検証班の秘密兵器
「くらうのら~!」
猫耳頭巾の【ペグ忍者】から放たれたペグによる攻撃を、腰に提げていた包丁で受け止めていく。
こいつの相手をする分には問題ないんだが、他の俺のクランメンバーの動きはどうなってるのか気になるぞ……
そう思い、あえて【ペグ忍者】から距離を取りながら周囲を見渡していく。
見渡していくとそこには地獄絵図が広がっていた。
俺のクランメンバーの動きがてんでばらばらなのだ。
……これは酷い。
逃げ出そうとするものや、無謀にも格上に挑みに行くやつ、味方を身代わりにしようとするやつまでいる。
開始早々瓦解する纏まりの無さよ……
おーい、とりあえず撤退だ撤退!
俺が【ペグ忍者】を抑えておくから、【フランベルジェナイト】と【バットシーフ】後輩は二人がかりで【モップ清掃員】を抑えながら、他の連中は自衛しながらでいいから林の中へ逃げ込め!
「「「「「「了解!」」」」」ッス」
【に、逃げましょう……
でもあのモップの人がこわいですね……】
「そうだね。
俺が抑えておくからフェイちゃんは先に逃げておいて」
よ、よし……
俺が方針をきめたからか、クランメンバーの動きに纏まりが出てきた!
【検証班】トップの実力を持つ【ペグ忍者】は俺しか抑えられないだろうから俺が受け持つとして、見えている地雷である【モップ清掃員】は俺のクランのニューカマーかつ貴重な戦闘用員である【バットシーフ】後輩と【フランベルジェナイト】に任せた。
それでも第3陣プレイヤーには荷が重そうだから、念のために二人がかりでってわけだ。
「よそ見する余裕があるのら?」
ああ、これくらいなら片手間にできるぞ。
【ペグ忍者】は予備のペグを投擲しながらそう言っているが、指示はすぐに出し終わったし、これくらいの間なら戦闘に復帰するまでテキトーに攻撃をいなすことなら出来なくはない。
お前こそ、俺が相手で良かったのか?
他の連中にぶつかっていけば確実に勝てただろうに。
【検証班】の秘密兵器である【ペグ忍者】はトッププレイヤーに匹敵する実力の持ち主だって噂になってるくらいだからな。
「それはこっちのセリフなのら!
【包丁戦士】しゃんこそ、闘技場イベントで【ペグ忍者】に負けてたのら~
また【ペグ忍者】が勝ってしまうのらよ?」
そう挑発してきながらも攻撃の手を緩めず、指の間に握りしめた4本のペグを鉤爪のように扱い苛烈な肉弾戦を仕掛けてきた。
俺は包丁による切り払いと、包丁の腹での受け流しを多用して順番に攻撃を凌いでいっている。
今攻撃にうって出るには下策だからな、堪え忍ぶしかない。
まあ、【ペグ忍者】が言うように俺は闘技場イベントでこいつに敗北した……が、その時と今では状況が違うってことを見せてやる!
スキル発動!【天元顕現権限】
【天元顕現権限】を発動した俺の背中から勢いよく黄金色の翼が生えてきた。
そしてそのままスキルチェインまで繋げていく。
【スキルチェイン【天元顕現権限】【渡月伝心】】
【追加効果が付与されました】
【スキルクールタイムが増加しました】
そして、黄金色の翼から溢れる力を【渡月伝心】に乗せると、今まで思念しか送れなかったゴミのようなシステムサポートスキルが形を変えて、包丁の先に黄金色の光が集う。
そして、集った光が一度拡散し、【ペグ忍者】へと迫っていく。
「これは流石にヤバそうなのら!
【ペグ忍者】も大技で対抗するのら!
スキル発動!【暴虎馮河】なのら!」
【ペグ忍者】は鉤爪のようにしたペグから黄色いオーラが溢れ始めた。
そして、そのオーラは伸びるようにして鉤爪ペグを補強していく。
そして、俺の放った極太レーザーをその補強した鉤爪ペグで切り裂いていく。
流石種族転生しているプレイヤーは一味違うな……
基本的にこのスキルチェイン【渡月伝心】を使えば底辺種族相手なら必殺だったからな。
……まあ、布石は打たせてもらったからよしとしよう。
俺は左に生えた天子の羽を駆使して【ペグ忍者】の高速機動に付き合っているが、時たま放たれるペグの投擲が積み重なってきているのが不味いな……
あの投擲はただの攻撃じゃない……
周囲に張り巡らされてきているのは、投擲したペグに取り付けられたワイヤーによる障壁だ。
「にゃにゃにゃっ!
【ペグ忍者】のワイヤー猫ハウスほとんど完成したなのら~」
まだ完全形態ではないが、【ペグ忍者】の得意なフィールドに塗り替えられてしまったか。
だが、今の俺は地上だけじゃなくて空も飛べる!
両手をワイヤーにつけて移動の超加速をして逆手に持ったペグで襲いかかってきた【ペグ忍者】だったが、俺は羽をはためかせて寸前で回避に成功した。
闘技場イベントのときはこのワイヤー猫ハウス戦法に苦しめられたから、お前相手の脳内シミュレーショントレーニングは密かにやってたんだよな。
もちろん、このワイヤー猫ハウスの攻撃回避も大方読めてきているってわけだ。
「流石【包丁戦士】しゃん……
対人戦はお手のものなのらね~!」
そういうことだ。
いい見物ですね。
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