307話 イマジナリーフレンド
「お、お疲れさまでした……
最後の一撃カッコ良かったですよ!」
なんだかよくわからないが、しれっと【フランベルジェナイト】の前まで出てきた。
俺が近くに寄っても黒いマントから現れた俺(?)はそのまま出ている。
「君みたいな娘にそう言われると照れるね……」
あん?
何事も無かったかのように俺と普通に会話し始めたぞこいつ……
そこのもう一人の俺は消えてないのに、戻ってきた俺と会話を続けているのは端から見るともはやホラー現象としか言いようがない。
……ものは試しだ。
そう思い俺は再び【フランベルジェナイト】から離れてみる。
さっきいた岩影に姿を隠した。
【フランベルジェナイト】のマントから出てきている俺……ややこしいなあっちを【フェイ】と呼ぼう。
【フェイ】は俺が姿を隠すと再び口を開いた。
【ボ、ボスは倒しましたしクエストクリアしましょう……
ここから早く出たいです……】
「ああ、ごめんごめん……
フェイちゃんを怖がらせるのは得策じゃないから、早くお宝を持って帰るとしようか」
そうして【フランベルジェナイト】と【フェイ】は一緒に奥まで進んでいっている。
おいおい、俺を置いていくなよ!
俺は慌てて追いついた。
追い付くと【フェイ】は再び黙り始めた。
とりあえずこいつは俺が居ないときにオートで喋るらしい。
嫌な予感がしてきたぞ……
とりあえず、一番奥に置かれていた巻物を手に入れてダンジョンから脱出することに成功した。
「無事わっちからの特別クエストをクリアできたようじゃな!」
クエストクリアの報告を冒険者ギルドにいる竜人ギルドマスター【這竜渓谷の大盟主】にした。
こいつはレイドボスなのに普通にプレイヤーと接している貴重なやつだ。
山間部エリアのレイドボス【タウラノ】もこんな感じだった。
ロリババア気質のやつは同じスタンツなんだろうか……
「お主、わっちに対して失礼なことを考えておらんかったか?
不穏な気配がしたのじゃ……」
気のせい気のせい、お前の思い違いだろ。
そんなことをいつもの調子で気軽に話していたが……
あっ、やべっ、隣に【フランベルジェナイト】がいるの忘れてたぞ!
完全に失態だった。
俺は恐る恐る【フランベルジェナイト】のほうを見ると、俺の声が聞こえていなかったかのように【フェイ】と話をしている。
【そ、そんなことないですよ……
わ、わたしおそれ多いです……】
「そうだよね。
フェイちゃんがそんなことを考えるわけないよ」
「フェイ……?
誰のことなのじゃ?」
「俺と一緒にクエストを受けたこの娘のことだよ」
そう言って手で示したのは【フェイ】の方だった。
「いや、お主と一緒にクエストを受けたのはこっちのやつじゃぞ?」
【這竜渓谷の大盟主】は俺を指差してきた。
人を指差すな!
「???
ギルドマスターは何を指差しているのだろう……?」
俺だろ。
なにいってるんだこいつは……
【も、もしかして幽霊とかですか……】
「幽霊が出てきても、フェイちゃんは守ってみせるよ」
「なんじゃお主ら……?」
なんか、【フランベルジェナイト】の中では、俺が言ったことをこの【フェイ】が発言したかのようになっていたり、発言が改竄されたりしてるぞ……
俺の頭がおかしくなったのかと思い、竜人ギルドマスターの方を見ると俺と同じように困惑した表情を浮かべている。
そして、竜人ギルドマスター【這竜渓谷の大盟主】は俺にそそくさと近寄ってきてひそひそ話をするかのような小さな声で俺に語りかけてきた。
「……あやつ、気でも狂ったのじゃろうか?
虚空に向けて語りかけおるのじゃが……」
???
もしかして、【フェイ】は俺と【フランベルジェナイト】にしか見えないパターン!?
ちょっと錯綜してきたから纏めよう。
【フェイ】
黒いマントから出てきたやつ。
見た目は黒いワンピースと麦わら帽子で俺と瓜二つ。
性格は俺が演じていた【フェイ】そのもの。
俺の発言を改竄したり、俺が居ないときに【フランベルジェナイト】に話しかけてる。
おそらくイマジナリーフレンド的なやつ。
俺と【フランベルジェナイト】にしか見えないっぽい。
【フランベルジェナイト】
俺がやられたショックでイマジナリーフレンドを創造したやべーやつ。
【フェイ】が出てきてから俺の発言が聞こえたり、聞こえなかったりしてるっぽい。
こいつが思う最高の【フェイ】像を【フェイ】にそのまま反映させてそう。
今のこいつは、虚空に話しかけたりしている完全に頭がおかしいやつ。
【包丁戦士】
フルートを吹いていたら初心者プレイヤーを堕としていた俺。
一応【フェイ】の姿は見えるが、何が起こっているのかあんまり理解してない。
【フランベルジェナイト】の今後を検討中。
【這竜渓谷の大盟主】
クエストクリア報告に来た奴らが色々おかしいのじゃが……
【フェイ】の姿も声も聞こえないので、【フランベルジェナイト】のことを狂人だと思っている。
正直早く帰って欲しいとも思っている。
わっちの平穏な日常を返してほしいのじゃ……
見えたり見えなかったり、聞こえたり聞こえなかったりする……
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